hearthのお気楽洋書ブログ

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Fermat’s Last Theorem (Simon Singh) - 「フェルマーの最終定理」- 197冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★★

数学本を読んで鳥肌が立つことがあろうとは…

本作、最初に出会ったのは邦訳の方なのですが驚愕の面白さでした。 文句ナシの目ウロコ本。上質のミステリーのようです。 Malcom Gladwellの一連の作品ががオモシロ心理学読本とするならば、Simon Singhはドキドキ本格科学(数学)読本とでも言いましょうか。 文系出身の方が読む数学読本として最良の部類に入ると思います。特にこの「Fermat」は特上! 数学関連本を読んで手に汗をかいた経験は初めてです。 ぼくは(邦訳の方は)徹夜して読んでしまいました。
(1997年発刊)


内容を簡単に紹介します。
x2 + y2 = z2 (うまくタイプできなかったけど、後ろの数字は2乗と読んでください) 。 これは小学生でも習う有名な三平方の定理(ピタゴラスの定理)ですね。 直角三角形の三辺の長さについて習う公式です。 さてこの2乗を任意の数値nと置き換えたとします。 この場合、

「nが2より大きい自然数について、xn + yn = zn となる自然数の組x, y, zは存在しない」

はい、コレが「Fermat’s Last Theorem (フェルマーの最終定理)」です。 たったこれだけ。 E=mc2みたいにとてもシンプル。 しかし侮れません。 この定理は簡単そうに見えるのですが、歴代の数多くの名だたる数学者達がチャレンジしてもどうしても証明ができなかったのです。
(当然ですが無数の仮定の数字を代入してその結果が期待通りだったとしても、例外がないことの証明にはなりませんよね。)

17世紀のアマチュア数学者ピエール・ド・フェルマーが発見したこの定理(証明されるまでは「予想」)ですが、彼は「証明しちゃったよ」とは書いたものの、なんとその証明自体を残していなかったのです。 彼は数学を解くことを趣味としており、しばしば数学書の余白部分にその証明をメモするという習慣がありましたが、この定理に関しては「私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」… これがこの物語の始まりでした。

なんとまあミステリードラマの様なお膳立て! そして結局はフェルマーのこの余白の走り書きから、アンドリュー・ワイルズという孤高の数学者が1994年に、この証明に成功するまで実に360年もの年月を要しました。


メモポイント
● 騒ぎの元となったフェルマーのコメント。 しかし、フェルマーも本当に証明できていたのかどうか怪しいな… 証明できたとの思い込みだったのかも知れません。

It is impossible for a cube to be written as a sum of two cubes or a fourth power to be written as the sum of two fourth powers or, in general, for any number which is a power greater than the second to be written as a sum of two like powers.

I have a truly marvelous demonstration of this proposition which this margin is too narrow to contain.

数学史を絡めての数学ロマンが展開する章はドキュメンタリーTV番組「コスモス」を観ているように面白く、また詳しくは書けませんが、ワイルズが最後の証明で手こずるところ、読んでいてあまりにもドキドキして少し呼吸困難になってしまったぐらい。 そしてQ.E.D., 感動の嵐。 数学者への畏敬の念がふつふつと湧き上がってきました。

フェルマーの定理を解く重要な鍵となったのが「谷山=志村予想」という日本人数学者二人による楕円方程式を元にした研究でした。 この辺りのドラマチックな盛り上がりも外せません。 こんなところに同胞の日本人の名前を見つけるなんて思わず嬉しくなってしまいます。(モジュラー形式とかいろいろ難しい数学用語は出てきますが、そんなもん分からなくてもこの本は十分楽しめます)

これは第一級品、読まないまま死ぬのはもったいない。文頭にも書きましたが、青木薫さんの翻訳も素人にも分かりやすく素晴らしい。 「Big Bang 」、「The Code Book」も併せてぜひぜひ読んでみて!!

Fermat’s Last Theorem

Fermat’s Last Theorem

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