hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Swiss Family Robinson (Johhan Wyss) 「スイスのロビンソン」- 290冊目

ジャンル: 小説(児童)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

船が遭難し無人島に漂着したあるスイス人家族の冒険物語。 

動物学・植物学など信じられないほどの広いジャンルに通じている物知りで勇敢な牧師のお父さん、ヤマアラシから海亀まで何でも美味しい料理に仕立て上げ、草や木の皮から布を作り服を作るという「裁縫」という概念を超越した技量の持ち主である明るく優しいお母さん、そして四人の息子たち。(逞しく勇敢な長男、知性的だけど陰キャラ次男、お調子者三男、そして愛されキャラの末っ子、と性格もそれぞれ書き分けられています) この六人家族が、文明から隔絶された孤島で勇気と知恵をふり絞り、力を合わせて逞しく生きていく冒険物語。 

後半では更にイギリス人の美少女も遭難してきて、この島に流れ着き、家族の一員となります。大喜びの少年たち。 このラノベ的な展開、プロットを聞くだけでも面白そうだと思いませんか?

 「The Swiss Family Robinson 」とのタイトルですが、この家族のファミリーネームはロビンソンではありません。それどころか話の中では家族の姓は一切出てこないのです。すべてファーストネームのみ。 作者のJohhan Wyssは子供たちにお話をせがまれて、ロビンソン・クルーソーの漂流物語にヒントを得て作った冒険譚だそうです。 そんなもんで、細かい設定には矛盾があったり、ご都合主義だったりするのですが、そんなこたあ気にしない。 面白くて子供たちが喜べば良いのだ、との作者の思い切りの良さを感じました。
(1812年発刊)



メモポイント

  • 自然に対する残酷な割り切りの描写は割とダイレクト。自分たちが生きていくためには、動物たちを躊躇なく殺していくシーンがあちこちに出てくる。 実際の暮らしには必要なスタンスだろうが、少年少女向けの話において、ここまでドギついストーリー展開がはたして必要なのかなと感じたが、やはり欧米人は日本人とは異なり狩猟民族を祖先に持つ文化なんだろうな。 ローラ・インガルス・ワイルダーの「大きな森の小さな家」(3冊目)を読んだときにも同じ感想を持ったのを思い出す。

 Turk was meanwhile devouring with great satisfaction the little animal's unfortunate mother.
(中略)
Calling Turk, and seriously enjoining obedience, he seated the monkey on his back, securing it there with a cord, and then putting a second string round the dog's neck that he might lead him, he put a loop of the knot into the comical rider's hand, saying gravely: “Having slain the parent, Mr. Turk, you will please to carry the son.”

Turkとはロビンソン家族が連れてきた犬の名前。家族は精魂込めて育てた農作物を荒らし放題の猿の群れに悩んでいた。 怒った家族はついに腹を減らし血に飢えたTurkを猿の群れに放つ。 猿たちは殺戮の修羅場。 そしてある母猿がTurk に貪り食われたのだが、その子供で孤児となった子猿はそのままTurkの背中に乗せて家族が育てることになった。「いいかい、Turk。お前がこの子の母親を食っちまったんだから、お前はその子猿を育てなきゃならないよ」 いかにも微笑ましい風にコミカルに描いているけど、母親を食い殺した犬に育てさせるなんて。 イヤイヤ、これはちょっと悪趣味でしょう。

  • 父親は生きるために必要な物資をかき集め、母親と小さな子供たちは、その限られた物資で少しでも環境を快適にしようと工夫する。 その継続の過程の中に幸せが存在する、と作者は説く。このお話に教訓の目的を含めたかったようだ。

But in reality, the more there was to do the better; and I never ceased contriving fresh improvements, being fully aware of the importance of constant employment as a means of strengthening and maintaining the health of mind and body. This, indeed, with a consciousness of continual progress toward a desirable end, is found to constitute the main element of happiness.

  • 本家のロビンソン・クルーソーと同様、必要な家財道具をすべて難破船から運び出せたのはご愛嬌。 あまりにもご都合主義的に良い獲物が現れ役立つ植物を発見する。 少し食傷気味になってきたが、ハタと気づいた。 これは小説の体をしたサバイバルおもしろ読本なのだと。 実際に無人島に漂着して、こんなに豊富な天然資源に出会える可能性はまずあり得ない。 そしてこの父親が示すサバイバルスキルが本当に使える知識かどうかは微妙。 しかし、包丁人味平のミルクカレーは本当に美味しいのか? クッキングパパの荒岩主任が作る料理は実際に作って美味しいのか? そんな風ににマンガに文句言う人はいない(たぶん…) 物語としてワクワクして楽しいかどうか、そこが大事! ロビンソン一家にも、つっこんじゃダメ。
  • 物語の終盤になってから、急に「さて、10年の月日が経った」とある。 かなり乱暴な展開だなあ。


 楽しんで読める本でしたが、当時とは価値観も異なるので、作者が期待したような教訓本としての役割は、残念ながら今となっては果たせなさそうに感じました。 

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