hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Childhood's End (Arthur C. Clarke) - 「幼年期の終わり」- 139冊目

ジャンル: 小説(SF)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

いかにも神林しおり嬢の好きそうな黒っぽい表紙です。 ハードなSFではなくて思いのほか読みやすい英文。 ストーリー設定が巧みで一気に読ませる内容ですね。

簡単にあらすじを。
ある日宇宙の彼方より知的生命体が来襲して、世界の主要都市上空に円盤型宇宙船を常駐 させます。(雨雲のように重苦しくのしかかるイメージは映画インデペンデンス・デイの描写そのまま)
すわっ、征服・蹂躙されると思いきや、さにあらず。 圧倒的に進んだ科学技術を駆使して彼らは人類積年の問題であった国家間の争いや貧困を半ば強制的に次々に解決していきます。植民地総督のような位置づけの異星人カレーランが登場しますが、彼は独裁者というよりも感情が決してブレない穏やかな父親のような態度で地球人に接します。 声による指示のみで決して姿を見せようとしない保護者のような異星人たちに、人類は当初その真意を測りきれず不安を抱くものの、与えられた平和に徐々に慣れていきます。 それはまるで動物保護区にいる絶滅危惧種の動物たちと保護官のよう。 そして刺激が少なく平和だが退屈な毎日がしばらく続きますが、やがて訪れる驚愕の結末。
タイトルにあるように幼年期とは進化した異星人からみた人類はまだ幼年期であるということ。 それが「終わり」ということは、つまり…
(1953年発刊)


メモポイント(ちょとネタバレ)

● 異星人がもたらした圧倒的に進んだ科学技術は、その存在だけで既存の宗教を壊滅させてしまった。
Science can destroy religion by ignoring it as well as by disproving its tenets.


● 人類史上初めての「平和で退屈な」日々が訪れる。 しかし、争いの中に創造性がある。競争のない世界に発見はない。
The end of strife and conflict of all kinds had also meant the virtual end of creative art.


● 「コックリさん」登場。誰も知らないはずの異星人の故郷の名前が示される。
“There you are,” he said. “You put your fingers on this, and it moves around with no resistance at all.”


幼年期の終わりを迎えた地球では、その進化の過程として新たな新人類が生み出されるようになる。 新人類である子供たちは、やがて旧人類である親たちとの意思の疎通も困難になってしまう。 徐々に分かり合えなくなっていく子供たちとの別れを知った親たちの驚愕。 異星人に救いを求めるが彼の回答が切ない。 「子供たちとの今のこの時間を精一杯楽しんでください。もうまもなくあなたたちの子供たちではなくなるのですから。」
I’ve only one more question,” he said. “What shall we do about our children?” “Enjoy them while you may,” answered Rashaverak gently. “They will not be yours for long.” It was advice that might have been given to any parent in any age: but now it contained a threat and a terror it had never held before.


この新人類の設定は、いろんなSF作品に出てくるニュータイプの概念にも影響を与えたのでしょうね。
それにしても圧巻でした。 ラストの凄まじいスペクタル描写の盛り上がりはまさに天才のなせる技。 それは「 百年の孤独」にも似て。

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