hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Blue Castle (Lucy M. Montgomery) - 「青い城」- 232冊目

ジャンル: 小説 (古典)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

「バカヤロー!」っていうオムニバスの邦画が昔ありました。仕事や人間関係で閉塞感にヘキエキしてどうしようもなくなっている主人公たちがガマンにガマンを重ねた後についに爆発するというコメディ映画です。

さて、今日はそんなシチュエーションを彷彿とさせる一冊のご紹介。 読後感は極めて爽快でスカッとしたい方にぜひオススメの一冊です。

ずっと今までロクデナシと呼ばれ押さえつけられてきた本作の主人公ヴァランシー。 全てのヤツラに「バカヤロー」と叫び、家を飛び出し自らの幸せを自身で手に入れる。この爽快感はもうホントに小気味好い。 「ちょっとロマンチックなあまりハーレクインみが過ぎるのでは」と思うところもありますが、読後感は最高です。 アン・ファン・テリブル(アン・ブックスの熱烈ファンの意)を自称する自分としては、「モンゴメリなら任せとけ」と思ってたのですがこの本はノーマークでした。ほんとウカツ。 娘が勧めてくれるまでこの本の存在自体もあまり知らなかったのでした… このちゃぶ台返し後のヴァランシーのキャラクター、アンよりも好きだという人も多いでしょうね。


あらすじを簡単に。
いつも静かで引っ込み思案のヴァランシーは来年は30歳になる未婚女子。 当時の29歳はオールドミスとして 「行き遅れ」と家族・親戚一同からバカにされ、しょーもないセクハラオヤジギャグのネタにされ、心を許せる友達もいなくていつも独りぼっち。 可愛くて人気者のいとこオリーブといつも比べられ、幼い頃から影の薄い「透明人間」みたいな扱い。心の底から笑ったこともない。同居する毒親と年老いた親戚の元でずっと軽んじられてきた彼女。 このまま男性と知り合い手を握りキスすることさえなく、ただ歳を取り朽ちていくことを待つだけの人生。そんな彼女の唯一の気晴らしは、森の生活を描写した覆面作家ジョン・フォスターの作品を図書館で借り家族に隠れてベッドでコッソリ読み、彼女だけの夢の家「The Blue Castle 」に想いを馳せるだけという、つましいものだった。しかしもう29歳になる。こんな子供染みた想像は終わりにして現実に向き合わなきゃ…
そんなある日、ヴァランシーは身体の不調を感じる。詮索好きな家族親戚には秘密にして、医者に行った彼女が受け取った知らせは、あまりにも残酷な結果だった。 心臓の病で余命一年…

さあ、ここからが彼女のスゴイところ! 「私にゃ今しかない! どうせ散りゆく命だ! やりたくないことやってるヒマはねえ」ということで、今まで受けてきた「借り」を返すべく彼女は一大決心をして大胆な行動に出ます。 ラストへのグルーヴ感溢れる怒涛の展開は爽快かつ伏線の回収もお見事、絶品と言えるでしょう!
(1927年発刊)



メモポイント
(かなりのネタバレが入ります。読むと面白さが半減します。 未読の方はここでストップ!)

● ヴァランシーの切なさよ。 正直、前半部分は読むのが辛くなるほどの悲惨さです。

「本当に心の底から幸せな時がたった一時間でもあるならば女性はそれを糧にして生きていけるもの、って昔読んだ本に書いてあった。 けど私にはそんな事など一度も無かった。 もしそんな時間が死と引き換えに私に与えられるならば、もう今すぐに死んでもいいと思う」

I remember reading somewhere once that there is an hour in which a woman might be happy all her life if she could but find it. I've never found my hour--never, never. And I never will now. If I could only have had that hour I'd be willing to die.


● 「彼が何をしたの? 何を証拠に彼が犯罪者だって言えるの? 一日中、彼について回って見ていたとでも言うの?」
自分の親戚に対して、村の近くに住む風変わりで謎の青年バーニーのことをヴァランシーが弁護するこのシーンは圧巻。
「ヤツは犯罪者だ。」「人を殺したこともあるらしい」と、伝聞と憶測で人を嫌う感じがすごく現れている。ヘイトスピーチみたい。バーニーを弁護するヴァランシーのことをみんなで寄ってたかって「気が触れた」と言う。 そして、自分たちの偏見にはまったく気づかない。

"What has he done?" asked Valancy suddenly.

Uncle Wellington stared at her, forgetting that she was to be ignored.

"Done! Done! He's done everything."

"What has he done?" repeated Valancy inexorably. "What do you know that he has done? You're always running him down. And what has ever been proved against him?"

バーニーはその謎の暮らしぶりから、村人からは殺人者だ前科者だと噂されていたが、 実際の彼は知的水準も高く紳士であり、「ウォールデン」のソローのようなイメージ。


● 未婚の母となるもその赤子を亡くしたシシー。そして更に不幸なことに彼女は重い病によりもうすぐ死を迎えようとしていた。村人は未婚の母だった彼女を身持ちの悪い女だと遠ざけて誰も付き合おうとしなかった。自らの死期を知っているヴァランシーは幼馴染のシシーを看病するために一緒に暮らすことを決める。
「とても孤独だったの。」と泣きながらヴァランシーにしがみつくシシー。 そして大事なことに気づく。 今まで親戚一同から邪魔者扱いされてきたヴァランシーは、人に必要とされることの幸せを初めて実感する。

The last time Valancy had seen Cecilia Gay those faded, piteous eyes had been limpid, shadowy blue pools aglow with mirth. The contrast was so terrible that Valancy's own eyes filled with tears. She knelt down by Cissy and put her arms about her.

"Cissy dear, I've come to look after you. I'll stay with you till--till--as long as you want me."

"Oh!" Cissy put her thin arms about Valancy's neck. "Oh--will you? It's been so--lonely. I can wait on myself--but it's been so lonely. It--would just be like--heaven--to have some one here--like you. You were always--so sweet to me--long ago."

Valancy held Cissy close. She was suddenly happy. Here was some one who needed her--some one she could help. She was no longer a superfluity. Old things had passed away; everything had become new.

家を飛び出してシシーの看病をするヴァランシー。バーニーは言う。

「こんな状態でシシーの面倒をみるなんて君はなんていい人なんだ。」

「とんでもない。私はここが好きなだけ。好きでやってるだけよ。 Mt.Gay(シシーの老父)もお手伝いのお給金を払ってくれるし。 ほら、私、今まで働いてお金をもらったことないのよ。 こういうの、いいなぁと思って。」
前科者と噂されているバーニーだが、彼女は彼にはなんでも話せるような気がした。

「君がシシーにしてあげていることは、世界中のお金を集めても買えないような素晴らしいことだよ。」

"Miss Stirling, you're a brick! You're a whole cartload of bricks. To come here and look after Cissy--under the circumstances."

"There's nothing so bricky about that," said Valancy. "I'd nothing else to do. And--I like it here. I don't feel as if I'd done anything specially meritorious. Mr. Gay is paying me fair wages. I never earned any money before--and I like it." It seemed so easy to talk to Barney Snaith, someway--this terrible Barney Snaith of the lurid tales and mysterious past--as easy and natural as if talking to herself.

"All the money in the world couldn't buy what you're doing for Cissy Gay," said Barney. "It's splendid and fine of you. And if there's anything I can do to help you in any way, you have only to let me know.


● 29歳で初めてギフト(キャンディーボックス)をもらったなんて、可哀想過ぎる。
バーニーからの贈り物があまりにも嬉しすぎて勿体無くて食べられなかったヴァランシー。 彼女の心が急速にバーニーに流れ始めた。そしてずっと彼のことを考えている自分に気づくのである。
「彼が自分のことをどう思っているのか知りたい!」
「自分の事を好きになってくれなくてもいい。自分はあと僅かしか生きられないし。 でも自分は彼が好きなのはどうしようもない!」
なんと思い切りのいい。

He always brought Cissy fruit and flowers. Once he brought Valancy a box of candy--the first box of candy she had ever been given. It seemed sacrilege to eat it. She found herself thinking of him in season and out of season. She wanted to know if he ever thought about her when she wasn't before his eyes, and, if so, what.


● 死期が迫っているとの同情からヴァランシーからの突撃プロポーズを受けて結婚したバーニー。 しかし彼女と過ごす時間の中で同情が愛情に変わる。 彼の心は急速に彼女に惹きつけられるようになった。
「僕が森を抜けて帰るとき、遠くから家に灯りが灯っているのが見えるんだ。 そして君がそこに居てくれることを実感するんだ。 こんな風に思うこと、今まで無かった。僕は本当に嬉しいんだ」
ロマンチックが過ぎるだろ。

"Ah, now you have it," said Barney. "That's all the freedom we can hope for--the freedom to choose our prison. But, Moonlight,"--he stopped at the door of the Blue Castle and looked about him--at the glorious lake, the great, shadowy woods, the bonfires, the twinkling lights--" Moonlight, I'm glad to be home again. When I came down through the woods and saw my home lights--mine--gleaming out under the old pines--something I'd never seen before--oh, girl, I was glad--glad!"


同情から始まった結婚だが、バーニーに変化が。

"You do laugh beautifully," Barney told her once. "It makes me want to laugh just to hear you laugh. There's a trick about your laugh--as if there were so much more fun back of it that you wouldn't let out. Did you laugh like that before you came to Mistawis, Moonlight?"

"I never laughed at all--really. I used to giggle foolishly when I felt I was expected to. But now--the laugh just comes."

It struck Valancy more than once that Barney himself laughed a great deal oftener than he used to and that his laugh had changed. It had become wholesome.


● しかし、突然に二人に訪れる別れ。 なんと、ヴァランシーの余命一年とは誤診だった。 結果としてバーニーを騙して自分と結婚させてしまったことになった。 もう彼の前には姿を見せられない。「騙すつもりはなかった」と置き手紙を書き、彼のいない間に立ち去ったヴァランシー。 勤めて事務的に事実のみを書いた。 そうしないと涙が溢れて止まりそうになかったから。

"Dear Barney:--

I went to Dr. Trent this morning and found out he had sent me the wrong letter by mistake. There never was anything serious the matter with my heart and I am quite well now.
I did not mean to trick you. Please believe that. I could not bear it if you did not believe that. I am very sorry for the mistake. But surely you can get a divorce if I leave you. Is desertion a ground for divorce in Canada? Of course if there is anything I can do to help or hasten it I will do it gladly, if your lawyer will let me know.
I thank you for all your kindness to me. I shall never forget it. Think as kindly of me as you can, because I did not mean to trap you. Good-bye.

Yours gratefully, Valancy."

It was very cold and stiff, she knew. But to try to say anything else would be dangerous--like tearing away a dam.

さあ、二人のその後はどうなるのか…
まあモンゴメリーなんで、だいたい想像つくでしょうけどね。

ところどころで登場するヴァランシーの夢の「青い城」が実現したバーニーと暮らす森の生活の描写がカナダの自然と相まってとても美しい文章だと感じました。


ところで。
業田良家さんの「自虐の詩」というマンガをご存知ですか。幸江と言う名の周りから見ると不幸としか思えないが本人は愛に溢れて幸せというある女性の生い立ちを綴った四コマのギャグ漫画なんですけど、軽い内容かなと手にしてみると読んでいくうちにズンズンと引き込まれていく。 それが段々感動に変わっていくという類稀なる感動ギャグ漫画なのです。 そう、この主人公の不幸を物ともせず、健気に人生を謳歌していこうという姿がこのヴァランシーに重なるのです。 未読の方、良かったら手にしてみて下さい。

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