hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Anne of Windy Poplars (L. M. Montgomery) - 「アンの幸福」- 171冊目

ジャンル: 小説(児童)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

アンという名前のつづりは後ろにeが付くアン(Anne)であり、こちらの方がただのAnnよりもっとロマンチックである、との主人公の主張はアン・ファン・テリブル(「恐るべき子供たち」ではなく、筋金入りのアン・ブックスファン)の方々に取っては有名な話です。 アン・ブックスを日本に紹介した翻訳者である村岡花子さんを主人公にした昔のNHK朝ドラ「花子とアン」のエピソードにも、幼少時の村岡さんの決めセリフ「はなじゃねえ。 花子と呼んでくりょう!」と言うのがありました。 後ろに「子」が付く方が素敵だとの設定は、きっとアンのスペルeエピソードのオマージュですよね。 (「はな」の方が可愛いと思うんですけど)

アンの文字へのこだわりはアンブックスシリーズの随所に現れています。 この作品にもありました。 同僚キャサリンの名前のつづりを見てアンが嬉しそうに言います。 「Kで始まるのがジプシー風で素敵、Cのような気取った始まりでなくて良かった」と。 Kのキャサリンがなぜジプシー風なのか想像の余地のないぼくにはよくわかりませんでした…

さて、アンの年齢の時系列で言えば、本作はアンブックスの4作目にあたりますが、実はアンブックス最終作とも言える「Rilla of Ingleside (アンの娘リラ)」(1921年発刊)よりもずっと後になってから、遡って書かれたものだそうです。 オリジナルタイトルは「Anne of Windy Willows (柳風荘のアン)」。米国版では「Windy Poplars」と改題されました。 (1936年発刊)

すったもんだのすえ、やっとお互いの愛情を確かめ合ったギルバートとアン。 このお話は二人の婚約時代にあたり、ギルバートが医者になるために大学で研鑽を積んでいる間、アンはサマーサイド高校の校長として赴任して活躍するエピソードが書かれています。 アンがギルバートに送る手紙の書簡形式でのストーリー展開は、「あしながおじさん」(1912年)と似ており影響を受けているのかもしれません。


メモポイント
● 印象に残るキャラクターは先ほど紹介したキャサリン・ブルック。 少し老けて見える気難しい性格。 サマーサイド高校の女性教師。 年下なのに校長として上司となったアンにキツくあたる。 「夢見る夢子ちゃんはキライなんだよね」って感じ。

But the thing that annoyed me most … Well, one day when I happened to pick up a book of hers in the staff room and glance at the flyleaf I said, ‘I’m glad you spell your name with a K. Katherine is so much more alluring than Catherine, just as K is ever so much more a gipsier letter than smug C.’
She made no response, but the next note she sent up was signed ‘Catherine Brooke’.

しかし、アンの「北風と太陽」のような態度に徐々に打ち解け始め、後に二人は心を許しあえる友となる。


● 多くは語るまい。 この本で一番好きな箇所はラストシーン。 少しへそ曲がりな家政婦、レベッカ・デューとの別れの場面。(なぜかレベッカ・デューは氏名がセットで呼ばれる) これが秀逸。 シャイで不器用なレベッカ・デューは、面と向かってアンに別れの言葉を言えず手紙を託す。 アンはその手紙を読んで涙ぐむ。そして車に乗ってWindy Willowsを離れていくアン。 彼女が最後に振り返って目にしたのは、窓から身を乗り出すようにして力いっぱいサヨナラのバスタオルを振るレベッカ・デューの姿だった。

(レベッカ・デューからのお別れの手紙に彼女の想いが切々と記されている)
Your obedient servant,
REBECCA DEW
PS God bless you.

Anne’s eyes were misty as she folded the letter up. Though she strongly suspected Rebecca Dew had got most of her phrases out of her favourite Book of Deportment and Etiquette that did not make them any the less sincere, and the PS certainly came straight from Rebecca Dew’s affectionate heart.
‘Tell dear Rebecca Dew I’ll never forget her, and that I’m coming back to see you all every summer.’
‘We have memories of you that nothing can take away,’ sobbed Aunt Chatty.
‘Nothing,’ said Aunt Kate emphatically.
But as Anne drove away from Windy Willows the last message from it was a large white bath towel fluttering frantically from the tower window. Rebecca Dew was waving it.

キャサリンレベッカ・デュー、古くはダイアナのジョセフィンおばさん等々、アンはちょっと気難しめの人の心に飛び込んで大ファンにさせてしまう天才ですね。 男で言えば、本宮ひろ志のマンガに出てくる「サラリーマン金太郎」みたい。 (偏屈なお婆ちゃんが実は政財界の大物だったりする)

ということで取り留めのない話になりました。
それではごきげんよう。さようなら。

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