hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Cold Moon (Jeffrey Deaver) - 「ウォッチメイカー」- 222冊目

ジャンル: 小説(ミステリー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

先日、話題の映画「カメラを止めるな!」を観ました。 これはもうなんて言っていいか、まあ一言で言えば素晴らしく面白かったのです。ストーリーは単純。 あるB級ゾンビ映画を撮影するために人里離れた山奥に来たスタッフが本物のゾンビに出くわして、というかなり平凡なホラーストーリー。 しかしこれは、この映画の最初の30分と残りの部分でまったく別物、というか二部構成になっていて、この展開が見事としか言いようがないのです。 ネタバレになってしまうのであまり詳しくは書けませんが、最初の30分までは「ふーん、なぜこの映画がここまで話題になるんだろう?」と思うのですが、残りの時間をかけてすべてのナゾを解く、というかすべての伏線をキレイに回収していく、その構成の切れ味が爽快なのです。

でなぜ、この映画の話から入ったかというと、まさにこの作品「The Cold Moon」の伏線の張りめぐらせ方とその回収の仕方が素晴らしいのです。 どんでん返しというか息つく暇のないハラハラの展開、そしてすべての辻褄がもれなくピッタリ合った時のゾクゾクする感じがたまりません。

車椅子の四肢麻痺の名探偵リンカーン・ライムと助手兼恋人の美人刑事サックス。 このコンビがウォッチメイカーと名乗る残忍な猟奇的殺人鬼の犯罪を防ぐべく推理を駆使して立ち向かう。 さらに今回は容疑者へのインタビューを通じて、態度や口調などから相手のウソを見抜く専門家キャサリン・ダンスが登場! 彼女のキャラクターがまたエッジが効いていて良い。容疑者を追い詰めるところ、ちょっとコロンボみたいな感じ。天才ライムをして「秘密兵器を差し向ける」とまで言わしめた女性。変わり種の捜査官。 彼女が主役の本が読みたいと思ったら、既にスピンオフ作品がシリーズ化しているそうです。 以前にJoe Navarroの「What Every Body is Saying (FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学)」という本を読みましたが(43冊目)、このジャンル、もう少し掘り下げてみたいです。
(2006年発刊)


メモ (少しネタバレあります)

● キャサリン・ダンス捜査官の質問技術。 ベースラインとは、普段の会話から通常レベルの相手の反応を覚える作業。

She asked a few more questions about his business, filing away a library of gestures and glances and tones and words –establishing the baseline for his behavior.


● ロンはライムとずっとコンビを組んできたニューヨーク市警察の警部。 もしサックスに万が一の事があればどうなるか、ロンはよく分かっていた。危険な任務に就こうとするサックス捜査官に。「いいな。決して無茶をするな。もしお前になにかあったらライムは俺を決して許さないだろう」

They won’t think twice about tossing your body into the trunk of a car at JFK long-term parking . . . God bless you, kid. Go get ’em. But be careful. I don’t want to have to go breaking any bad news to Lincoln. He’d never forgive me.’


● ダンス捜査官、この冴えた観察眼、カッコいい。
Agent Dance glanced at the officer and nodded toward Vincent. ‘He was doing a good job until we got into the diner. Once we sat down I knew he was faking.’ ‘No, you’re crazy. I—’ She turned to Vincent. ‘Your accent and expressions were inconsistent and your body language told me you weren’t really having a conversation with me at all.


● ネタバレになるので、未読の方はここは読まないで下さい。とても素敵なシーンなのでメモに残したかった。

Sachs lowered her head. Then she gave a soft laugh. ‘Dad was always the modest one. It was just like him –the highest commendation he ever got was secret. He never said a thing about it.’


読み進めるにつれて、犯人の検討がついてきてもう終わりかなと思っていると、まだ随分とページが残っている。 なにーっ、まだなにかあるの? このもどかしさ。 そして、まさかこんな展開とは。 ラストの余韻も素晴らしい。 これは文句なしの徹夜本でしたよ。 おかげさまで寝不足です…
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The Cold Moon: Lincoln Rhyme Book 7 (English Edition)

The Cold Moon: Lincoln Rhyme Book 7 (English Edition)

The Diary of a Young Girl (Anne Frank) - 「アンネの日記」- 221冊目

ジャンル: ノンフィクション(自伝)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

「Dear Kitty」

空想上の友達にあてたこの書き出し。 わずか14歳の少女が綴った日記は、第二次世界大戦時・ホロコーストの最も有名なドキュメンタリーの一つです。 また一級の青春小説とも言えます。(フィクションではありませんが) 本作を読むと、戦争とは何か特別な出来事としてある日突然起きるのではなく、普通の日々の暮らしの中にひっそり染み込むようにやってくる狂気そのものであることが伝わります。 今まで同じ社会の一員として生活してきたユダヤ人を急に排斥し幽閉、殺処分しようと考えるなど普通に考えてあり得ない。 しかしこれはまぎれもない事実です。多くの命がこのホロコーストにより奪われました。「常識から見てまずそんな事は起こらない」と思うのはいかに甘い考えであるか、集団心理の怖さは侮れません。

ずっと昔にも本作を邦訳で読んだことがあるのですが、その時にはそれほど印象に残りませんでした。 しかし今回は英文で内容を理解しようとじっくり丁寧に読んだためか、読み飛ばしが無く、前回よりも深く心に響いたと感じました。
( 1947年発刊)


メモポイント

ティーンエイジャーらしく、新しくスタートした「秘密の隠れ家」の生活を快活に綴っている。 ごく普通の暮らしをしてきた13歳の少女の日記。 日々の生活の延長であったことが分かる。

I don’t think I shall ever feel really at home in this house, but that does not mean that I loathe it here; it is more like being on vacation in a very peculiar boardinghouse. Rather a mad idea, perhaps, but that is how it strikes me. The “Secret Annexe” is an ideal hiding place. Although it leans to one side and is damp, you’d never find such a comfortable hiding place anywhere in Amsterdam,


● やがて同じ隠れ家に住む別家族の少年Peterに恋心を抱くようになる。彼との二人の時間。窓から見える栗の木に自然を感じる。 このような限界状態でも、このように考えることができた彼女。

“As long as this exists,” I thought, ‘’ and I may live to see it, this sunshine, the cloudless skies, while this lasts, I cannot be unhappy.”
The best remedy for those who are afraid, lonely, or unhappy is to go outside, somewhere where they can be quite alone with the heavens, Nature, and God. Because only then does one feel that all is as it should be and that God wishes to see people happy, amidst the simple beauty of Nature. As long as this exists, and it certainly always will, I know that then there will always be comfort for every sorrow, whatever the circumstances may be. And I firmly believe that Nature brings solace in all troubles.
(中略)
When I looked outside right into the depth of Nature and God, then I was happy, really happy. And Peter, so long as I have that happiness here, the joy in Nature, health and a lot more besides, all the while one has that, one can always recapture happiness.


● クリスマスプレゼントを交換したり、アイスクリームを食べたりといった通常の10代前半の女の子らしい生活から、2年に及ぶ「隠れ家」での抑圧された生活、母親との確執、閉鎖空間の中でのプライバシーの無い共同生活。大人たちへの軽蔑。 徐々にお互いを気遣う心も無くなっていく。 しかしこのような中でも、彼女は希望を失わないように必死に耐え続けて夢を綴った。
「自分が死んだ後も残るような生きた証を残したい」

I want to get on; I can’t imagine that I would have to lead the same sort of life as Mummy and Mrs. Van Daan and all the women who do their work and are then forgotten. I must have something besides a husband and children, something that I can devote myself to!
I want to go on living even after my death! And therefore I am grateful to God for giving me this gift, this possibility of developing myself and of writing, of expressing all that is in me.
I can shake off everything if I write; my sorrows disappear, my courage is reborn. But, and that is the great question, will I ever be able to write anything great, will I ever become a journalist or a writer? I hope so, oh, I hope so very much, for I can recapture everything when I write, my thoughts, my ideals and my fantasies.

「夜と霧」(47冊目)にも見られた、それでも希望は失わない姿勢。


● Peterに寄せる情熱的な恋心。 普通の女の子の日記。 初めこそ、これはよくある恋に恋して喜び涙する少女の日記だったが、閉ざされた空間で暮らす彼女がほんの短い2年の間にどんどん精神的に成熟していく過程が辿れる。

I created an image of him in my mind, pictured him as a quiet, sensitive, lovable boy, who needed affection and friendship. I needed a living person to whom I could pour out my heart; I wanted a friend who’d help to put me on the right road.



歴史にifはありませんが、もし後ほんの少しでも彼女たちの隠れ家が発見されずにいたならば… そして、戦争が終わりアンネたちが解放されていたならば、一人の賢明な大人の女性としての人生を送ることができたでしょう。 そして「こんなこともあったわね」などと思い出の一つにでもなっていたことでしょう。
1944年8月1日、この日記は「人として成長したい」と綴った文章で突然止まっています。 小説では無いので当然エピローグなどはありません。 ホントに突然です。 そして、この半年後の彼女とその家族の運命を知っている我々読み手側としては切なさと悲しさが込み上げてきます。

生を全うできなかった者たちの痛みが突き刺さる。

The Diary of a Young Girl (English Edition)

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The Art of Profitability (Adrian Slywotzky) - 「ザ・プロフィット」- 220冊目

ジャンル: 経済・ビジネス
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆


「ビジネスの上で、利益を上げるにはどのようなパターンがあるのでしょう?」

業績不振の工業部品メーカーに勤める若手ビジネスマンSteve。 経営の神様のような中国系のおじいちゃんコンサルタントZhaoからのアドバイスを受けつつ学び成長していくというストーリー。 (このおじいちゃん、ぼくの脳内イメージでは映画「ベストキッド」に出てくるミヤギ老人に変換されてます)

なぜかアメリカのビジネス本はこの手の小説仕立てが多いようですね。「The Goal」や「Leadership and Self-deception」(67冊目に感想)とか。 本作、難しい修飾語などは使われておらず、英語の文章はかなり読みやすい部類でしょう。 ただ、かなり芝居掛かっただ言い回しが多い割には当たり前のことが書かれており、あまり大したこと言ってないような気がしました。 邦訳のレビューを見ると、評価が高いようですが、残念ながら自分にはこの本の素晴らしさに気づくことができなかったようです。 ただこのおじいちゃんコンサルが、主人公にいくつかの課題図書をオススメしているのですが、こちらは参考文献として役に立ちそうな気がします。「孫子(The Art of War)」(15冊目に感想)も紹介されていましたが、タイトルの「The Art of Profitability 」の由来でしょうかね。
(2004年発刊)


メモポイント
● 収穫逓増の原則。 臨界質量を超えると、顧客は集中する。

The more critical mass you build, the higher your probability of putting together a package that works.


● 過去にやってきたことはそれなりの理由がある。 そこを考えないで、なんでも新しいことに価値があると考えるのは早計である。

“I think that’s fair,” Zhao said gently. “And consider them from the point of view of the people you need to work with,” he added. “Most business people bring a lot of history to the decisions they make. It’s not very realistic to expect them to jettison it all just because a bright young man comes along with a good idea.”


● ビジネスマンにとっておおよそのサイズ感を持っておくことが大事。大間違いを防ぐために、正確な数字は必要ない。 確かに、経営者やFP&A担当者にはこのポイントは大きい。

It’ll get you a lot closer to winning. It’ll help you make slightly better decisions every day. And once a month, it’ll keep you from making a mega-mistake.


● 広告は継続的に行うことこそ、最も効果があるらしい。 累積的効果。
そして、自身を一つのブランドにしてしまう、これが効率的。


So I measured this for ten other pharmaceutical categories, then another ten outside pharmaceuticals. I found some fascinating stuff. With undifferentiated products, cumulative investment drives share. Ogilvy was right. The persistent spenders win out in the long run.
(中略)
“So there are efficient ways to build brand,” Steve observed. “Hyperefficient.”



小説仕立ての話としては、前述した「The Goal」(188冊目に感想)の方が、夫婦の危機を乗り越えるエピソードも盛り込まれてハラハラドキドキでもっと面白く感じました。 こちらは文句なしのオススメ!

The Art of Profitability

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The Eagle Has Landed (Jack Higgins) - 「鷲は舞い降りた」- 219冊目

ジャンル: 小説(アクション)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

カッコいい男たちの話を読みたい! そう思いました。 そして評判を聞いて手にしたこの一冊。 期待は裏切られませんでした。 男前な文章があるとすれば、きっとこのような文章のことを言うのでしょう。キビキビとして硬質な文章。 読んでいて小気味よいとはこのことです。 簡潔でいて味がある。 そして感動で鳥肌が立つような心揺さぶる名シーンがいっぱい。 惚れてまうやろー! (古い…)

一言で言えば、ナチスドイツ軍によるイギリス首相チャーチルの誘拐作戦の顛末記。(もちろんフィクションです) 読み手側は、結局チャーチルは誘拐されない、ドイツ軍は敗北に終わる、この歴史の結果を知っています。 それでも、この作戦がどのように立案、遂行され、そしてほころびを見せるかについて、まるでドキュメンタリーのような冷静なタッチでリアルに描写されている、この点が本作が高く評価されている理由なのでしょう。本作以前は、小説の題材として扱われる第二次大戦時のドイツは、ナチスを中心とした典型的な悪の権化として描かれることがほとんどでした。 しかしここでのSteiner中佐の部隊のように、ドイツ軍が誇りや苦悩を同様に抱える人間として魅力的に描かれるのは、当時はかなり斬新な視点だったようです。


粗筋を簡単に。 第二次大戦末期の敗色濃いナチスドイツ軍。 ゲシュタポのトップであるヒムラーの命により、一発逆転のチャンスを狙って、連合国軍の中枢であるイギリス首相チャーチルを誘拐するという作戦が仕組まれた。 イギリスに潜伏中のおばちゃまスパイ・Mrs. Joanna Grayからの情報により、チャーチルがお忍びでイギリスのある片田舎で休養するというのだ。連合国ポーランド義勇軍幹部のフリをして標的に近づくため、白羽の矢が当たったのはドイツ人の父とアメリカ人の母を持つドイツ空軍パラシュート部隊のリーダーKurt Steiner中佐(Lt. colonel)と、アイルランド共和軍(IRA)の伝説的なテロリストLiam Devlin。 この荒唐無稽とも思われる作戦は多くの障害を乗り越えながらもかろうじて進んでいく。 そしてついに、ポーランド軍パラシュート部隊の制服に身を包み、Steiner一行は標的近くのNorfolk に何とか上陸した。その際の暗号コードが、この小説のタイトル「The Eagle Has Landed」(鷲は舞い降りた)。 上陸後、その土地の村人たちにも信用されていたSteiner中佐の部隊だが、彼らが人間らしく振る舞ったがゆえの、ある「善行」から、思いがけずもこの作戦が綻び始める…
(1975年発刊)



メモポイント (かなりネタバレあります。注意!)

● 本作を魅力的にしているポイントは男気溢れる野郎どもの話だけではない。作戦の先導役として村に潜伏したLiam Devlinと、そこで出逢った村娘Molly Priorの恋物語
Mollyは、恋人となったDevlinの不審な行動を見て彼が闇市場の違法ビジネスに手を出しているのではないかと勘違いをして、彼の身の上が気になって仕方がない。(もちろんドイツ軍のスパイとは想像もしていなかったが) そして、その後どういうわけか「彼はイギリス軍の特殊任務についているのだ」との勘違いをして安心するのだが、その彼女の安堵した時の描写があまりにも可愛らしくてたまらない。 恋人が国に忠誠を誓った信頼できる男と分かって、誤解が解けて心が飛び跳ねているよう。

「これで分かったろう、モリー。 良い子だからもうあまり詮索しないで俺からの連絡を待っていてくれ。そんなに待たせないよ」
「うん、大丈夫よ、ライアム。 信じて、もう邪魔しない!」

I thought it was something to do with the black market and you let me think it. But I was wrong. You’re still in the army, that’s it, isn’t it?’
‘Yes,’ he said with some truth. ‘I’m afraid I am.’
Her eyes were shining. ‘Oh, Liam, can you ever forgive me thinking you some cheap spiv peddling silk stockings and whisky round the pubs?’
Devlin took a very deep breath, but managed a smile. ‘I’ll think about it. Now go home like a good girl and wait until I call, no matter how long.’
‘I will, Liam. I will.’
She kissed him, one hand behind his neck and swung up into the saddle. Devlin said, ‘Mind now, not a word.’
‘You can rely on me.’


● 現場の兵士たちの双方どちらも望まない不毛な戦い。 無能な将に率いられた部下たちがどれほど悲惨なものか。 ナチスドイツのヒムラーといい、在英米国軍のShafto大佐といい。 命の重さが感覚的に理解できない。 愚かなことは罪なこと。
ヒムラーの部下でドイツ本国で誘拐作戦の総指揮を取らされるRadl中佐。 家族をナチスの人質に取られたも同然の境遇。 「常に誰かが苦しんでいる… いつまで続くのか。 神よ、この茶番を早く終わらせたまえ」力なく独りごちた。

The field car moved off and he stood looking out to sea filled with an indescribable feeling of bitterness. Someone always suffered –always. His hand ached, the eye socket burned. ‘God, how I wish it was all over,’ he said to himself softly and he turned and walked away.


● ついにDevlinの正体がドイツ軍のスパイであることがMollyにバレた。 Mollyは自分を裏切って誘拐作戦に利用したDevlinが許せず「裏切り者は皆の前で縛り首になればいいわ!」と激怒しDevlinの前に姿を現した。 しかし、Devlinの愛が真実であることを知り、これから死地に自ら飛び込もうとする彼の姿を見ると、Mollyの憎悪の念はみるみる萎んでいく。

Molly said, ‘What are you going to do?’
‘Into the valley of death, Molly, my love, rode the six hundred and all that sort of good old British rubbish.’ He poured himself a glass of Bushmills and saw the look of amazement on her face. ‘Did you think I’d run for the hills and leave Steiner in the lurch?’ He shook his head. ‘God, girl, and I thought you knew something about me.’
‘You can’t go up there.’ There was panic in her voice now. ‘Liam, you won’t stand a chance.’ She caught hold of him by the arm.
‘Oh, but I must, my pet.’ He kissed her on the mouth and pushed her firmly to one side. He turned at the door. ‘For what it’s worth, I wrote you a letter. Not much, I’m afraid, but if you’re interested, it’s on the mantelpiece.’

The door banged, she stood there rigid, frozen. Somewhere in another world the engine roared into life and moved away. She found the letter and opened it feverishly. It said: 「Molly, my own true love. ......


● 村の子供たちが足を踏み外して川に落ちてしまった。溺れかけた子供たちの命を救うために命を落としたSteiner 中佐の部下の勇気ある行動により、彼らの出自がドイツ軍であることがバレてしまい、Steiner 達は在英米国軍の襲撃を受けて窮地に陥ることになる。 絶対絶命の中、助けた少年の母親にSteiner が声をかける。
「(溺れた友達を救おうと川に飛び込んだ) 勇敢な息子さんだ。」
その少年はSteinerを見上げて尋ねる。
「おじさん達はどうしてドイツ人なの? どうして僕たちの味方じゃないの?」
Steiner は思わず声に出して笑って、その母親に言った。
「さあ、息子さんを連れて行きなさい。なんとも答えに困ってしまう質問なんでね。」

‘He’ll be all right, Mrs Wilde,’ the young Oberleutnant said. ‘I’m sorry about what happened in there, believe me.’
‘That’s all right,’ she said. ‘It wasn’t your fault. Would you do something for me? Would you tell me your name?’
‘Neumann,’ he said. ‘Ritter Neumann.’
‘Thank you,’ she said simply. I’m sorry I said the things I did.’ She turned to Steiner. ‘And I want to thank you and your men for Graham.’
‘He’s a brave boy,’ Steiner said. ‘He didn’t even hesitate. He jumped straight in. That takes courage and courage is something that never goes out of fashion.’
The boy stared up at him. ‘Why are you a German?’ he demanded. ‘Why aren’t you on our side?’
Steiner laughed out loud. ‘Go on, get him out of here,’ he said to Betty Wilde. ‘Before he completely corrupts me.’



後半は、映画「ワイルドバンチ」状態のハードな銃撃戦が展開。 死地で育まれる男達の絆。 望月三起也のマンガで読みたいところです。
そして事件から数十年後にエピローグとして語られる後日談。あっと驚く展開が残されています。


それから、ドイツ軍を魅力的に描いた作品として、Uボート乗組員達の物語、Robert Kurson「Shadow Divers」(38冊目)もオススメです。

The Eagle Has Landed (English Edition)

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Project Management (G.Michael Campbell) - 「世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント」- 218冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆

今、ある会計関連のパッケージソフトの導入プロジェクトに関わっています。 予算も多額で関係者も多いこのプロジェクト。考慮すべきポイントが多岐に渡り、手続きに抜けや漏れが出ないようにしたい。 で、必要に迫られて手にした本です。 (オモシロ本として紹介しているのではないので、★は二つでした)
この本、プロジェクトを成功に導くための組織の束ね方、人身の掌握方法、スケジューリング、予算取り、更にはトップへの報告ポイントから打ち上げの奨励まで、そのノウハウが実に詳細に説明されています。 ERPの導入プロジェクトなどには欠かせない知識と言えるでしょう。
(2014年発刊)


メモポイント

● プロジェクトを成功に導く12の黄金律。

1. Gain consensus on project outcomes. (目的は事前に明確に同意)
2. Build the best team you can. (ベストメンバーの人選)
3. Develop a plan and keep it up to date. (周到に計画、まめに更新)
4. Determine what you really need to get things done. (本当に必要な条件を絞り込む)
5. Have a realistic schedule. (現実的な計画作り)
6. Don’t try to do too much. (欲張りはNG)
7. Remember that people count. (メンバーは大事に)
8. Gain the support of management and stakeholders. (トップからの支援)
9. Be willing to change. (計画の修正を恐れない)
10. Keep others informed of what you are doing. (周りを理解者に)
11. Be willing to try new things. (新たな方法を試す)
12. Become a leader. (管理者ではなくメンバーの士気を鼓舞するリーダーに)


● プロジェクト進捗についてステークホルダーから尋ねられた場合の対応。 これは大事。全てを盛り込もうとせず、聞かれたことに答えることが効率的。しかも即座に応えられることで、十分に練られた計画であるとの印象を与えられて相手は安心する。

You should also know how much detail you will need to provide. Sometimes in a preliminary review like this, the stakeholder will not want a lot of detail. If that’s the case, leave the details out of the plan, but bring along any supporting information you have prepared. That way, if they ask you a question, you can respond quickly without having to say “I’ll have to get back to you with that.”


● どんなに練られた計画だったとしても想定外のトラブルが発生するのがプロジェクト。しかしプロマネたる者、スポンサーに対しては、どんな状況でも自身のコントロール下にあると思わせなければならない。「ノー・サプライズ!」

Never surprise your sponsor with a problem. Remember in Chapter 6 about the politics in senior management—there must be a perception that they are in control.


● 問題点の8割は2割の原因から発生する。パレートの法則に基づいた優先順位のつけ方。チェックリストの有効性。

The Pareto diagram is the source of the famous 80/ 20 rule that says that 80 percent of your problems will come from 20 percent of the sources. You are trying to evaluate where the greatest source of problems is occurring and take corrective action. In this case, the video component seems to be the greatest source of problems, so it becomes the highest priority for corrective action. Using checklists and the whole suite of available quality tools will aid you tremendously in getting the results you and stakeholders want.



話はかわって。

先日、黒澤明の「天国と地獄」をテレビで観ました。 有名な作品なのでご存知の方も多いと思います。 ストーリーはこんな感じです。
ある大企業の重役(三船敏郎が演じる)の息子が誘拐され身代金を要求された。 しかし実は誘拐された子供とは重役のお抱え運転手の息子であり、一緒に遊んでいたときに取り違えて攫われたのだった。誘拐犯はその事実を知ったが変わらずに重役に身代金を要求、重役は我が子と取り違えられた他人の子供のために自身の全財産を投げ打つかどうかを悩む、といったもの。

ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、いきなりなぜこの映画の話をしたかというと、この仲代達也が演じた主任担当警部の仕事振りを見て「プロジェクト・マネジメントのリーダーみたいだなぁ」と感じたからでした。 プロマネのテクニックはある程度、書籍で理解することができるかもしれませんが、感覚的な側面について知るにはこの映画はとても参考になると思います。 この映画で描かれる捜査班は、組織横断型プロジェクトチームというよりも、どちらかと言えば通常の警察組織のライン業務の範疇に入るのでしょう。それでも全員で「犯人逮捕」という一つの目標に向かって、様々な手続きを同時進行で緻密に計画して積み上げていくステップにはプロジェクト・マネジメントとの相関性がとても高いように思えました。

そしてこの映画の中でプロマネにあたる主任担当警部(仲代達也が演じました)が秀逸です。特に全体定例報告会のシーンなんかゾクゾクします。(捜査員達が順番に立ち上がって報告する「踊る大捜査線」などでよく見る例のアレです) 大勢の捜査員達からの情報を集めて、冷静沈着で入手した情報を漏れなく分析し即時に判断、的確な指示を与える。しかし冷徹というわけではなく、情熱的で暖かい心も持っている。 まさに、経済学者のマーシャルが唱えた「Cool Head but Warm Heart! 」の体現者ですね。

今回は映画のオススメになってしまった…

Project Management, Sixth Edition (Idiot's Guides)

Project Management, Sixth Edition (Idiot's Guides)

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Walden (Henry David Thoreau) - 「森の生活」- 217冊目

ジャンル: 古典
英語難易度: ★★★
オススメ度: ★★☆☆☆

ふー、やっと読み終えました。 美文調で古語もふんだんに使われており、かなり読みづらかったです。 ハーバード大学卒の意識高い若者が「持たない生活」を志向し元祖ミニマリストとして、ウォールデン湖のほとりで、二年間の「森の生活」をおくった際のエッセイ。(1854年発刊)

日々の暮らし振りはけっこう詳細に書き込まれています。 ローラ・インガルス・ワイルダーを思い出しました。いや「下ノ畑ニ居リマス」の宮沢賢治か。

後半は池の周りに棲息する動植物についての観察がファーブル昆虫記やシートン動物記並みに細かく記されています。 そして、これらの英語名称がサッパリ分かりません。 辞書で引いても記憶しておくのも難しく… おおよその雰囲気で飛ばし読みしてました。
シツコイですが、それにしても読みにくい。 専門単語以外は一見すると難しくなさそうなんですが、読んでいて意味がよく分かりません。 古今東西の古典の引用もふんだんに使われています。 ちょっと衒学趣味でナルシスト風なのが鼻につきましたが、それでも自身のプリンシプルに正直な人なのでしょう。 僕の買ったkindleには「On The Duty of Civil Disobedience」というエッセイも収録されていますが、当時のアメリカ政府の政策(奴隷制メキシコ戦争の対応など)に反対して税金を払うのを拒否して投獄されたときの顛末も記されています。


メモポイント

● ただ歳を取るだけの人は尊敬するに値しない。30歳の著者がバッサリ!

Practically, the old have no very important advice to give the young, their own experience has been so partial, and their lives have been such miserable failures, for private reasons, as they must believe; and it may be that they have some faith left which belies that experience, and they are only less young than they were. I have lived some thirty years on this planet, and I have yet to hear the first syllable of valuable or even earnest advice from my seniors.


孔子の言葉を引用。 「これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ。これ知るなり」

Confucius said, “To know that we know what we know, and that we do not know what we do not know, that is true knowledge.”


● どんだけ一人が好きやねん! 旅路では、妙に孤独でそして切ない感じがこみ上げる。 この感覚、けっこう好きです。

I find it wholesome to be alone the greater part of the time. To be in company, even with the best, is soon wearisome and dissipating. I love to be alone. I never found the companion that was so companionable as solitude. We are for the most part more lonely when we go abroad among men than when we stay in our chambers. A man thinking or working is always alone, let him be where he will. Solitude is not measured by the miles of space that intervene between a man and his fellows.


● 本作の締めの言葉。「ただ待っているだけでは夜明けは来ない。我々が目を開けようとして初めて夜明けはやって来る。」

I do not say that John or Jonathan will realize all this; but such is the character of that morrow which mere lapse of time can never make to dawn. The light which puts out our eyes is darkness to us. Only that day dawns to which we are awake. There is more day to dawn. The sun is but a morning star.



英文読解力が上がれば、もっとスムースに読み終えていたと思います。原仙の英文標準問題精構をやり直そうかな。

Walden (AmazonClassics Edition) (English Edition)

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A Random Walk Down Wall Street (Burton Malkiel) - 「ウォール街のランダムウォーカー」- 216冊目

ジャンル: 投資・マネー
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

小説「赤毛のアン」に出てくるマシューおじさんは、ぼくの好きなキャラクターの一人です。 寡黙で優しいこのおじさんの命を奪う心臓発作の引き金となったのは、彼の全財産を預けていた銀行が破綻したとのニュースでした。 これ、児童小説にしては結構シビアで生々しい話ですが、年配のマシューおじさんにとっては、それだけショッキングなことだったのでしょう。 お金の話題ははしたないと少し敬遠されがちなのですが、人が生きていく上で避けては通れないものです。 最低限の知識は身につけておくべきことですよね。

ということで、今日はお金と投資運用のお話です。 「株」というと危険で大損するかもというイメージを持たれている方も多いと思います。 確かにこの種の取引ではリスクは避けられないのですが、やり方次第によってはかなり高い確率で安定した運用を行うことが可能である、と主張している本です。
「え〜、そんなウマイ話があるのなら、みんなやってるでしょう? 怪しいなあ」と思うのが道理ですが、本書の説かれた通りであれば「フンフン、なるほど」と納得。ただしご注意、この投資手法には覚悟と根気が要ります。(詳しくは下段で)

株運用、インデックス投資最強説。「ほったらかし投資術」のはしりでしょう。投資の話題だけではなく、経済、金融の歴史をとても分かりやすくまとめた一級品です。 英語もとても読みやすい。 お金の運用にお悩みの方には必読の書。
(1973年 初版発刊)


メモポイント
● 投資で金を稼ぐことは何も難しいことではない。 単純に株を買って広い範囲のポートフォリオの割合に従って長期保有すること。 たったこれだけ。 ただ難しいのは、短期的に儲かりそうに見える個別銘柄に投機的に金をつぎ込みたいとの誘惑に打ち勝つこと。

It is not hard, really, to make money in the market. As we shall see later, an investor who simply buys and holds a broad-based portfolio of stocks can make reasonably generous long-run returns. What is hard to avoid is the alluring temptation to throw your money away on short, get-rich-quick speculative binges.


● 10年以内での投資では成功するかどうかは保証できない。 つまり、インデックス投資で成功するには10年以上ホールドするつもりでないとダメだということ。

CAPEs do a reasonably good job of forecasting returns a decade ahead and confirm the expectation presented here of modest single-digit returns over the years ahead. But if your investment period is for less than a decade, no one can predict the returns you will receive with any degree of accuracy.


● 本書の肝要。分厚い一冊を5点にまとめるとコレ!

1. リスクとリターンは表裏一体であることを忘れるな。ハイリスクはハイリターン、ローリスクはローリターン。バブル期にあるようなウマイ話などない。 当たり前ですね。
2. 投資のリスクは長期間保有することで低減できる。 瞬間の相場の変動に一喜一憂しない。
3. ドルコスト平均法は効果あり。(異論があることは認めるが。) 一定額を定期的に投資することでリスクを低減させる。つまり、相場が下がっている時でも一定額で株を購入するということはより多くの株を安く買えるということ。 長期スパンで経済規模が拡大していれば、いずれはある程度の運用益が見込める。
4. 個別銘柄ではなく世界全体の経済活動を反映したポートフォリオの割合に従って株を買い(インデックス投資)、定期的にその割合が想定通りとなるように調整すること。(リバランシング)
5. 当然、長期間の投資の過程では相場が激しく下落することもある。 その局面においても耐えられる経済状況であることが大事。 自身のリスク許容度を超える投資を行ってはならない。 運用状況が気になって眠れない、なんてことは絶対ダメ!

1. History shows that risk and return are related.

2. The risk of investing in common stocks and bonds depends on the length of time the investments are held. The longer an investor’s holding period, the lower the likely variation in the asset’s return.

3. Dollar-cost averaging can be a useful, though controversial, technique to reduce the risk of stock and bond investment.

4. Rebalancing can reduce risk and, in some circumstances, increase investment returns.

5. You must distinguish between your attitude toward and your capacity for risk. The risks you can afford to take depend on your total financial situation, including the types and sources of your income exclusive of investment income.


ローソクの様な折れ線グラフを使って相場の動きを観察して買い時・売り時を決める人をテクニシャン(著者はチャーティストと表現) と言いますが、「こんな相場の先読みなど分かるハズがない」とバッサバッサと切り捨てる、小気味良いキレ味です。 一方、投資対象会社の過去の財務諸表等から会社の底力を判定して投資する人をファンダメンタリストと言いますが、著者はこちらが良いとも言っていません。 つまり、潮目を見て株価の変化を予測するとか、会社の過去実績を見て将来利益を予測するとか、そもそも無理筋だと切り捨てています。唯一、うまくいく可能性があるのはインデックス型投資で長期保有、これのみと主張しています。 実際に過去の運用成績を見ると、個別銘柄にピンポイントで投資を行うアクティブ投資よりも、マーケット全体の株価に連動させた指標に基づいて投資を行うインデックス投資(パッシブ投資)の方が僅かに上回っています。 (しかもアクティブ投資のアドバイザーにはフィーの支払いが発生します)

While it sounds suspiciously like an argument used by technical analysts, fundamentalists pride themselves on the fact that it is based on specific, proven company performance. Such thinking flunks in the academic world. Calculations of past earnings growth are no help in predicting future growth.


面白いエピソードが満載で、読み物としても楽しめます。 過去のバブルの話とか、株価と女性のスカート丈の長さの流行を連動させて予想するトンデモ予想屋とか。 CAPM理論やカーネマンの行動経済学についても随分ページを割いて分かりやすく説明してくれてます。 これ一冊で投資にまつわる様々な知識を仕入れることができます。
この本、初版が発行されたのが1973年なのですが、一貫してこの点を主張していて、50年経った現在も版を重ねていてブレていません。(インデックス・ファンドという商品そのものがまだ存在していなかった初版当時から、著者はこの概念を主張しています。) この主張の正当性は、この長い時間を経ることで証明を与えられています。 ぼくが読んだのは11th edition (2015年発刊)でした。版を重ねる中で常に最新の話題も加えられており信頼感が持てます。

今日の教訓。「果報は寝て待て」

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