hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Blue Castle (Lucy M. Montgomery) - 「青い城」- 232冊目

ジャンル: 小説 (古典)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

「バカヤロー!」っていうオムニバスの邦画が昔ありました。仕事や人間関係で閉塞感にヘキエキしてどうしようもなくなっている主人公たちがガマンにガマンを重ねた後についに爆発するというコメディ映画です。

さて、今日はそんなシチュエーションを彷彿とさせる一冊のご紹介。 読後感は極めて爽快でスカッとしたい方にぜひオススメの一冊です。

ずっと今までロクデナシと呼ばれ押さえつけられてきた本作の主人公ヴァランシー。 全てのヤツラに「バカヤロー」と叫び、家を飛び出し自らの幸せを自身で手に入れる。この爽快感はもうホントに小気味好い。 「ちょっとロマンチックなあまりハーレクインみが過ぎるのでは」と思うところもありますが、読後感は最高です。 アン・ファン・テリブル(アン・ブックスの熱烈ファンの意)を自称する自分としては、「モンゴメリなら任せとけ」と思ってたのですがこの本はノーマークでした。ほんとウカツ。 娘が勧めてくれるまでこの本の存在自体もあまり知らなかったのでした… このちゃぶ台返し後のヴァランシーのキャラクター、アンよりも好きだという人も多いでしょうね。


あらすじを簡単に。
いつも静かで引っ込み思案のヴァランシーは来年は30歳になる未婚女子。 当時の29歳はオールドミスとして 「行き遅れ」と家族・親戚一同からバカにされ、しょーもないセクハラオヤジギャグのネタにされ、心を許せる友達もいなくていつも独りぼっち。 可愛くて人気者のいとこオリーブといつも比べられ、幼い頃から影の薄い「透明人間」みたいな扱い。心の底から笑ったこともない。同居する毒親と年老いた親戚の元でずっと軽んじられてきた彼女。 このまま男性と知り合い手を握りキスすることさえなく、ただ歳を取り朽ちていくことを待つだけの人生。そんな彼女の唯一の気晴らしは、森の生活を描写した覆面作家ジョン・フォスターの作品を図書館で借り家族に隠れてベッドでコッソリ読み、彼女だけの夢の家「The Blue Castle 」に想いを馳せるだけという、つましいものだった。しかしもう29歳になる。こんな子供染みた想像は終わりにして現実に向き合わなきゃ…
そんなある日、ヴァランシーは身体の不調を感じる。詮索好きな家族親戚には秘密にして、医者に行った彼女が受け取った知らせは、あまりにも残酷な結果だった。 心臓の病で余命一年…

さあ、ここからが彼女のスゴイところ! 「私にゃ今しかない! どうせ散りゆく命だ! やりたくないことやってるヒマはねえ」ということで、今まで受けてきた「借り」を返すべく彼女は一大決心をして大胆な行動に出ます。 ラストへのグルーヴ感溢れる怒涛の展開は爽快かつ伏線の回収もお見事、絶品と言えるでしょう!
(1927年発刊)



メモポイント
(かなりのネタバレが入ります。読むと面白さが半減します。 未読の方はここでストップ!)

● ヴァランシーの切なさよ。 正直、前半部分は読むのが辛くなるほどの悲惨さです。

「本当に心の底から幸せな時がたった一時間でもあるならば女性はそれを糧にして生きていけるもの、って昔読んだ本に書いてあった。 けど私にはそんな事など一度も無かった。 もしそんな時間が死と引き換えに私に与えられるならば、もう今すぐに死んでもいいと思う」

I remember reading somewhere once that there is an hour in which a woman might be happy all her life if she could but find it. I've never found my hour--never, never. And I never will now. If I could only have had that hour I'd be willing to die.


● 「彼が何をしたの? 何を証拠に彼が犯罪者だって言えるの? 一日中、彼について回って見ていたとでも言うの?」
自分の親戚に対して、村の近くに住む風変わりで謎の青年バーニーのことをヴァランシーが弁護するこのシーンは圧巻。
「ヤツは犯罪者だ。」「人を殺したこともあるらしい」と、伝聞と憶測で人を嫌う感じがすごく現れている。ヘイトスピーチみたい。バーニーを弁護するヴァランシーのことをみんなで寄ってたかって「気が触れた」と言う。 そして、自分たちの偏見にはまったく気づかない。

"What has he done?" asked Valancy suddenly.

Uncle Wellington stared at her, forgetting that she was to be ignored.

"Done! Done! He's done everything."

"What has he done?" repeated Valancy inexorably. "What do you know that he has done? You're always running him down. And what has ever been proved against him?"

バーニーはその謎の暮らしぶりから、村人からは殺人者だ前科者だと噂されていたが、 実際の彼は知的水準も高く紳士であり、「ウォールデン」のソローのようなイメージ。


● 未婚の母となるもその赤子を亡くしたシシー。そして更に不幸なことに彼女は重い病によりもうすぐ死を迎えようとしていた。村人は未婚の母だった彼女を身持ちの悪い女だと遠ざけて誰も付き合おうとしなかった。自らの死期を知っているヴァランシーは幼馴染のシシーを看病するために一緒に暮らすことを決める。
「とても孤独だったの。」と泣きながらヴァランシーにしがみつくシシー。 そして大事なことに気づく。 今まで親戚一同から邪魔者扱いされてきたヴァランシーは、人に必要とされることの幸せを初めて実感する。

The last time Valancy had seen Cecilia Gay those faded, piteous eyes had been limpid, shadowy blue pools aglow with mirth. The contrast was so terrible that Valancy's own eyes filled with tears. She knelt down by Cissy and put her arms about her.

"Cissy dear, I've come to look after you. I'll stay with you till--till--as long as you want me."

"Oh!" Cissy put her thin arms about Valancy's neck. "Oh--will you? It's been so--lonely. I can wait on myself--but it's been so lonely. It--would just be like--heaven--to have some one here--like you. You were always--so sweet to me--long ago."

Valancy held Cissy close. She was suddenly happy. Here was some one who needed her--some one she could help. She was no longer a superfluity. Old things had passed away; everything had become new.

家を飛び出してシシーの看病をするヴァランシー。バーニーは言う。

「こんな状態でシシーの面倒をみるなんて君はなんていい人なんだ。」

「とんでもない。私はここが好きなだけ。好きでやってるだけよ。 Mt.Gay(シシーの老父)もお手伝いのお給金を払ってくれるし。 ほら、私、今まで働いてお金をもらったことないのよ。 こういうの、いいなぁと思って。」
前科者と噂されているバーニーだが、彼女は彼にはなんでも話せるような気がした。

「君がシシーにしてあげていることは、世界中のお金を集めても買えないような素晴らしいことだよ。」

"Miss Stirling, you're a brick! You're a whole cartload of bricks. To come here and look after Cissy--under the circumstances."

"There's nothing so bricky about that," said Valancy. "I'd nothing else to do. And--I like it here. I don't feel as if I'd done anything specially meritorious. Mr. Gay is paying me fair wages. I never earned any money before--and I like it." It seemed so easy to talk to Barney Snaith, someway--this terrible Barney Snaith of the lurid tales and mysterious past--as easy and natural as if talking to herself.

"All the money in the world couldn't buy what you're doing for Cissy Gay," said Barney. "It's splendid and fine of you. And if there's anything I can do to help you in any way, you have only to let me know.


● 29歳で初めてギフト(キャンディーボックス)をもらったなんて、可哀想過ぎる。
バーニーからの贈り物があまりにも嬉しすぎて勿体無くて食べられなかったヴァランシー。 彼女の心が急速にバーニーに流れ始めた。そしてずっと彼のことを考えている自分に気づくのである。
「彼が自分のことをどう思っているのか知りたい!」
「自分の事を好きになってくれなくてもいい。自分はあと僅かしか生きられないし。 でも自分は彼が好きなのはどうしようもない!」
なんと思い切りのいい。

He always brought Cissy fruit and flowers. Once he brought Valancy a box of candy--the first box of candy she had ever been given. It seemed sacrilege to eat it. She found herself thinking of him in season and out of season. She wanted to know if he ever thought about her when she wasn't before his eyes, and, if so, what.


● 死期が迫っているとの同情からヴァランシーからの突撃プロポーズを受けて結婚したバーニー。 しかし彼女と過ごす時間の中で同情が愛情に変わる。 彼の心は急速に彼女に惹きつけられるようになった。
「僕が森を抜けて帰るとき、遠くから家に灯りが灯っているのが見えるんだ。 そして君がそこに居てくれることを実感するんだ。 こんな風に思うこと、今まで無かった。僕は本当に嬉しいんだ」
ロマンチックが過ぎるだろ。

"Ah, now you have it," said Barney. "That's all the freedom we can hope for--the freedom to choose our prison. But, Moonlight,"--he stopped at the door of the Blue Castle and looked about him--at the glorious lake, the great, shadowy woods, the bonfires, the twinkling lights--" Moonlight, I'm glad to be home again. When I came down through the woods and saw my home lights--mine--gleaming out under the old pines--something I'd never seen before--oh, girl, I was glad--glad!"


同情から始まった結婚だが、バーニーに変化が。

"You do laugh beautifully," Barney told her once. "It makes me want to laugh just to hear you laugh. There's a trick about your laugh--as if there were so much more fun back of it that you wouldn't let out. Did you laugh like that before you came to Mistawis, Moonlight?"

"I never laughed at all--really. I used to giggle foolishly when I felt I was expected to. But now--the laugh just comes."

It struck Valancy more than once that Barney himself laughed a great deal oftener than he used to and that his laugh had changed. It had become wholesome.


● しかし、突然に二人に訪れる別れ。 なんと、ヴァランシーの余命一年とは誤診だった。 結果としてバーニーを騙して自分と結婚させてしまったことになった。 もう彼の前には姿を見せられない。「騙すつもりはなかった」と置き手紙を書き、彼のいない間に立ち去ったヴァランシー。 勤めて事務的に事実のみを書いた。 そうしないと涙が溢れて止まりそうになかったから。

"Dear Barney:--

I went to Dr. Trent this morning and found out he had sent me the wrong letter by mistake. There never was anything serious the matter with my heart and I am quite well now.
I did not mean to trick you. Please believe that. I could not bear it if you did not believe that. I am very sorry for the mistake. But surely you can get a divorce if I leave you. Is desertion a ground for divorce in Canada? Of course if there is anything I can do to help or hasten it I will do it gladly, if your lawyer will let me know.
I thank you for all your kindness to me. I shall never forget it. Think as kindly of me as you can, because I did not mean to trap you. Good-bye.

Yours gratefully, Valancy."

It was very cold and stiff, she knew. But to try to say anything else would be dangerous--like tearing away a dam.

さあ、二人のその後はどうなるのか…
まあモンゴメリーなんで、だいたい想像つくでしょうけどね。

ところどころで登場するヴァランシーの夢の「青い城」が実現したバーニーと暮らす森の生活の描写がカナダの自然と相まってとても美しい文章だと感じました。


ところで。
業田良家さんの「自虐の詩」というマンガをご存知ですか。幸江と言う名の周りから見ると不幸としか思えないが本人は愛に溢れて幸せというある女性の生い立ちを綴った四コマのギャグ漫画なんですけど、軽い内容かなと手にしてみると読んでいくうちにズンズンと引き込まれていく。 それが段々感動に変わっていくという類稀なる感動ギャグ漫画なのです。 そう、この主人公の不幸を物ともせず、健気に人生を謳歌していこうという姿がこのヴァランシーに重なるのです。 未読の方、良かったら手にしてみて下さい。

The Blue Castle (English Edition)

The Blue Castle (English Edition)

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Factfulness (Hans Rosling) - 「ファクトフルネス」- 231冊目

ジャンル: ノンフィクション
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

「人は自分が見たいように見る」
かなりの意訳らしいですが、カエサルの言葉です。 本来は客観的であるはずの事実に対して、人はそれぞれが自分の考え方に合うように解釈(曲解)して判断するという意味だったと思います。 自身の思考フィルターを通過して入ってきた事実はその時点でいくらかの客観性が失われているということなのでしょう。

新聞、テレビ、ツイッターを読むと凄惨な事件が毎日のように取り上げられています。私たちの世界はこれからどうなっていくんだろうと気が滅入ることが多くあります。しかし、これも(決してそのようなネガティブな状況を望んでいるわけではないが) 、読者の注意を引く「読みたい」記事がクローズアップされているからなのでしょう。

「いい話はニュースにならない」これはホントにそう思います。 マスコミ・ジャーナリズムの運命とでもいいましょうか。「少しずつ、かつゆっくりではあるものの、私たちを取り巻く世界・生活は良くなってる」なんてのは記事にはなりません。 そのようなメディアは売れるはずもなくビジネスとして成り立ちません。

私たちがネガティブなニュースに気を取られる理由は生物の進化過程において獲得された本能によるものだそうです。 つまり生命の危険を避けるために、ネガティブかつ即時的なリスク情報を過大視させ注意を引くようにセットされているという事であると、今日の紹介本 Hans Rosling「Factfulness」で主張されています。 厳然として存在する危機について目を背ける事が良くない事であると同時に、危険を必要以上に過大視することも同様に正しくないと著者は指摘しています。

思い込みと事実はいかに異なるかについて、具体的な事実をデータで示しながら説明されています。 データの裏付け確認もせず世間で声高に叫ばれている主張に雰囲気で乗っかって判断することの何と危険なことか。 なるほどと首肯することが多い。 でもこの手の話を書いた人は寡聞にして知りません。コロンブスの卵のようですね。 気付いて書ける、これがすごい事なのでしょう。英文も平易で読みやすいですよ。
(2018年発刊)


メモポイント
● この一言に尽きる。
「我々を取り巻く世界は少しずつではあるが、確実に良くなってきている。これは事実に基づいた世界観だ」

Step-by-step, year-by-year, the world is improving. Not on every single measure every single year, but as a rule. Though the world faces huge challenges, we have made tremendous progress. This is the fact-based worldview.


● これぞこの本の主題。主張の根拠をファクト・エビデンスで示せ。

I liked her definition because it was so clear. We could check it against the data. If you want to convince someone they are suffering from a misconception, it’s very useful to be able to test their opinion against the data.


● レベル4とは先進国での生活標準のこと。 欧米諸国は自国の文化のみ優れており他国は未開で劣っていると考えがち。もっと謙虚な姿勢を持つ事で、勘違いしないようにと戒めている。

Be cautious about generalizing from Level 4 experiences to the rest of the world. Especially if it leads you to the conclusion that other people are idiots.
(中略)
Assume people are not idiots. When something looks strange, be curious and humble, and think, In what way is this a smart solution?

この視点はすごく大事。ツイッターでも何でも高みから諭すように声高に意見を述べる人はこの誤謬に陥っているかもしれない。 自分だけがよく分かっていて周りは愚鈍だと考える。 でも大抵の場合は自分だけが優れているなどあり得ない。単なる勘違い。


● 善意から来る誤解は最も始末に困る。 これは出口治明氏も著書の中で述べていた。 相手が悪人ならば自身の行動を理解しているので交渉による取り引きもできる。 しかし善意による思い込みは、分かっていないが故に別の視点に気づかせるのは容易ではない。

When seemingly impregnable logic is combined with good intentions, it becomes nearly impossible to spot the generalization error.


● 分かりやすい主張、単純な主張、極論は耳に残り受け入れやすい。しかし、必ずしも真実を表しているとは限らない。「分かりやすい説明」がもてはやされる風潮があるが、複雑な説明が不可避な場合も間違いなく存在する。 現実はもっと複雑なのだ。

We find simple ideas very attractive.


● ある社会に環境の向上が見られる場合、その貢献をトップやリーダーなどの一個人に帰するケースが多いが、実際には個人としての影響力などたかが知れている。実際にものを言うのは、Institution (制度・仕組み)とtechnology (技術の進歩)だ。

It must make one ask if the leaders are that important. And the answer, probably, is no. It’s the people, the many, who build a society.
(中略)
The fight against the lethal Ebola virus was won not by an individual heroic leader, or even by one heroic organization like Médecins Sans Frontières or UNICEF. It was won prosaically and undramatically by government staff and local health workers, who created public health campaigns that changed ancient funeral practices in a matter of days; risked their lives to treat dying patients; and did the cumbersome, dangerous, and delicate work of finding and isolating all the people who had been in contact with them. Brave and patient servants of a functioning society, rarely ever mentioned—but the true saviors of the world.

アフリカの僻地でエボラ熱の脅威から世界を救ったのは一人のヒーローではなく、平凡なしかし勇気ある現場の公務員たちの目立たない努力とそれを可能にした仕組みづくりだった。事の成果を属人的に考えるのは分かりやすいが、大抵の場合は一人の力でできるものではない。


● また同様に、一人のトップが悪者となって世界・環境を悪化させると言うこともあり得ない。 悪者を作って責めることは簡単で分かりやすいがそれでは事態の改善には繋がらない。

• Look for causes, not villains. When something goes wrong don’t look for an individual or a group to blame. Accept that bad things can happen without anyone intending them to. Instead spend your energy on understanding the multiple interacting causes, or system, that created the situation.

• Look for systems, not heroes. When someone claims to have caused something good, ask whether the outcome might have happened anyway, even if that individual had done nothing. Give the system some credit.


なお、著者はこの本の出版を待たずにガンで亡くなられたそうです。 本の最後に共著者でもある息子夫婦のOlaとAnnaが、エピローグとしてその最後のやり取りを描いています。 短文ですが父親に対する愛情溢れる文章です。


ところで。
上でも書きましたが、出口治明氏の著書にも同様の主張が記されています。 氏は「数字・ファクト・ロジック」で判断することの重要性を説いています。 また、個人の力量には大差なく(人間はみんなちょぼちょぼやと)、仕組み作りが大事だとも書かれています。 興味ある人はぜひ読んでみてください。 (出口治明・著「人生の教養が身につく名言集」)
この書名はちょっとアレで、「なんちゃって」ビジネス書っぽいですが… 読書を通じて氏が得た洞察力に納得することしきりでしたよ。

Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About the World--and Why Things Are Better Than You Think (English Edition)

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First Steps in SAP Controlling (CO) (Ashish Sampat) - 230冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆

今回はERP(基幹系の統合情報システム)導入の勉強の為に、業務上必要になって読んだ本です。 備忘記録の為にここに書いているだけなもんで、特に感想という程のものはありません。

ただ、この手の本は無味乾燥なマニュアル仕様が多くて取っつきにくいのが普通ですから、少しでも楽しんで読めるような読み物仕立てのものがないかと物色していました。

そこでKindle の試し読みサンプルで見つけたのが本作。 一見、読み物仕立て風。「 おっ、エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu Goldratt)の「ザ・ゴール (The Goal)」(188冊目に感想)みたいに主人公が出てきて専門的な内容を噛み砕いて説明するヤツか。これはありがたい、と早速、買い求めました。


ビジネス洋書にはよくあるパターンの各章の最初に格言みたいなのもついてました。
(こんなの↓)

“さて株主の皆様、今回の我々の半期決算の損益計算書には、ほんの些細なタイプミスがあったことをご報告いたします。 それは表最下段に記載された「Profit」の文字は「Loss」の誤りでした。” (元CFO)


ふん。なるほど。 そんなに面白いジョークでもないけど、こんな軽いタッチなら読みやすいかも… ふんふん、主人公はアレックスって名前なんだ。これも「ザ・ゴール」とおんなじだな。(この著者はザ・ゴールのファンなのかもしれない)

アレックスの新しいボス、ボブが職場の仲間を紹介する。「私はエリン。Finance とAccounting を担当しているの。よろしくね、アレックス。」 ボブは「SAPのControlling のことならなんでも彼女に聞いてくれ」

アメリカのシットコムのような画像が浮かんでくる。 おお、いいぞいいぞ。この2人はこの後、プロジェクトを進める方針を巡って熱いバトルを展開するのかもしれない。それとも真摯に取り組むけど空回りして業務に悩むアレックス、そして彼の無精髭の残る疲れた表情を心配するエレン、やがて彼女の心が同情から愛情に変わっていくのにたいして時間はかからなかった、とか。 浮気を疑うアレックスの奥さんとの小競り合いもあるかもな。 よしよし。


“「さて、このSAPの社内業務マニュアルを読むとするか。」アレックスはマニュアルを読み始めた…”


はい、ここからずっと画面と機械的なシステムの説明が最後まで続きます。なんだこれ、おかしいな…

それでも最後まで読みました。
結果: アレックスはSAPに関する新しい業務を学びました。おしまい。

恋愛や駆け引きや、はたまた裏切りなど何もない。
「 猿でも分かる」とうたったお勉強系マンガテキストを開いてみたら、最初の5ページだけがイラスト付きマンガで後は業務マニュアルがただ付けられていただけだった、という感じでした。

まあ、これは著者のせいではなく、こっちが勝手にそんな展開を勘違いしただけで、これはこれで有用な本なんですけどね。
それにしてもこんなことなら最初からもっと初心者向けの参考書然とした本を探せばよかったなあ、という感想でした。

どっとはらい

First Steps in SAP Controlling (CO) (English Edition)

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Rebecca (Daphne Du Maurier) - 「レベッカ」- 229冊目

ジャンル: 小説 (ミステリー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

一言で言うと、少女の恋愛妄想暴走小説。とにかく果てしなく妄想する新妻。
そんな感じです。
ヒッチコックの映画でも有名なお話です。

あらすじを少し。 主人公である「私」(年の頃なら二十歳少し超えの妙齢の女性。彼女の具体的な名前はこの小説内では一切出てきません。)は、モンテカルロの高級ホテルでバカンスを過ごす金持ちで少し粗野なアメリカ人奥様の小間使い(「コンパニオン」との肩書きですが)として雇われる。 ボンビーガールで他に選択肢のない「私」は嫌々ながらもお金のために奥様の雑用をこなす毎日だった。 そんなある日、いかにも裕福な年配の紳士マキシムとこの高級ホテルで出会う。みるみるうちに打ち解けた二人は一緒にドライブに行くまでの親密な仲に。 そして奥様がホテルを立つことになったその日、涙ながらにマキシムに別れを告げに行った「私」。 ところがなんと彼から逆にプロポーズされることに。 彼はイギリスの名門貴族マキシム・デ・ウインター。 マンダレーにある彼の邸宅とは、「私」が幼い頃に持っていた絵葉書の写真にあった憧れの城だった事が分かる。ボンビーガールから名門貴族のデ・ウインター夫人となった彼女の妄想が炸裂する。

新妻となった「私」は舞い上がりつつ、新居の邸宅に来たものの、すぐに歓迎されていない雰囲気に気づく。一年前にボートの遭難で不慮の事故死をとげた前妻のレベッカは絶世の美女でファッションセンスも素晴らしく非の打ち所がない女性だった。 レベッカの幼い頃からの付き人で、邸宅の家事の一切を取り仕切る痩せた鶏ガラ幽霊のような家政婦のデンバース夫人は、後妻で人見知りの「私」に冷たく当たる。慇懃無礼な召使いたちもどこか小馬鹿にしているよう。 旦那もあまり真面目に「私」の悩みに取り合ってくれない。 邸宅のあちこちには亡きレベッカがまだ暮らしているかの様に整えられている。
「ああ、やっぱり旦那様はまだレベッカのことを愛しているんだ。彼女には勝てるわけがない。デ・ウインター夫人は未だにレベッカなんだ」とノイローゼ気味になり、ついには自死までも考え始める「私」。
そしてウインター家を取り巻くこの不穏な人間関係には実は驚きの秘密が隠されていた…
(1938年発刊)



メモポイント
● 上にも書きましたが、この話の見どころは何と言っても、「私」の豊かな脳内妄想の表現でしょう。 結構、このシーンは気に入ってます。
恋心を抱いたマキシムに涙ながらに別れを告げる前の妄想シーン。いかに彼が「私」のことをいとも簡単に忘れるだろうと、自虐的にはこれでもかこれでもかと書き連ねます。

He would go back to Manderley, of course, in a few weeks; I felt certain of that. There would be a great pile of letters waiting for him in the hall, and mine amongst them, scribbled on the boat. A forced letter, trying to amuse, describing my fellow passengers. It would lie about inside his blotter, and he would answer it weeks later, one Sunday morning in a hurry, before lunch, having come across it when he paid some bills. And then no more. Nothing until the final degradation of the Christmas card. Manderley itself perhaps, against a frosted background. The message printed, saying ‘A happy Christmas and a prosperous New Year from Maximilian de Winter.’ Gold lettering. But to be kind he would have run his pen through the printed name and written in ink underneath ‘from Maxim’, as a sort of sop, and if there was space, a message, ‘I hope you are enjoying New York.’ A lick of the envelope, a stamp, and tossed in a pile of a hundred others.


● そして実際にホテルの部屋に赴いて別れの挨拶を告げた時にマキシムは…

‘Come in,’ he shouted, and I opened the door, repenting already, my nerve failing me; for perhaps he had only just woken up, having been late last night, and would be still in bed, tousled in the head and irritable.
He was shaving by the open window, a camel-hair jacket over his pyjamas, and I in my flannel suit and heavy shoes felt clumsy and over dressed. I was merely foolish, when I had felt myself dramatic.
‘What do you want?’ he said. ‘Is something the matter?’
I’ve come to say good-bye,’ I said, ‘we’re going this morning.’
He stared at me, then put his razor down on the washstand.
‘Shut the door,’ he said. I closed it behind me, and stood there, rather self-conscious, my hands hanging by my side.
‘What on earth are you talking about?’ he asked. ‘It’s true, we’re leaving today. We were going by the later train, and now she wants to catch the earlier one, and I was afraid I shouldn’t see you again. I felt I must see you before I left, to thank you.’
They tumbled out, the idiotic words, just as I had imagined them. I was stiff and awkward; in a moment I should say he had been ripping.

(中略)

‘So Mrs Van Hopper has had enough of Monte Carlo,’ he said, ‘and now she wants to go home. So do I. She to New York and I to Manderley. Which would you prefer? You can take your choice.’
‘Don’t make a joke about it; it’s unfair,’ I said; ‘and I think I had better see about those tickets, and say good-bye now.’
‘If you think I’m one of the people who try to be funny at breakfast you’re wrong,’ he said. ‘I’m invariably ill-tempered in the early morning. I repeat to you, the choice is open to you. Either you go to America with Mrs Van Hopper or you come home to Manderley with me.’
‘Do you mean you want a secretary or something?’
‘No, I’m asking you to marry me, you little fool.’


● マキシムのプロポーズを受けて、デ・ウインター夫人への道が開かれた「私」。 その瞬間から、幼いやんちゃな息子たちに囲まれて豪邸で暮らす幸せな家庭の妄想が始まります。

We should grow old here together, we should sit like this to our tea as old people, Maxim and I, with other dogs, the successors of these, and the library would wear the same ancient musty smell that it did now. It would know a period of glorious shabbiness and wear when the boys were young–our boys–for I saw them sprawling on the sofa with muddy boots, bringing with them always a litter of rods, and cricket bats, great clasp-knives, bows-and-arrows.
On the table there, polished now and plain, an ugly case would stand containing butterflies and moths, and another one with birds’ eggs, wrapped in cotton wool. ‘Not all this junk in here,’ I would say, ‘take them to the schoolroom, darlings,’ and they would run off, shouting, calling to one another, but the little one staying behind, pottering on his own, quieter than the others.


● 今度はある事件がキッカケで、マキシムから嫌われていると思い込む「私」。 妄想がネガティブに振れたときもすごい。
マンダリーに嫁いで来て一生懸命に上流階級に合わせようとする「私」だが、空回りする描写は痛々しい。 期待に胸を膨らませてきたが、実態は自分には務まりそうもないと分かってきてからの焦りや絶望感。

I had not come down for Maxim’s sake, for Beatrice’s, for the sake of Manderley. I had come down because I did not want the people at the ball to think I had quarrelled with Maxim. I didn’t want them to go home and say, ‘Of course you know they don’t get on. I hear he’s not at all happy.’ I had come for my own sake, my own poor personal pride. As I sipped my cold tea I thought with a tired bitter feeling of despair that I would be content to live in one corner of Manderley and Maxim in the other so long as the outside world should never know. If he had no more tenderness for me, never kissed me again, did not speak to me except on matters of necessity, I believed I could bear it if I were certain that nobody knew of this but our two selves. If we could bribe servants not to tell, play our part before relations, before Beatrice, and then when we were alone sit apart in our separate rooms, leading our separate lives.


ネタバレになるので未読の方はここでストップ。


上に書いたマキシム激怒の事件とは、マンダレーの屋敷で行われた結婚お披露目パーティーでの一幕。 亡きレベッカに心酔していた家政婦のデンバース夫人に騙されて、在りし日のレベッカと同じドレスを着てサプライズパーティーに挑んだ「私」(もちろん、「私」はこのドレスがレベッカがかつて選んだものとは知りません)。
喜んでくれると期待に胸膨らませていたところから、マキシムの逆鱗に触れて一気に奈落の底に。パーティーを台無しにできないので健気に振る舞うも悲しみに涙が止まらない。このシーンは不憫すぎて本が手放せない。 がぜん面白くなってきます。


前妻レベッカの隠された秘密姿がこの事件の後にだんだんと解き明かされていきます。この辺り、かなり面白いので未読の方は実際に手にして読んでみてはいかがでしょう。 そうですね、イメージでは映画「イヴの総て」に重なる感じです。

Rebecca (Virago Modern Classics Book 300) (English Edition)

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Into Thin Air (Jon Krakauer) - 「空へ - エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」- 228冊目

ジャンル: ノンフィクション
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

ふうー。 なかなか骨太のノンフィクション。 1996年5月に起きたエベレスト登山隊での大量の遭難事故(シーズンで総勢12人が亡くなる)の一部始終について、その参加者の一人であるジャーナリストのJon Krakauerが本作にて克明に描写しました。 猛吹雪という自然の脅威がこの遭難を引き起こした主要因ではあるものの、その自然現象自体はこの世界最高峰にとっては特に珍しいことではありません。それ以上にこの惨劇を招いたのは参加者やガイドリーダーの積み重なる判断ミスによるところが多かったと本書では記されています。

山に取り憑かれたこれらの人々の話を読んでいると、不謹慎かも知れませんがエベレストへの情熱は一種の呪いのように感じられました。 自分は登山をしないので分からないだけかも知れません。 ここまでの犠牲を払って、なぜまだ山に登ろうとするのかが分からない。 これは薬物中毒のようなものでしょうか。一度その魅力に取り憑かれた者は、死ぬか不随になるまでもう止められないものなのでしょうか。

英文が簡潔でとても読みやすかったのですが、単語は少々難しめ。 内容は深いです。
なにせ登場人物が多い。 総勢30人ぐらいでしょうか。 しかもさっきまで名前で呼んでいたのに急に苗字で呼び変えたりするので誰が誰だか分からなくなってきます。登場人物一覧をメモに書き留めながら読み進めました。
(1997年発刊)



メモポイント

● 29,000フィート(約8,800m)のエベレスト。 25,000(約7,600m)フィートより高地はデス・ゾーンと呼ばれており、地上とは全くの別世界である。
だいたい5000mを少し超えるあたりにベースキャンプを構える。 ここから頂上を目指すのだが、このベースキャンプでさえ地上の半分の酸素濃度だそう。 頂上ではこれが1/3になる。

At Base Camp there was approximately half as much oxygen as at sea level; at the summit only a third as much.


● エベレスト登山はかつての過酷な冒険的挑戦から、1990年代頃からは商業ベースのレジャーへと変遷を遂げていた。登山ガイド業者やシェルパにルート工作や荷物の運搬を委託して自らは身一つで参加するなど、専門知識や経験の少ないアマチュア登山家が増加することとなり、これが本作に描かれた大量遭難の引き金となる。

During the trek to Base Camp, a young Sherpa named Pemba would often roll up her sleeping bag and pack her rucksack for her. When she reached the foot of Everest with the rest of Fischer’s group in early April, her pile of luggage included stacks of press clippings about herself to hand out to the other denizens of Base Camp. Within a few days Sherpa runners began to arrive on a regular basis with packages for Pittman, shipped to Base Camp via DHL Worldwide Express; they included the latest issues of Vogue, Vanity Fair, People, Allure. The Sherpas were fascinated by the lingerie ads and thought the perfume scent-strips were a hoot.

女性ファッション雑誌をベースキャンプまでDHLでデリバリーさせるセレブ登山家。 あまりにも山を舐めたその態度はアホとしか言いようがない。

“If client cannot climb Everest without big help from guide,” Boukreev told me, “this client should not be on Everest. Otherwise there can be big problems up high.”

この遭難事故の関連者のうち、キーマンの一人である登山ガイドのロシア人Boukreev。 彼は上述したようなアマチュア登山家を軽蔑していた。
「そもそもガイドの全面的なサポート無しではエベレストに登れないようなクライアントはエベレストに来るべきではない。 そのような連中は必ず山上でトラブルの原因となり、全体の足手まといになる」


● エベレストに魅せられた者はその呪縛から逃れられない。

Everest seems to have poisoned many lives. Relationships have foundered. The wife of one of the victims has been hospitalized for depression. When I last spoke to a certain teammate, his life had been thrown into turmoil. He reported that the strain of coping with the expedition’s aftereffects was threatening to wreck his marriage. He couldn’t concentrate at work, he said, and he had received taunts and insults from strangers.

● 後日談としてPostscriptが書かれた最終章は、著者のKrakauer やガイドのBoukreev等、この痛ましい遭難から辛うじて生き残った者達による真実認定についての批判合戦が記されている。 読んでいてかなりシンドい。この詳細に渡る自己証明と反駁の主張の展開には既視感があった。それは本多勝一の「貧困なる精神」シリーズに似ていると感じる。


同様のドキュメンタリーの力作として、Robert Kursonの「Shadow Divers」(38冊目に感想)もオススメです。 こちらは高山ではなく海中での極限状態の人間を描いています。気圧変化の影響、酸素欠乏の恐怖、そしてパニックに陥った際の人間の行動等、克明に描写されており手に汗握る作品です。

Into Thin Air: A Personal Account of the Everest Disaster (English Edition)

Into Thin Air: A Personal Account of the Everest Disaster (English Edition)

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Pride and Prejudice (Jane Austen) - 「高慢と偏見」- 227冊目

ジャンル: 小説 (古典)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

格調高き英文学というよりも少女マンガの世界。「ブリジット・ジョーンズの日記」(187冊目に感想)を読んでからは、いつか本家を読まなきゃと思っていました。 そして読んで分かった、これは間違いなくページターナー! 面白い! 何か大きな出来事が起きるわけではありません。それぞれの地方貴族の家族内での悲喜劇が描かれるだけなのですが、ページを繰る手が(キンドルをスライドする人差し指が)止まりません。

1800年代初期のイギリスの田舎社会。当時のイギリス法では父親の死後には長男のみに不動産の相続権があり、子供が女性しかいない場合にはその権利は親戚の男性に移るというムチャクチャなものでした。(相続で不動産が分割されるのを避けるための方策だったようですが) そうなると子供が女子だけだと不動産以外の財産として僅かな持参金しかもらえず将来の生活もままならない。必然的に未婚女性の全ての関心と努力の行先が婚活に向かうという時代でした。

そして本作の主人公である中堅レベルの地方貴族ベネット家は男の子無しの五人姉妹。 彼女たちが繰り広げる婚活合戦。 そして自らに正直かつ賢明で打算的な態度を嫌っていた鼻っ柱の強い次女リジーが、堅物・プライド高、でも実はシャイで誠実だった最良の伴侶ダーシーと結ばれるという、なんとハーレクイン的なロマンチック話。 そして僕はこのような話が大好きです。 「赤毛のアン」や「図書館戦争」で既視感あるシーンもあり、多くのキュンキュン系ラブストーリーの原型になっているのでしょう。
(1813年発刊)


メモポイント (ネタバレ注意!)

● ダーシー氏、登場シーン。
ちょっとシャイでぶっきらぼうな男のほうがロマンスの主人公には映えるパターン。 「赤毛のアン」のギルバート・ブライスや、「続・あしながおじさん」のサンディみたいな。 いや、「耳すま」の天沢聖司か。

Mr. Darcy soon drew the attention of the room by his fine, tall person, handsome features, noble mien, and the report which was in general circulation within five minutes after his entrance, of his having ten thousand a year. The gentlemen pronounced him to be a fine figure of a man, the ladies declared he was much handsomer than Mr. Bingley, and he was looked at with great admiration for about half the evening, till his manners gave a disgust which turned the tide of his popularity; for he was discovered to be proud; to be above his company, and above being pleased; and not all his large estate in Derbyshire could then save him from having a most forbidding, disagreeable countenance, and being unworthy to be compared with his friend.


● そしてリジー(エリザベス)も登場。 荒削りだけど、キラリと光るいい感性を持ってる。「プリティーウーマン」な感じ。これで看板役者が揃います。

Mr. Darcy walked off; and Elizabeth remained with no very cordial feelings toward him. She told the story, however, with great spirit among her friends; for she had a lively, playful disposition, which delighted in anything ridiculous.


● 親友ビングレーの妹キャロラインは、ダーシーに首ったけ。 彼の気を引きたくて、彼が手にした本の2巻目(もちろん読んだこともない)を手にして彼と話すキッカケを作ろうとする。 主人公のリジーと比べて彼女は気位が高く高慢な女の子として描かれているけど、恋する気持ちは責められない。

Miss Bingley’s attention was quite as much engaged in watching Mr. Darcy’s progress through his book, as in reading her own; and she was perpetually either making some inquiry, or looking at his page. She could not win him, however, to any conversation; he merely answered her question, and read on. At length, quite exhausted by the attempt to be amused with her own book, which she had only chosen because it was the second volume of his, she gave a great yawn and said, “How pleasant it is to spend an evening in this way! I declare after all there is no enjoyment like reading! How much sooner one tires of anything than of a book! When I have a house of my own, I shall be miserable if I have not an excellent library.” No one made any reply.


● リジーへプロポーズするコリンズ牧師。 これには笑った。 男の身勝手さと鈍感さを煮詰めてキャラクターにした感じ。まったく相手の反応や感情を気にしていない。

「私があなたと結婚する理由はですね、まずは私自身がきっと幸せになれると思うからです。聖職者は妻帯すべきと思っています。それから私の後見人である敬愛するレディー・キャサリンも妻帯を勧めるからですよ。そしてあなたの父親が亡くなった後に財産を承継する予定の私が、あなたと結婚すればあなたの家族は助かるはずです。だけどそんな事、少しも恩義に感じなくてもいいですからね。」
こんなセリフをまったく悪気もなく心底正しい事として本心から言える男。 しかし、ここまで空気読めない鈍感な男って実際にいるかねー? (「オマエモナー」との声が聞こえますが…)
キャラクターの描き方が秀逸。特にダメダメな人についてがピカイチ。母親のベネット夫人、末娘の自分勝手なリディア、求婚者の小物感溢れるコリンズ等。 こんな典型的な下品で小物感溢れる人々のキャラクターに、怖いもの見たさな感覚で惹き込まれる。 時折出てくるロマンチックな描写と合わせて、本作をページターナーとさせる所以だと思う。

“My reasons for marrying are, first, that I think it a right thing for every clergyman in easy circumstances (like myself) to set the example of matrimony in his parish; secondly, that I am convinced that it will add very greatly to my happiness; and thirdly—which perhaps I ought to have mentioned earlier, that it is the particular advice and recommendation of the very noble lady whom I have the honour of calling patroness.
(中略)
I am very sensible of the honour of your proposals, but it is impossible for me to do otherwise than to decline them.” “I am not now to learn,” replied Mr. Collins, with a formal wave of the hand, “that it is usual with young ladies to reject the addresses of the man whom they secretly mean to accept, when he first applies for their favour; and that sometimes the refusal is repeated a second, or even a third time. I am therefore by no means discouraged by what you have just said, and shall hope to lead you to the altar ere long.”


● リジーの年長の友人シャルロット。 それほど美人ではないが聡明で分別のある彼女が伴侶として射止めたのは、なんとリジーがプロポーズを断ったコリンズ牧師だった。 軽蔑の対象である男に嫁いで行く彼女に対してショックを受けるリジー。 しかし歳を取って嫁ぎ先の見つからないシャルロットにとって他の選択肢は無かった…。 幸せを掴もうとする彼女なりの想いを、やがてリジーも理解するようになる。

“I see what you are feeling,” replied Charlotte. “You must be surprised, very much surprised—so lately as Mr. Collins was wishing to marry you. But when you have had time to think it over, I hope you will be satisfied with what I have done. I am not romantic, you know; I never was. I ask only a comfortable home; and considering Mr. Collins’s character, connection, and situation in life, I am convinced that my chance of happiness with him is as fair as most people can boast on entering the marriage state.”


● 「リジーの父親ベネット氏に取って不幸だったことは、まったく尊敬のできない女性をただ若くて美人だったという理由だけで妻にしてしまったことだった。 もうまったく愛情は感じられない。」
ベネット夫人、確かに下品なキャラクターだけど、ここまで旦那に言われるのはちょっと可哀想。 夫婦不和の原因がどちらか一方だけにあるとは思えません。

Her father, captivated by youth and beauty, and that appearance of good humour which youth and beauty generally give, had married a woman whose weak understanding and illiberal mind had very early in their marriage put an end to all real affection for her. Respect, esteem, and confidence had vanished for ever; and all his views of domestic happiness were overthrown.


● 自分に愛を告げてくれた人、ダーシーは尊敬に値する誠実で素晴らしい人だったことがやっとわかる。 今更ながら自分の心のありかに気づくリジー。「彼のことをもっと知りたい」 しかし時すでに遅し。 誤解により彼の事を高慢で嫌味な男と思い込み、プロポーズをにべもなく拒絶したしまった彼女、今となっては望むべくもない。

She was humbled, she was grieved; she repented, though she hardly knew of what. She became jealous of his esteem, when she could no longer hope to be benefited by it. She wanted to hear of him, when there seemed the least chance of gaining intelligence. She was convinced that she could have been happy with him, when it was no longer likely they should meet.
What a triumph for him, as she often thought, could he know that the proposals which she had proudly spurned only four months ago, would now have been most gladly and gratefully received!
(中略)
“A man who has once been refused! How could I ever be foolish enough to expect a renewal of his love? Is there one among the sex, who would not protest against such a weakness as a second proposal to the same woman? There is no indignity so abhorrent to their feelings!”


● 本編中、もっともロマンチックな場面。「アンの愛情」(173冊目に感想)でのアンとギルバートのラストシーンはこれがモチーフかも。 沈黙こそ雄弁な返事だった。

“You must not blame my aunt. Lydia’s thoughtlessness first betrayed to me that you had been concerned in the matter; and, of course, I could not rest till I knew the particulars. Let me thank you again and again, in the name of all my family, for that generous compassion which induced you to take so much trouble, and bear so many mortifications, for the sake of discovering them.”
“If you will thank me,” he replied, “let it be for yourself alone. That the wish of giving happiness to you might add force to the other inducements which led me on, I shall not attempt to deny. But your family owe me nothing. Much as I respect them, I believe I thought only of you.”
Elizabeth was too much embarrassed to say a word. After a short pause, her companion added, “You are too generous to trifle with me. If your feelings are still what they were last April, tell me so at once. My affections and wishes are unchanged, but one word from you will silence me on this subject for ever.”


この小説に出てくるキャラクターを眺めていると、人間の本質は数百年経ってもあまり変わらないということを感じます。若い娘たちの「脳内メーカー」がラブのみの描写など、現代に置き換えてもまったく違和感ありません。 「枕草子」もそうですが、人物が面白く描けている作品は(かなり誇張されてますが)、古いものでも楽しめるものなんですね。

あと、更にネタバレになりますが、どうしても解せないことがあります… 物語の終盤、色男で金の亡者のウィッカムという男と、彼にメロメロのリジーの末妹のリディアが駆け落ちするんですけど、このウィッカムは結婚するために高額の持参金を持たせろ、とベネット家に要求してきます。 結局は金を工面して二人を結婚させてメデタシメデタシとなります。 けど、なんで? そんな男が親戚になるなんて、とても厄介な話じゃないですか。 いくら娘たちをみんな嫁がせることに躍起になっていたとはいえ、あまりにも無茶過ぎる判断だなぁと思いました。 当時のイギリスの貴族社会では当然のことなんでしょうか?
教えて、エライ人!

Pride and Prejudice (AmazonClassics Edition) (English Edition)

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Competitive Strategy (Michael E.Porter) - 「競争の戦略」- 226冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

「ビジネス戦略論を語るには、コレを読んでなきゃ話にならん。 まずは読め! 話はそれからだ」


そんな「脅し」に近い紹介文を読んだので、Michael Porter 教授の定番中の定番である本作「Competitive Strategy 」を手にしてみました。
ふーむ、長かった… 構成がツリー状の入れ子構造になってて読み終えるのになかなか難儀しましたが、あとで読み返したいポイントだけを見つけるには適しているようです。 英文自体もそれほど難しくなく一つ一つの解説には得心がいきます。


以前に W. Chan Kimの「Blue Ocean Strategy 」を読んだのですが、そちらよりも基本書であるこちらを先に読むべきでした。 利益率の高いビジネスをターゲットにして資源を集中させるなど、こちらの本には基本的な競合戦略の概念が網羅的に解説されているので、まず大きな絵姿で理解するにはこの本の方が役に立ったように思います。本を読む順番って結構大事なんですねー。

本書の眼目は「いかに利益を上げるか」コレに尽きる。そして全ての知恵はそこに絞られる。 勝ち負けの醍醐味がここにある。
(1980年発刊)



メモポイント
● 本作の解説本でまず出てくるのが「Five Competitive Forces (5つの競争要因)」
これらの要因を分析する事で対象となる業界の立ち位置を計測、より収益性の高いところに身を置くことが成功の秘訣と説いています。 競合とは現行のライバル会社たちだけではありません。

The five competitive forces—
entry (新規参入業者の脅威),
threat of substitution (代替品の脅威),
bargaining power of buyers (買い手の交渉力),
bargaining power of suppliers (供給企業の交渉力),
and rivalry among current competitors (現行の競争企業間との敵対関係) —
reflect the fact that competition in an industry goes well beyond the established players. Customers, suppliers, substitutes, and potential entrants are all “competitors” to firms in the industry and may be more or less prominent depending on the particular circumstances. Competition in this broader sense might be termed extended rivalry.

Entry (新規参入業者の脅威):
これを防ぐには後発企業に対して、参入障壁対策を講じられているかが大事になる。
規模の経済によるコストダウン。巨額投資の必要性。知名度の浸透。法的規制。切り替えコスト(Switching cost)の発生。 流通チャネルを抑える。
これらの対策が無ければ、ディスカウントによる血みどろのレッドオーシャンでのバトルが始まってしまう。

Threat of substitution (代替品の脅威):
全く同じ商品でなくても同様の機能を持つ費用対効果がより優れた代替品が出てくればそれは脅威になるということ。 そのような兆しを感じたら直ぐに対処できるように目を光らせておかねばならない。スマホ台頭後のデジカメの末路を見よ。

Bargaining power of buyers (買い手の交渉力):
普通に考えても買い側の交渉力は強くなるもの。 これに拍車をかけるのが次のような要因である。
商品に特徴がなく差別化されていない。供給過多。 切り替えコストが安い。買い手の方がノウハウ・情報を持っている、etc.
裏を返せば、これらを防ぐ手立てを講じれば有効な交渉カードとなる。

Bargaining power of suppliers (供給企業の交渉力):
供給側の商品が買い手にとって唯一無二だったり代替が効かなければ交渉力は強くなる。 いわゆる「客を選ぶ 」スタンス。 寡占状態で需要が旺盛なパターン。 ひと頃のインテルのCPUのようなイメージ。

Rivalry among current competitors (現行の競争企業間との敵対関係):
これが一般的に競合他社と認識されるカテゴリー。
ライバル社の数。業界の成長性。撤退障壁etc.



● もう一つ、本書で有名なポイントが「Three generic strategic (3つの基本戦略)」です。 5つの競合要因の分析に基づいて、さてどのように仕掛けるのか。 3つのアプローチを説いています。

In coping with the five competitive forces, there are three potentially successful generic strategic approaches to outperforming other firms in an industry:
1. overall cost leadership
2. differentiation
3. focus

Overall cost leadership (コストのリーダーシップ):
規模の経済を追求し生産効率化による低コストの訴求により、ディスカウント販売によるシェア増加または利益率を高めて、競合に打ち勝つ戦略。会社の体力が求められる。

Differentiation (差別化):
高品質やブランドイメージの定着など、商品・サービスの優れた特質を伸ばして差別化を図る戦略。他社との価格競争に巻き込まれず値崩れしないので収益性は高いが、高コストになりやすく客層も限定されることもあり売上自体はあまり伸びない。

Focus (集中) :
企業のリソースをある特定のビジネスに集中させて競争を優位にする戦略。特定する対象は、顧客だったり、商品・サービス、地域だったり。 うまくいけば、リソース集中による低コスト化、差別化が期待できるが、特化した対象が不調になると影響度は深刻になる。

Blue Ocean戦略には、上記の Differentiation とFocusの概念の多くが取り入れられていると感じました。



● 「どのようなビジネスでも最も安定した資金運用である国債以上の投資回収でなければ、やらない方がいい。」

Competition in an industry continually works to drive down the rate of return on invested capital toward the competitive floor rate of return, or the return that would be earned by the economist’s “perfectly competitive” industry. This competitive floor, or “free market” return, is approximated by the yield on long-term government securities adjusted upward by the risk of capital loss. Investors will not tolerate returns below this rate in the long run because of their alternative of investing in other industries, and firms habitually earning less than this return will eventually go out of business.


● 「最も悪手な新規事業とは、参入は簡単だが撤退が困難なビジネスである」

The case of low entry and exit barriers is merely unexciting, but the worst case is one in which entry barriers are low and exit barriers are high.

貴重な企業の資源を浪費させる可能性が高い。 長い間会社員やっていると、このようなケースをよく目にします。Vertical integration (垂直統合) の功罪であるとか。 ひとつの企業としか取引しなければ切り替える(Switch)ことが現実として不可能になってしまうので、独立性を担保する手立てが必要です。


● 英語の経営書を読むときは、集中していないとニコ動の流れる文字群を眺めているように字面だけを追って頭に入ってこないことがよくある。 そんなときは自分がいま勤めている会社のビジネスに置き換えて、(当てはめて)読むこと。具体的なイメージが湧いてきて理解が進む。 ウチはこのパターンだな、とか。



それにしても、あらゆる成功と失敗のパターンを指し示している本書。 いろんな業界の知見を得るのに役立ちます。知ってるのと知らないのでは大違い。
ただ残念なのは、たしかにそうだな、とも思えるWhy soのお話はふんだんにあるのですが、だからどうする、So what? の提示については、あまり無いような気がします。 「この企業が成功した理由は良く分かった。 で、この後そのようになるにはどうすればいいの? 」という一番知りたい問いにはクリアに答えられていないように感じます。 なんだかコトワザをたくさん読んでいるみたい。「急いては事を仕損じる」と聞いて、なるほど、と思うけど、「善は急げ」、と聞けばその通りとも思う。 「一石二鳥」なのか「二兎を追う者は一兎をも得ず」なのか。 ビジネス書はどうしても、勝てば官軍、後知恵バイアスとなる運命なのでしょうか。 まあそんな完璧な指南書があるのであれば、その著者がビジネスを始めれば大成功間違いなし、ということになる。 コレは有り得ないですね。

Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors (English Edition)

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