hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

A Beautiful Mind (Sylvia Nasar) - 「ビューティフル・マインド」- 181冊目

ジャンル: ノンフィクション
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆


2018年 明けましておめでとうございます。 今年もマッタリと読書記録、続けていきたいなと思っております。 細く長くのお付き合い、よろしくお願いします。

さて本年の第一弾は「A Beautiful Mind」 若くして天才と評価された数学者ジョン・ナッシュの数奇な運命を描いた実話。 彼が精神を病み世界から忘れ去られた存在となってから数十年経た後の奇跡的な復活の物語です。 本作、ペーパーバックで買いました。 (Kindle 版は分かりませんが) いくつか写真が載っており、若い頃のナッシュはJFKを思わせる大変な男前でしかも筋骨隆々のムキムキマンです。

よく小説に登場する天才数学者の一般的なイメージを全て具現化したようなキャラクターのナッシュ。 天才的な発想、高慢、ロジカル、偏屈、強烈な自己愛、そして同性愛嗜好。。。 やがてschizophrenia (精神分裂症、今では統合失調症と呼ぶようです)に罹ったナッシュ、その後ずっと狂気の世界をさまよいます。  プリンストン大学の構内を徘徊し何かをブツブツと呟きながら数学の難問を解き続けるナッシュは「怪人(Phantom)」と呼ばれていました。 そして25年の時を経て回復し、さらに5年後の1994年、ナッシュはゲーム理論による経済学への貢献でノーベル(財団による)経済学賞を受賞します。 事実は小説より奇なり、まさに波乱万丈の人生。

この伝記を読んで、ぼくとしてはナッシュ本人そのものよりも彼を献身的に支えた奥さんのアリシアの印象が強く残りました。 ナッシュが統合失調症を発症したのはアリシアが彼の子供を身ごもって間もなくのことでした。 自身と息子の身の危険を感じてアリシアはいったんは離婚をするものの、病におかされたナッシュを一人にするわけにも行かずその後ずっと同居して彼の面倒を見続けました。 そしてその25年もの長きに渡っての彼女の献身がナッシュの回復へとつながり、若い頃の研究の成果として、ついに彼はノーベル経済学賞を受賞するまでに至るのです。 
この伝記はノーベル賞受賞を契機に記されたもので、これを原作にしたラッセル・クロウによる映画が2001年に制作され、あらっと驚くストーリー展開もあり、こちらも大変おもしろうございました。
(2001年発刊)


メモ
● 「いったいどうして。。。 どうして理論とロジックの申し子のような数学者である君が、宇宙人がメッセージを送ってくるなどと荒唐無稽な事を信じるものかね? 宇宙人が地球を救おうとして君を使わしたなんて本気で思っているのかい?」 ナッシュはまじろぎもせずしばらく考えた後に静かに落ち着いて答えた。「それは。。それは超自然的な存在、神がぼくに語りかけてくるからなんだ。。数学の素晴らしいアイデアが思い浮かぶ時とまったく同じようにね。 だからぼくとしてはその指示に真摯に取り組むべき事だと考えざるを得ないんだよ」

“How could you,' Mackey asked, 'how could you, a mathematician, a man devoted to reason and logical proof. . . how could you believe that extra terrestrials are sending you messages? How could you believe that you are being recruited by aliens from outer space to save the world? How could you . . .?' "Nash looked up at last and fixed Mackey with an unblinking stare as cool and dispassionate as that of any bird or snake. 'Because,' Nash said slowly in his soft, reasonable southern drawl, as if talking to himself,'the ideas I had about supernatural beings came to me the same way that my mathematical ideas did. So I took them seriously.”


● 学生たちの間で、プリンストン大学の構内をふらふらと徘徊して数学の難問を解き続ける怪人として有名人となったナッシュ。 勉強し過ぎたり人付き合いが悪い学生は「あの怪人みたいになるぞ」なんておどされたり。。。 そんな風に言われつつもナッシュはある種の畏敬の念をもって扱われていたようだ。 もし何も知らない新入生がナッシュのことを邪険に扱ったりしたら、周りの学生たちからすぐに諭されていた。「おい、彼は君がどうやっても太刀打ちできない程の大数学者なんだぞ」

“Among the students, the Phantom was often held up as a cautionary figure: Anybody who was too much of a grind or who lacked social graces was warned that he or she was “going to wind up like the Phantom.”
Yet if a new student complained that having him around made him feel uncomfortable, he was immediately warned: “He was a better mathematician than you’ll ever be!”


さて、本作が記されたその後の二人は。。。
2001年にアリシアと再び結婚。 ナッシュはやっと自らを取り戻しアリシアの元に戻ってくることができました。 彼女の苦労が実を結びました。 本作や映画では、ノーベル賞受賞あたりの時期までのストーリーをカバーしたもので、当然その後の二人については語られていません。 その後の夫妻はどうなっていたのだろう、ナッシュの病気が再発してはいないだろうか、等とかつては思ったり。。。 そしてつい2年程前の出来事。 ぼくはある朝刊の記事を読んでとても驚きました。 今でもはっきりと覚えています。 それは訃報記事でした。 2015年の5月、ナッシュとアリシアは交通事故で亡くなります。 ある権威ある数学賞を受賞したナッシュは妻アリシアとともに海外での授賞式に出席しました。 そしてその帰路、乗っていたタクシーが事故を起こし、夫婦ともに車外に投げ出され亡くなりました。 ウイキペディアで確認したところ、ナッシュが86歳、アリシアが82歳だったそうです。

この訃報記事から見ると、とても残念で悲惨な事故であった事は間違いないのですが、本作に描かれているように若い頃に辛い人生を送った二人にとっては、晩年は仲睦まじく幸せだったのではないかと感じ、せめてもの救いであったような気がします。

A Beautiful Mind

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