ジャンル: 小説 (推理)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆
イアン・フレミングによる「007」シリーズの記念すべき第1作。 あの映画の原作を読んでいるとは思えないほどのかなり硬派なイメージ。 この第1作目に登場した時点では既に「殺しのライセンス」である「ダブルオー」を与えられているジェームズ・ボンドなのですが、のちの彼のイメージとして付いて回るアクション・スパイとしてのきらびやかなイメージはあまり感じません。 一人間としての等身大の姿が描かれています。 本作、ある意味ビルドゥングスロマンのような気もしますが。(1953年発刊)
メモ
● ジェームズ・ボンドの名前が始めて出てくる一節。 彼がバカラが得意だという事でカジノに送り込んで、カードゲームで敵を破産させるようにとの指令。 トリックも何もなく、ギャンブルの真っ向勝負で勝て!、だなんて、MI6さん、そりゃ無茶ぶり過ぎるでしょ。
... anyway he’s got the right man and wants to try him out on the job.’
‘Who is it?’ asked Number Two.
‘One of the Double Os—I guess 007. He’s tough and M thinks there may be trouble with those gunmen of Le Chiffre’s. He must be pretty good with the cards or he wouldn’t have sat in the Casino in Monte Carlo for two months before the war watching that Roumanian team work their stuff with the invisible ink and the dark glasses.
● ボンドと言えばドライマティーニ。
A dry martini,’ he said. ‘One. In a deep champagne goblet.’
‘Oui, monsieur.’
‘Just a moment. Three measures of Gordon’s, one of vodka, half a measure of Kina Lillet. Shake it very well until it’s ice-cold, then add a large thin slice of lemon peel. Got it?’
‘Certainly, monsieur.’ The barman seemed pleased with the idea.
‘Gosh, that’s certainly a drink,’ said Leiter.
Bond laughed.
● 食べ物の描写が美味そう。日本のハードボイルド作家、池波正太郎も影響を受けてるんでしょうか。
She finished her story just as the waiters arrived with the caviar, a mound of hot toast, and small dishes containing finely chopped onion and grated hard-boiled egg, the white in one dish and the yolk in another.
● 「ダブルオーと一緒に仕事ができるなんて素敵! オフィスのみんなは私に嫉妬しているの。 だってヒーローですもの。」
「ダブルオーなんて大したことない。誰だって取れるさ。 人殺しになる覚悟があればね。自慢できるようなもんじゃない。」
‘The office was very jealous although they didn’t know what the job was. All they knew was that I was to work with a Double O. Of course you’re our heroes. I was enchanted.’ Bond frowned. ‘It’s not difficult to get a Double O number if you’re prepared to kill people,’ he said. ‘That’s all the meaning it has. It’s nothing to be particularly proud of.
スクリーンの中のショーン・コネリーやロジャー・ムーアから感じる無敵感あふれる人物ではなく、もっと心のゆらぎを持つ人間らしいキャラクターだと感じました。(映画化の際、イアン・フレミングはショーン・コネリーを見て「イメージが違う」と映画スタッフにクレームしていたそうです。 後にはこの感想は変わり、ショーン・コネリーを高く評価するようになったそうです。)
拷問されて身も心もズタボロになって引退を考えたり… 見方を変えれば、みんながよく知っている後のジェームズ・ボンドを形作る経験の一つとなったエピソードが本作なのかもしれません。
辛い経験を経てプロフェッショナルに生まれ変わったボンドの心持ちが本作のラスト、彼のセリフの一行に表されているようです。
(ネタバレになるので引用しませんが)
「殺しのライセンス」道に落ちてないかなー。
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