hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (Twitter: @hearth2016)

The Lottery (Shirley Jackson) - 「くじ」- 207冊目

ジャンル: 小説(ホラー)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

「臓器くじ」の話をご存知でしょうか。 哲学者ジョン・ハリスが示した思考実験です。

1. 公平なくじで健康な人をランダムに一人選んで殺す。
2. その人の臓器を取り出し、臓器移植を必要とする人々に配る。
3. くじに当たった人は死ぬが、代わりに多くの人が救われる。
4. さてこのような行為が倫理的に許されるだろうか。

サンデル教授のトロッコ問題にも似たこの究極の選択の話は 功利主義を人間の肉体にまで当てはめてしまうと不快感の強い結果を示すものの明らかに誤りであると指摘するのは大変困難である、というものです。 主張と反論を含め、結構ヘビーです。 (詳しく知りたい方はウィキペディアを参照ください。)

「くじ」という確率的に平等な手続きを踏めば、どんな結果が出たとしてもそれは正当であり甘んじて受けるべきであると考え、そもそもその結論の正しさについて吟味することも行われなくなる。この仮定の話を聞いて思い出したのが本作「The Lottery 」です。

本作、「後味の悪い本」の話題になった時に、たまたま娘から勧められました。 あっと言う間に読めてしまうとても短い話です。 人口300人程の小さな村。 そこで村人全員がが集まって毎年平等にくじを引く話。不条理。 この話のキモはストーリーそのものなので、詳しくは書けませんが、ごく自然に進められるこのくじの手続きが当然のように生活の一部として違和感なく溶け込んでいて、くじそのものの異常性については誰も指摘しない。得体の知れない居心地の悪さを増幅させます。 淡々とくじの結果を受け入れる、それがたとえ自分の家族の身に起こった事だったとしても… そして、何が起きるのだろうと落ち着かない読者にさし向ける最後の一頁。
(1948年発刊)


メモ
● この一節を読んだ時にはゾッとしました。 未読の方にはここだけ取り出しても分かりにくいと思いますので、ぜひ本文を読んでみてください。

Mr. Dunbar had small stones in both hands, and she said, gasping for breath.
"I can't run at all. You'll have to go ahead and I'll catch up with you."
The children had stones already. And someone gave little Davy Hutchinson few pebbles.

想像するに、怖いのはこれらの村人たちはおそらくみんな笑顔だったのだろうという事。 時に、笑顔は恐怖を増幅させる。


永井豪のマンガに「ススムちゃん、大ショック」ってのがありましたけど、 あんな感じの後味の悪さでした…

The Lottery (Illustrated) (English Edition)

The Lottery (Illustrated) (English Edition)

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