ジャンル: 小説(推理)
英語難易度: ★★★
オススメ度: ★★★☆☆
ダシール・ハメット「マルタの鷹」の原書(1930年発表) 。 一言で言えば、探偵サム・スペード、美女、謎の男たちによるお宝(鷹の彫像)争奪戦。
やや後発のチャンドラーによるマーロウと並んで、本作でハードボイルドというジャンルを確立しました。 ドライで簡潔な英文で、ぼくとしてはチャンドラーより好みです。 主人公の心情を直接には現さず、映画の様に見た目の描写のみで表現しているところが良いですね。ただ、会話のシーンはスラングが入っているからか少し分かりにくかったかな。
メモポイント
● 日本の小説とは違って、バカルディとかロンジン、ジョニーウォーカーとかブランド名がそのまま書かれています。戦前のこんな昔から有名なブランドだったんだ。
● サムと美女(脳内イメージは峰不二子)の食事のシーン、珈琲とフランスパン、レバーソーセージ、コンビーフで作った歯ごたえのある即席サンド、ジブリ映画みたいでうまそー。
“The tablecloth’s in there,” he said, pointing the bread knife at a cupboard that was one breakfast nook partition. She set the table while he spread liverwurst on, or put cold corned beef between, the small ovals of bread he had sliced. Then he poured the coffee, added brandy to it from a squat bottle, and they sat at the table.
● サムの秘書エフィがすごく可愛い。 ボーイッシュなルックスで少し気が強いが心根が優しく、サムを信頼している。理想の秘書。
● 「(殺された相棒について語る) 確かにあいつはクソ野郎だ。 奴に初めて会った時、すぐにこいつは最低な奴だと分かった。しかし俺たちの稼業は相棒を殺られてそのまま放って置くわけにはいかない。 おれが奴のことを好きか嫌いかなんて関係ないんだ。」
“Miles,” Spade said hoarsely, “was a son of a bitch. I found that out the first week we were in business together and I meant to kick him out as soon as the year was up. You didn’t do me a damned bit of harm by killing him.” “Then what?” Spade pulled his hand out of hers. He no longer either smiled or grimaced. His wet yellow face was set hard and deeply lined. His eyes burned madly. He said: “Listen. This isn’t a damned bit of good. You’ll never understand me, but I’ll try once more and then we’ll give it up. Listen. When a man’s partner is killed he’s supposed to do something about it. It doesn’t make any difference what you thought of him.
後半は徐々に会話文がメインになりスラングが増えたせいか意味を取るのに苦労しましたが、それにしても サム・スペードの極限状態での駆け引きを見て、そのメンタルの強さに驚きました。 こんなにハートが強い人になれればなぁ。 ラストも単純なハッピーエンドでなくて面白いです。元祖ハードボイルドはダーティーヒーローの悪漢小説だったのか!
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