hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Freakonomics (Steven D. Levitt) - 「ヤバい経済学」- 156冊目

ジャンル: 経済・ビジネス
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

小噺をひとつ。

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ある科学者がバッタを使って聴覚の実験をしていた。 彼はバッタの片側の脚を切って言った。

「飛べ!」

バッタはなんとかジャンプした。
さらに反対側の脚も切った。

「飛べ!」

バッタは動かない。

科学者はおもむろに実験結果をノートに記した。
「バッタの耳は脚についている」

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なんともまあ、このバッタには気の毒な話です。 ここまでヒドい話でなくても、現実社会では似たような理由付けされていることもあり得ます。


さて今回の本は、データを元にその背景理由を探るという趣向です。 邦題は「ヤバい経済学」。 内容から言えば「ヤバい統計学」の方がふさわしい。 ただしこの名称は別の書籍の邦題としてすでに使われています。
(Kaiser Fung 「Numbers Rule Your World)

本作、大量のデータを読者に示してその背景の真相に迫るという構成で、マルコム・グラッドウェルが好んで書きそうなテーマです。 統計を用いた社会学行動経済学、といった内容。 データに裏付けられた主張は切れ味も冴えてオモシロい。 が、読む際に気を付けたいのが先ほど書いた小噺のこと。 見た目から類推した結論は必ずしも正しいとは限らない。 常にこのことを念頭において読んだ方がいいかもしれません。 (2005年発刊)


メモポイント

過激な見解のためでしょうか、データソースの信憑性について、いくつかクレームもあったそうです。 が、しかしそれは枝葉部分に関するものであり、著者の主張を根底から覆すほどの説得力のある反論ではなかったように感じました。

● アメリカで犯罪率が減少した話。 中絶の合法化が犯罪の減少を導くとの主張。 望まずに産んだ子供に対して親は手をかけない。 そうした子供たちが犯罪者予備軍となっていた。 極論ですが。

In the early 1990s, just as the first cohort of children born after Roe v. Wade was hitting its late teen years - the years during which young men enter their criminal prime - the rate of crime began to fall. What this cohort was missing, of course, were the children who stood the greatest chance of becoming criminals. And the crime rate continued to fall as an entire generation came of age minus the children whose mothers had not wanted to bring a child into the world. Legalized abortion led to less unwantedness; unwantedness leads to high crime; legalized abortion, therefore, led to less crime.


● 学校の先生とお相撲さんの持つ共通した不正とは???

What Do Schoolteachers and Sumo Wrestlers Have in Common?

日本の国技、相撲において星取表データベースから読み取れる事実。 それは8勝6敗の力士と7勝7敗の力士の勝敗を比較すると前者が負ける確率が8割も高いということ。 相手が負け越しの瀬戸際にあり、かつ自分の勝ち星に余裕がある場合には、相手に勝ちを譲る「忖度」が働いていると推理。(この主張には日本相撲協会からクレームがあったそうです。)

一方、こちらはシカゴの教育現場で起きた話。 生徒の成績アップにより評価される制度の下で間違った答案を正解に改ざんした教師たちがいた。 どのようにして不正は見破られたたのか? それは後半で難易度が高くなるように設計されたテストの場合、正答率は後半で低くなるのが通常である。 しかし彼女の担当した生徒達の正答率はテスト全体を通じて均一であり、極めて不自然だった。 データによるロジックの展開により真実を突き止める描写はホームズの推理のようで読んでいて痛快。


● 白人名、黒人名と親の経済状況の相関関係。 日本で言うところの「キラキラネーム」でも似たような話、ありますよね。


● 人はインセンティブで動く。しかし過去の経済書が唱える経済面のみがインセンティブではない。社会的、道徳的なインセンティブも存在する。

There are three basic flavours of incentive: economic, social and moral.


「ヤバい統計学」(90冊目) の方の感想にも以前に書きましたが、統計は数字として示すことはできても、その発生原因や理由までを明らかにできないところが難しいですね。 これは多くの統計学者も認めているところです。因果関係と相関関係を取り違えないように。

ちなみに、バッタの耳はどこにあるんでしょうか? 正解は「脚」でした。
合っとるやないかーい。(by 髭男爵)

Freakonomics Rev Ed: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything

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