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Competitive Strategy (Michael E.Porter) - 「競争の戦略」- 226冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

「ビジネス戦略論を語るには、コレを読んでなきゃ話にならん。 まずは読め! 話はそれからだ」


そんな「脅し」に近い紹介文を読んだので、Michael Porter 教授の定番中の定番である本作「Competitive Strategy 」を手にしてみました。
ふーむ、長かった… 構成がツリー状の入れ子構造になってて読み終えるのになかなか難儀しましたが、あとで読み返したいポイントだけを見つけるには適しているようです。 英文自体もそれほど難しくなく一つ一つの解説には得心がいきます。


以前に W. Chan Kimの「Blue Ocean Strategy 」を読んだのですが、そちらよりも基本書であるこちらを先に読むべきでした。 利益率の高いビジネスをターゲットにして資源を集中させるなど、こちらの本には基本的な競合戦略の概念が網羅的に解説されているので、まず大きな絵姿で理解するにはこの本の方が役に立ったように思います。本を読む順番って結構大事なんですねー。

本書の眼目は「いかに利益を上げるか」コレに尽きる。そして全ての知恵はそこに絞られる。 勝ち負けの醍醐味がここにある。
(1980年発刊)



メモポイント
● 本作の解説本でまず出てくるのが「Five Competitive Forces (5つの競争要因)」
これらの要因を分析する事で対象となる業界の立ち位置を計測、より収益性の高いところに身を置くことが成功の秘訣と説いています。 競合とは現行のライバル会社たちだけではありません。

The five competitive forces—
entry (新規参入業者の脅威),
threat of substitution (代替品の脅威),
bargaining power of buyers (買い手の交渉力),
bargaining power of suppliers (供給企業の交渉力),
and rivalry among current competitors (現行の競争企業間との敵対関係) —
reflect the fact that competition in an industry goes well beyond the established players. Customers, suppliers, substitutes, and potential entrants are all “competitors” to firms in the industry and may be more or less prominent depending on the particular circumstances. Competition in this broader sense might be termed extended rivalry.

Entry (新規参入業者の脅威):
これを防ぐには後発企業に対して、参入障壁対策を講じられているかが大事になる。
規模の経済によるコストダウン。巨額投資の必要性。知名度の浸透。法的規制。切り替えコスト(Switching cost)の発生。 流通チャネルを抑える。
これらの対策が無ければ、ディスカウントによる血みどろのレッドオーシャンでのバトルが始まってしまう。

Threat of substitution (代替品の脅威):
全く同じ商品でなくても同様の機能を持つ費用対効果がより優れた代替品が出てくればそれは脅威になるということ。 そのような兆しを感じたら直ぐに対処できるように目を光らせておかねばならない。スマホ台頭後のデジカメの末路を見よ。

Bargaining power of buyers (買い手の交渉力):
普通に考えても買い側の交渉力は強くなるもの。 これに拍車をかけるのが次のような要因である。
商品に特徴がなく差別化されていない。供給過多。 切り替えコストが安い。買い手の方がノウハウ・情報を持っている、etc.
裏を返せば、これらを防ぐ手立てを講じれば有効な交渉カードとなる。

Bargaining power of suppliers (供給企業の交渉力):
供給側の商品が買い手にとって唯一無二だったり代替が効かなければ交渉力は強くなる。 いわゆる「客を選ぶ 」スタンス。 寡占状態で需要が旺盛なパターン。 ひと頃のインテルのCPUのようなイメージ。

Rivalry among current competitors (現行の競争企業間との敵対関係):
これが一般的に競合他社と認識されるカテゴリー。
ライバル社の数。業界の成長性。撤退障壁etc.



● もう一つ、本書で有名なポイントが「Three generic strategic (3つの基本戦略)」です。 5つの競合要因の分析に基づいて、さてどのように仕掛けるのか。 3つのアプローチを説いています。

In coping with the five competitive forces, there are three potentially successful generic strategic approaches to outperforming other firms in an industry:
1. overall cost leadership
2. differentiation
3. focus

Overall cost leadership (コストのリーダーシップ):
規模の経済を追求し生産効率化による低コストの訴求により、ディスカウント販売によるシェア増加または利益率を高めて、競合に打ち勝つ戦略。会社の体力が求められる。

Differentiation (差別化):
高品質やブランドイメージの定着など、商品・サービスの優れた特質を伸ばして差別化を図る戦略。他社との価格競争に巻き込まれず値崩れしないので収益性は高いが、高コストになりやすく客層も限定されることもあり売上自体はあまり伸びない。

Focus (集中) :
企業のリソースをある特定のビジネスに集中させて競争を優位にする戦略。特定する対象は、顧客だったり、商品・サービス、地域だったり。 うまくいけば、リソース集中による低コスト化、差別化が期待できるが、特化した対象が不調になると影響度は深刻になる。

Blue Ocean戦略には、上記の Differentiation とFocusの概念の多くが取り入れられていると感じました。



● 「どのようなビジネスでも最も安定した資金運用である国債以上の投資回収でなければ、やらない方がいい。」

Competition in an industry continually works to drive down the rate of return on invested capital toward the competitive floor rate of return, or the return that would be earned by the economist’s “perfectly competitive” industry. This competitive floor, or “free market” return, is approximated by the yield on long-term government securities adjusted upward by the risk of capital loss. Investors will not tolerate returns below this rate in the long run because of their alternative of investing in other industries, and firms habitually earning less than this return will eventually go out of business.


● 「最も悪手な新規事業とは、参入は簡単だが撤退が困難なビジネスである」

The case of low entry and exit barriers is merely unexciting, but the worst case is one in which entry barriers are low and exit barriers are high.

貴重な企業の資源を浪費させる可能性が高い。 長い間会社員やっていると、このようなケースをよく目にします。Vertical integration (垂直統合) の功罪であるとか。 ひとつの企業としか取引しなければ切り替える(Switch)ことが現実として不可能になってしまうので、独立性を担保する手立てが必要です。


● 英語の経営書を読むときは、集中していないとニコ動の流れる文字群を眺めているように字面だけを追って頭に入ってこないことがよくある。 そんなときは自分がいま勤めている会社のビジネスに置き換えて、(当てはめて)読むこと。具体的なイメージが湧いてきて理解が進む。 ウチはこのパターンだな、とか。



それにしても、あらゆる成功と失敗のパターンを指し示している本書。 いろんな業界の知見を得るのに役立ちます。知ってるのと知らないのでは大違い。
ただ残念なのは、たしかにそうだな、とも思えるWhy soのお話はふんだんにあるのですが、だからどうする、So what? の提示については、あまり無いような気がします。 「この企業が成功した理由は良く分かった。 で、この後そのようになるにはどうすればいいの? 」という一番知りたい問いにはクリアに答えられていないように感じます。 なんだかコトワザをたくさん読んでいるみたい。「急いては事を仕損じる」と聞いて、なるほど、と思うけど、「善は急げ」、と聞けばその通りとも思う。 「一石二鳥」なのか「二兎を追う者は一兎をも得ず」なのか。 ビジネス書はどうしても、勝てば官軍、後知恵バイアスとなる運命なのでしょうか。 まあそんな完璧な指南書があるのであれば、その著者がビジネスを始めれば大成功間違いなし、ということになる。 コレは有り得ないですね。

Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors (English Edition)

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