ジャンル: 小説(モダンクラシック)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆
スティーブン・キングに「グリーンマイル」というホラー小説があります。(感想は65冊目) 映画も有名です。 コーフィーという大男が主人公なんですが、キングのこの小説は本作「Of Mice and Men」をモチーフにしているのでしょうかね。 設定がとても似ているように思えます。
子供のように純真、だけど少しオツムの弱い大男のレニー。 そして彼の兄貴分であり面倒を見ている機転の利いた小男のジョージ。 アメリカの農場を渡り歩く出稼ぎ労働者の二人が出会った悲劇。 なんとまあ切ない話ではありますが、この小説のベースには弱き者達、救いなき者達への共感に溢れているように思えます。 灰谷健次郎の作品のような切なさを感じました。読み始めは少し難しいと感じましたが、中盤に入るとストーリーが急展開してドンドン引き込まれていきます。(1937年発刊)
メモポイント(かなりネタバレあり。未読の方は読まないで下さい)
● 二人の関係。 ジョージが一方的に迷惑をかけられていると思いきや、さにあらず。 レニーの存在はジョージの心の支えでもあった。 二人は互いに精神面で依存していた。 辛い労働のあと、二人の将来の夢を語ってくれとレニーがジョージにせがむのが二人のいつもの決まり事だった。
「ジョージ、もしおでがじゃまなんなら、おで、ひとりでほら穴みつけてくらすようにする。 もうジョージにはめいわくかけらんねえ」
「レニー、バカ言うんじゃねえぞ。俺にはお前にずっとそばにいてもらいてえんだ。 勘弁して欲しいのはお前のあの馬鹿力で、可愛がろうとしたハツカネズミをすぐに殺してしまうことさ。 俺が代わりに仔犬を見つけてやるよ」
George looked quickly and searchingly at him. “I been mean, ain’t I?”
“If you don’ want me I can go off in the hills an’ find a cave. I can go away any time.”
“No—look! I was jus’ foolin’, Lennie. ’Cause I want you to stay with me. Trouble with mice is you always kill ’em.” He paused. “Tell you what I’ll do, Lennie. First chance I get I’ll give you a pup. Maybe you wouldn’t kill it. That’d be better than mice. And you could pet it harder.”
● 農場主の息子の嫁。 娼婦あがりではすっぱ娘、だけどキレイ。 可愛いものが好きなレニーは思わず無邪気に彼女の髪に触れてしまう。恐れた彼女が騒ぎ始めたので、パニックになり力づくで抑えようとしてしまう。
「たのむから、大声ださないでくれろ。 おで、またジョージにおこられてまうよ」
そして悲劇が訪れる。ゾッとするシーン。
Lennie was in a panic. His face was contorted. She screamed then, and Lennie’s other hand closed over her mouth and nose. “Please don’t,” he begged. “Oh! Please don’t do that. George’ll be mad.”
She struggled violently under his hands. Her feet battered on the hay and she writhed to be free; and from under Lennie’s hand came a muffled screaming. Lennie began to cry with fright. “Oh! Please don’t do none of that,” he begged. “George gonna say I done a bad thing. He ain’t gonna let me tend no rabbits.” He moved his hand a little and her hoarse cry came out. Then Lennie grew angry. “Now don’t,” he said. “I don’t want you to yell. You gonna get me in trouble jus’ like George says you will. Now don’t you do that.” And she continued to struggle, and her eyes were wild with terror. He shook her then, and he was angry with her. “Don’t you go yellin’,” he said, and he shook her; and her body flopped like a fish. And then she was still, for Lennie had broken her neck.
レニー、悲し過ぎる。 恐ろしい事をしてしまった事をよく理解できていない。 分からない者の哀れさ。 罪の意識がなかったとしてもそこに罪はハッキリと存在する。無知とはその存在自体が罪であるのかもしれない。自らの衝動による破壊的なパワーを抑えることができない。 これはまさに野生の獣だ。普段は穏やかな獣。 その力があまりにも強過ぎるがあまり周りを不幸にしてしまう。終盤からの怒涛の展開に思わずページをめくる手が止まらない。
● 怖くなって逃げ出したレニー。 「何かあったらここに隠れてろ」とジョージが教えてくれた二人の秘密の場所。 レニーはやはりそこにいた。 ジョージに会えてホッとしたレニー。お決まりの夢語りをジョージにねだる。 二人の最期の時間が刻々と近づいていた。
「ジョージ、おで、きっとおめえがすんごくおこってるっておもってた。 おで、悪いことしたから」
「怒ってなんかないさ、レニー。 怒ってなんかいるもんか。 これだけはお前に知っておいて欲しいんだ」
レニーを捕まえようとする男達の声が遠くに聞こえてきた。 レニーに向こうを向かせるジョージ。 そしてゆっくりと銃を持ちあげた。
“Go on, George. When we gonna do it?” “Gonna do it soon.”
“Me an’ you.”
“You . . . an’ me. Ever’body gonna be nice to you. Ain’t gonna be no more trouble. Nobody gonna hurt nobody nor steal from ’em.”
Lennie said, “I thought you was mad at me, George.”
“No,” said George. “No, Lennie. I ain’t mad. I never been mad, an’ I ain’t now. That’s a thing I want ya to know.”
The voices came close now. George raised the gun and listened to the voices.
男たちからリンチされる前に、最後に自らの手でレニーを楽にさせたジョージ。 老犬を楽にさせるのは飼い主である自分がやるべきだった、とカールソンが後悔していたシーンからのつながり。レニーは幸せなままで逝ったに違いない、そう思いたい。
● そして農園の労働者仲間のスリム。 酸いも甘いも噛み分けた奴。 ジョージの孤独を唯一理解できた男。 彼の存在がこの話にほんの少しだけ温かみを与えてくれているようです。
“Yeah. Tha’s how.” George’s voice was almost a whisper. He looked steadily at his right hand that had held the gun.
Slim twitched George’s elbow. “Come on, George. Me an’ you’ll go in an’ get a drink.”
George let himself be helped to his feet. “Yeah, a drink.”
Slim said, “You hadda, George. I swear you hadda. Come on with me.” He led George into the entrance of the trail and up toward the highway.
生きてることは ただそれだけで
哀しいことだと 知りました
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