hearthのお気楽洋書ブログ

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Do Androids Dream of Electric Sheep? (Philip K. Dick) - 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 - 131冊目

ジャンル: 小説(SF)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

「電気羊」はSF界の金字塔。 文体は思いのほか平易で読みやすく、ストーリーもそれほど難解ではありません。 ヒトの感情をコントロールする機械が出てくるなんて、星新一ショートショートに出てきそうなお膳立てです。 映画「ブレードランナー」の原作にもなりました。

舞台は第三次世界大戦後の廃墟感ただよう近未来のサンフランシスコ(それでも1992年との設定ですが)。 人間社会に紛れ込んだ逃亡アンドロイド達を見つけてリタイア(殺す)させ懸賞金を稼ぐのが、警官兼アンドロイドハンターのリック・デッカードの仕事。 誰が人間で誰がアンドロイドなのか。 中盤からのアンドロイド達との攻防戦の辺りから、グッと面白くなりページが進みます。(1968年発刊)


メモポイント (一部ネタバレ注意)

● この近未来社会では自然界が壊滅状態なため、生きた動物を所有することがステイタス。 まがい物の「電気羊」ではなく本物の動物を飼いたいとリックは考える。所有欲とはそれそのものが必要ということではなく、所有できたという事実を周りに知らしめたいという点にあるのがよく分かる。 リックがペットショップで新しく飼いたい動物を物色しながら交わすセールスマンとの会話は、まさに高級車を買おうとする顧客のカーディーラーでのシーンのよう。

‘Sir, if you have a down payment of three thou, I can make you owner of something a lot better than a pair of rabbits. What about a goat?’ ‘I haven’t thought much about goats,’ Rick said. ‘May I ask if this represents a new price bracket for you?’ ‘Well, I don’t usually carry around three thou,’ Rick conceded. ‘I thought as much, sir, when you mentioned rabbits. The thing about rabbits, sir, is that everybody has one. I’d like to see you step up to the goat-class where I feel you belong. Frankly you look more like a goat man to me.’


● ターゲットとなるアンドロイドを、ウソ発見器によって見つけ出す。 人間であれば共感したり赤面したりするような質問を投げかけて、その生理反応を機械で調べるというものだ。 しかし最新型人工知能であるネクサスを搭載したアンドロイドは、殆ど人間と同等レベルで感情の揺れさえも持つ。 また一方、人間の方でも気分を外部刺激で人工的にコントロールできる装置を使っている。 両者を区分する一番大事な「感情の揺れ」というこの点においてもその境界線は曖昧だ。 登場するアンドロイドは、よくあるロボットのイメージではなく骨髄検査を行わないと人間との違いがわからないレベル。 それは機械というよりもむしろ人造人間であり、感覚的には殆ど人間だ。リックにとって、人間とアンドロイドの違いがどんどん曖昧になり、やがてある女性型アンドロイドとの間に恋愛感情まで芽生えてくる。

‘If you weren’t an android,’ Rick interrupted, ‘if I could legally marry you, I would.’
Rachael said, ‘Or we could live in sin, except that I’m not alive.’
‘Legally you’re not. But really you are. Biologically. You’re not made out of transistorized circuits like a false animal; you’re an organic entity.’ And in two years, he thought, you’ll wear out and die. Because we never solved the problem of cell replacement, as you pointed out. So I guess it doesn’t matter anyhow.
This is my end, he said to himself. As a bounty hunter. After the Batys there won’t be any more. Not after this, tonight.
‘You look so sad,’ Rachael said. Putting his hand out he touched her cheek.
‘You’re not going to be able to hunt androids any longer,’ she said calmly. ‘So don’t look sad. Please.’


著者はアンドロイドと人間という関係性を通じて、アメリカ社会の移民たちの苦悩(例えば白人とエスニックとの葛藤)を表現しているように感じました。 自分たちの主観で「異質」と思われるものを排除しようとする本能。 そこには、「敵」と見なしている彼らも自分たちと同じように喜怒哀楽の感情を持った存在なのではではないか、との想像力が欠けていると主張しているようです。 トランプさんが超大国のリーダーシップを取るこの時代に、オーウェル1984」(82冊目にて紹介)と並んで多くの人に訴えかける作品ではないでしょうか。

ちなみに、アンドロイドスマホの機種で「ネクサス」ってありますよね。 開発者は、きっと「電気羊」のファンなのでしょう。

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