ジャンル: 小説 (推理)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆
ホームズのパスティーシュの中でもかなり良くできていてオススメです。 正典をたくさん読んだ方には、たまらないひねりも効いています。 もともとこの本の設定は、ワトスン博士の未発表の手記が発見されたとの建てつけで始まります。 ワクワクしますね。
(1974年発刊)
粗筋を簡単に。
ホームズはコカイン中毒により精神を病んでおり、世界の悪の権化で宿敵であるモリアーティ教授にずっと付きまとっていた。が、実はモリアーティはごく平凡で善良な一市民(なんと、少年時代のシャーロック・マイクロフト兄弟の数学の家庭教師だった!)であり、ホームズの妄想による思い込みで尾行されたり、脅迫の電報を送りつけられたりしてホトホト参っていた。 見かねて心配したワトスンが、兄のマイクロフトの知恵を拝借、モリアーティをオトリにして、彼がヨーロッパを悪の世界に染めるために暗躍しているとホームズに思わせて、治療を受けさせるためにホームズを遠くウィーンにまで連れ出すことに成功した。 ウィーンで待つ医者とは名医であり心理学者でもある、かのジークムント・フロイト。 精神状態ボロボロであるホームズだが、フロイト博士の治療により徐々に回復していった。そんなおり、フロイト博士の元に奇妙な患者が現れ、重大事件の発端となった。 ホームズは名探偵の目の輝きを取り戻して事件の解明に乗り出す…
どうです、 このプロットを聞いただけでも面白そうでしょう。 実際、面白いのですよ。 ホームズとワトスンの熱い友情話もあり、ホームズファンにはぜひオススメです。
それから本作は映画化もされました。これも秀逸。
ちなみに、ホームズファンには自明なことですが、タイトルの「The Seven Per-Cent Solution 」とは、ホームズを中毒にしたコカインの水溶液の濃度のことです。
正典である「Sign of Four」(55冊目)にもこの辺りの記述が出てきます。
“Which is it today,” I asked, “morphine or cocaine?”
He raised his eyes languidly from the old black-letter volume which he had opened.
“It is cocaine,” he said, “a seven-per-cent solution. Would you care to try it?”
“No, indeed,” I answered brusquely.
それと、ホームズのパスティーシュ物で僕のイチオシは、各務三郎・編「ホームズ贋作展覧会」(河出文庫)ですね。 短編集なのですが、この中の「テルト最大の偉人」が特に面白い。 なんと、ホームズの正体はシェークスピアだった!
- 作者: Nicholas Meyer
- 出版社/メーカー: Ballantine Books
- 発売日: 1985/12/12
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