hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

War Criminal (Saburo Shiroyama) - 「落日燃ゆ」- 165冊目

ジャンル: ノンフィクション
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

先日、NHKスペシャル東京裁判」が再放送されたそうですね。 ぼくはうっかりして見逃してしまいました。 残念。 この裁判の話を聞くと、いつもある人物の名を思い出します。 広田弘毅

第二次世界大戦後、東京裁判で死罪判決を受けた7人のA級戦犯のうちただ一人の文官であり外交官出身の元総理、広田弘毅。  戦争推進派に囲まれた中、最後までたった一人で戦争回避に尽力したものの、時代の大きな流れに翻弄されて開戦に巻き込まれた。 敗戦後、アメリカを中心とする連合国軍が設けた東京裁判では他の武官と同様に戦犯と見なされ、その告発に一切の弁解もせず絞首台の露と散った…(1974年発刊)

ずいぶん昔ですが、広田弘毅の「自ら計らわぬ」生き方に感動したあまり何度も読み返し、ぜひ英文でも読んでみたいと思い中古本をアマゾンで入手しました。 どういうわけか2回もポチってしまったようで、中古ペーパーバックが2冊届いたのもいい思い出です。 日本語で読んだあとで英文でもう一度読もうとした本はそれほど多くはありませんが、これはそんな数少ない本のうちのひとつ。(他はファインマンさん、赤毛のアン星の王子さま、アルジャーノン、火車ぐらいです。)


本作のメインテーマは他人をかばうことに主眼を置いた自己犠牲の潔さに尽きるでしょう。 この「黙して語らず」の精神は現在の尺度から考えると、必ずしも正しいものではなく決して褒められるものでもありません。 自分が我慢すればそれでいいという訳ではないでしょう。 それは分かってます。 ええ、分かっていますとも… それでもねえ、一切の未練がましい言い訳をしなかったこの一人の不器用な男の生き方に鮮烈な感動の念を覚えるのを禁じ得ないのです。

As you can see, I'm in good health. I have no message; just tell them, please, that I went to my death quietly and in good health.

夫婦の愛情も本作の大きなテーマのひとつです。 広田は最愛の妻に先立たれる(正確には獄中の夫の気がかりを減らすために妻は自害する)のですが、この辺りも切なさを誘います。 妻亡き後も広田が獄中から自宅に送る手紙の宛先はすべて妻「静子殿」と書かれていました。


著者の城山三郎自身も愛妻家でした。 晩年はその愛する妻に先立たれています。  亡き妻が傍らにいない喪失感を綴った名著、「そうか、もう君はいないのか」。 こちらもぜひぜひおススメします。

War Criminal: The Life and Death of Hirota Koki

War Criminal: The Life and Death of Hirota Koki

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