hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

An Inconvenient Truth (Al Gore) - 「不都合な真実」- 174冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆


写真がいっぱい。パンフレットのようにカラフルな本です。 元々のオリジナルは映画作品。 民主党クリントン政権で副大統領を務めたアル・ゴアが手掛けた(主演した)ドキュメンタリー映画がこの「不都合な真実」でした。 本作はこの映像作品を書籍化したものなので写真が多い。 彼はこの作品で2006年にアカデミー賞を受賞、そして温暖化の注意喚起を世界にもたらした功績により2007年にはノーベル平和賞も受賞しています。(2007年発刊)

映画封切り、書籍出版された2007年頃、温暖化については現在よりも賛否両論。「適当な事、言ってんじゃないよ!」なんて扱いもかなりありました。 ぼく自身も経験しています。  仕事の関係でアメリカ本社から来日したある幹部社員を市内観光に連れ出した事がありました。 まだ30代ぐらいの男性でとても穏やかなヤングエグゼクティブといった趣きの人でしたが、たまたまアル・ゴアの話題になった時に「あいつは大ウソつきだ! 温暖化なんて踊らされているだけ。 まったく科学的根拠もない!」と吐き捨てるように言われた時にはとても驚いたもんです。 雰囲気が悪くなりそうなのでそれとなく話題を変えたのですが、それにしても何がどうなってここまで嫌悪感を持つにいたったのでしょう? 共和党支持者だったのかな? 政治問題も絡んでいたのかもしれません。

そしてあれから10年。 2017年現在、アル・ゴアは「An Inconvenient Sequel: Truth To Power (不都合な真実2 放置された地球)」という続編映画をまた製作しました。 一作目の発表当時には賛否両論があったものの自分の警鐘はやはり間違っていなかったと主張しています。

専門家ではないですがぼくも10年を経た今になって感じます。 やはりCO2排出と地球温暖化には密接な結びつきがあると。 毎年発生する超ド級ハリケーンやフィリピンの台風、ゲリラ豪雨等々の被害により多くの人が亡くなっています。 日本においても温暖化前線が北上し始めており生態系も徐々に変化しているようです。 (寒冷地の北海道では昔は栽培できなかった米が現在では収穫できるようになっています。 「ゆめぴりか」が有名ですね。) 批判者が言うとおりアル・ゴアが唱えた主張にはいくつかの科学的根拠が薄いものがあることは否めません。 しかしこれをもって地球温暖化がまったく根拠レスという事にはならないでしょう。 ぼくの現在の考えとしては、「温暖化は事実として存在する。 しかし果たして人類の努力によって温暖化を止める事ができるのかどうか」というものです。 厭世的になりたいわけではありませんが、ここに至ってもトランプさんは「温暖化は存在しない」と断言してパリ協定から離脱を発表するし、中国やインド等の経済が目覚ましく発展している国々は、過去の先進国たちのみがCO2をバンバン排出しておきながら、後続者たちには「排出を削減しろ」といっても言う事を聞かないという状況です。 耳に痛い話ですから誰も手を付けたくありません。 そうして「お見合い」状態のまま、世界全体が下り坂を転がり落ちつつ徐々に加速度を増しているような気がします。

続編映画が封切られる今、このオリジナル書籍にまた目を通してみたいと思います。

An Inconvenient Truth: The Crisis of Global Warming

An Inconvenient Truth: The Crisis of Global Warming

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What Do You Care What Other People Think? (Richard P. Feynman) - 「困ります、ファインマンさん」 - 173冊目

ジャンル: 自伝
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★★

敬愛する理論物理学者でありノーベル物理学賞受賞者であるファインマンさんによる抱腹絶倒エッセイ2作目。(邦題は「困ります。ファインマンさん」) こちらも前作「Surely You’re joking, Mr. Feynman! 」(134冊目に感想) に負けず劣らず面白い。 特に若き妻アーリーンとの別れのくだりと、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故調査委員会のエピソードは外せません。
科学する心とは何か、という事を初めて教えてくれたのがこのファインマンさんシリーズです。 前作と本作を邦訳で読んだ途端にもう圧倒的にファインマンさんファンになってしまいました。 現在、科学関係の仕事をされている方々の中には若き少年・少女時代にこのシリーズに出会って将来の夢を志した方も多いのではないかと思います。 もっと若い頃にこの本と出会いたかった…(1988年発刊)


メモポイント
● 恋人であり若き妻となったアーリーンとの出会いと別れ。 前作の「Surely You’re joking, Mr. Feynman! 」の感想を書いた時の文章ですが再掲します。

—————————
What Do You Care What Other People Think?

これは恋人アーリーンがファインマンさんに常にかけていた言葉。 彼の自由で本質を見ようとする性質は彼女からの影響が大きかった。(この彼女の言葉はのちに出版される作品のタイトルにもなった。邦題は「困ります、ファインマンさん」 こちらも面白い! 以下はこの続編に書かれたエピソードです。)

若き恋人アーリーンは病に冒されていた。彼女の命が長くない事を知りながらも、周りの反対を押し切って彼はアーリーンと結婚。 しかし残念ながら彼女は程なく早逝してしまう。 最期まで献身的に支えた続けたファインマンさん。 一人になってからは放心状態になり涙も出なかった。 しばらくしたある日、街を歩いていた彼はショーウィンドウに飾られていたあるワンピースを見かける。
「ああ、アーリーンが好きそうな服だな」
思った途端、初めて涙が溢れ出して止まらなかった。

このくだりには読んでいて思わず涙が。


ファインマンさんの父親は幼い頃の彼を連れてよく林を散歩をした。 そして自然界のいろんなことについて楽しくおしゃべりをした。 他の親子もそれをステキな事と思い同じように散歩をして「自然」について語り合うのが流行るようになる。 よその父親たちは「あの鳥の名前は…だよ」と息子たちに「自然」について教えてあげる。 ファインマン親子は少し違っていた。 鳥を見かけると「あの鳥はポルトガル語では…, 中国語では…と言うんだよ」 もちろんデタラメである。 「そんな事よりも」と父親は言う。「あの鳥が何をしようとしているかじっくり観てみよう。 大事なのはそこなんだよ。 物の名前を知ることと、その物を理解することはまったく別物なんだ。 名前を知ったからといって分かった気になってはいけないよ。」 友達たちはファインマンさんの父親が鳥の名前も知らないとからかったが、まったく気にならなかった。 ファインマンさんの父親は科学者でもなんでもなく制服を売る一介のセールスマンだった。 しかし科学する心を誰よりも持っていたのだ。

You can know the name of that bird in all the languages of the world, but when you’re finished, you’ll know absolutely nothing whatever about the bird. You’ll only know about humans in different places, and what they call the bird. ... I learned very early the difference between knowing the name of something and knowing something.

I learned from my father to translate: everything I read I try to figure out what it really means, what it’s really saying.


● 芸術家の友達が一輪の花を取り上げてファインマンさんに言う。「君たち科学者は花の美しさを分かっちゃいない。 花をバラバラに分解、分析したあげくに台無しにしてしまうんだ」 ファインマンさんは答える。「 そんな事はない。花を美しいと感じるのは誰だって同じだよ。それどころか、(中の細胞の構造などの)科学の知識を持つことはもっと多くのワクワクするような疑問を引き出してくれるんだ。花の美しさ、自然の謎や偉大さの価値をもっと高めてくれる。損なうことなんて何もない。」

I have a friend who’s an artist, and he sometimes takes a view which I don’t agree with. He’ll hold up a flower and say, “Look how beautiful it is,” and I’ll agree. But then he’ll say, “I, as an artist, can see how beautiful a flower is. But you, as a scientist, take it all apart and it becomes dull.” I think he’s kind of nutty. .....
There are all kinds of interesting questions that come from a knowledge of science, which only adds to the excitement and mystery and awe of a flower. It only adds. I don’t understand how it subtracts.”


● 科学的知識とは既にある確実な事実を言うものではない。 あるのは「その知識はあくまでも仮説であり、その解釈の確からしさがどの程度のものか」ということだ。 自分たちがいかに無知であるかを認めて、決めつけずに議論の余地を残しておく。これが科学的な態度。

We have found it of paramount importance that in order to progress we must recognize our ignorance and leave room for doubt. Scientific knowledge is a body of statements of varying degrees of certainty- some most unsure, some nearly sure, but none absolutely certain.”

科学ライターの竹内薫さんも著書「99.9%は仮説」の中で以下のような同趣旨の考えを述べられています。
殆どの理論は仮説なんですがその信頼度合いにグラデーションがあるだけだという事。つまりどこまで行っても仮説なので、将来のいつかで覆される可能性があるということを多くの例を引いて説明してくれています。 デカルトの考えたエーテルの概念も当時は絶対的真実と見なされていたそうですが例外では無く、後の世にその理論はくつがえされてしまいました。


ぜんぜん関係ありませんが、量子電磁力学の専門家のファインマンさんが解く数学の証明問題は、やっぱりQ.E.D.で結ばれているんでしょうね。
知らんけど。

"What Do You Care What Other People Think?": Further Adventures of a Curious Character

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A Beginner’s Guide to the World Economy (Randy Charles Epping) - 172冊目

ジャンル: 経済・ビジネス
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

世界経済についてコンパクトにまとめられたQ&A形式の81個のエッセイ。 文章も平易で読みやすく、とても基本的なことから書かれています。 例えば「What is Macroeconomics?」とか「How does International Trade Work?」とか。(2001年発刊)


メモポイント
● よく話題になる米国のチャプター11とチャプター7。 倒産について「ごっちゃ」にしていましたが、この本を読んで理解しました。

In most countries of the world economy, bankrupt companies are encouraged to try to continue operating, under legal supervision, in order to generate money to pay off creditors. Just as a mechanic may try to fix a broken-down car before sending it to the junk heap, companies are sometimes given a new life through court-appointed restructuring. This rehabilitation is called Chapter Eleven in the United States—referring to the relevant chapter in the U.S. Bankruptcy Code—and Administration in Britain. (中略)
If a company shows no prospect of being able to recover, it is simply forced into liquidation—called Chapter Seven in the United States and Receivership in Britain.


● ヨーロッパにないのにEuro Currency とはこれいかに! Eurobond もそうですが、Euroの概念についてのこの説明は分かりやすかったです。Euroyen はヨーロッパにあるとは限らない。 ドル国債は米国だけが発行するとは限らない。

During the Cold War, the Soviet Union was—understandably—reluctant to put its U.S. dollar reserves under the control of authorities in the United States. So, instead of putting its dollars on deposit in New York, it turned to European banks to keep those dollars abroad. Those deposits were soon being called Eurodollars to differentiate them from dollars kept on deposit in their home country. Today, any currency held abroad, even in banks that are not in Europe, is called a Eurocurrency. Japanese yen held in a New York bank, for example, are called Euroyen. Even the new European currency, the euro, can be held abroad. Euros held in Japan would be called—appropriately enough—“ Euro-euros.” (中略)
Arab oil producers, following the example of the Soviet Union, began keeping a large part of their “petrodollars” in European banks. This flood of foreign capital needed to be invested, so London-based banks began issuing U.S. dollar bonds, outside the control and regulations of the U.S. government. These bonds were called Eurobonds. (中略)
Eurobonds were bearer bonds. Unlike normal domestic bonds, which were registered with the government, bearer bonds allow the investor to remain anonymous. And since there was no withholding tax on interest payments, investors could pocket the interest income without reporting it to the tax authorities at home.


巻末に簡単な用語集(glossary)も載っています。 知ってるつもりでも正しく理解していなかった用語がいっぱい… 読み物としてもオススメです。

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Anne of Windy Poplars (L. M. Montgomery) - 「アンの幸福」- 171冊目

ジャンル: 小説(児童)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

アンという名前のつづりは後ろにeが付くアン(Anne)であり、こちらの方がただのAnnよりもっとロマンチックである、との主人公の主張はアン・ファン・テリブル(「恐るべき子供たち」ではなく、筋金入りのアン・ブックスファン)の方々に取っては有名な話です。 アン・ブックスを日本に紹介した翻訳者である村岡花子さんを主人公にした昔のNHK朝ドラ「花子とアン」のエピソードにも、幼少時の村岡さんの決めセリフ「はなじゃねえ。 花子と呼んでくりょう!」と言うのがありました。 後ろに「子」が付く方が素敵だとの設定は、きっとアンのスペルeエピソードのオマージュですよね。 (「はな」の方が可愛いと思うんですけど)

アンの文字へのこだわりはアンブックスシリーズの随所に現れています。 この作品にもありました。 同僚キャサリンの名前のつづりを見てアンが嬉しそうに言います。 「Kで始まるのがジプシー風で素敵、Cのような気取った始まりでなくて良かった」と。 Kのキャサリンがなぜジプシー風なのか想像の余地のないぼくにはよくわかりませんでした…

さて、アンの年齢の時系列で言えば、本作はアンブックスの4作目にあたりますが、実はアンブックス最終作とも言える「Rilla of Ingleside (アンの娘リラ)」(1921年発刊)よりもずっと後になってから、遡って書かれたものだそうです。 オリジナルタイトルは「Anne of Windy Willows (柳風荘のアン)」。米国版では「Windy Poplars」と改題されました。 (1936年発刊)

すったもんだのすえ、やっとお互いの愛情を確かめ合ったギルバートとアン。 このお話は二人の婚約時代にあたり、ギルバートが医者になるために大学で研鑽を積んでいる間、アンはサマーサイド高校の校長として赴任して活躍するエピソードが書かれています。 アンがギルバートに送る手紙の書簡形式でのストーリー展開は、「あしながおじさん」(1912年)と似ており影響を受けているのかもしれません。


メモポイント
● 印象に残るキャラクターは先ほど紹介したキャサリン・ブルック。 少し老けて見える気難しい性格。 サマーサイド高校の女性教師。 年下なのに校長として上司となったアンにキツくあたる。 「夢見る夢子ちゃんはキライなんだよね」って感じ。

But the thing that annoyed me most … Well, one day when I happened to pick up a book of hers in the staff room and glance at the flyleaf I said, ‘I’m glad you spell your name with a K. Katherine is so much more alluring than Catherine, just as K is ever so much more a gipsier letter than smug C.’
She made no response, but the next note she sent up was signed ‘Catherine Brooke’.

しかし、アンの「北風と太陽」のような態度に徐々に打ち解け始め、後に二人は心を許しあえる友となる。


● 多くは語るまい。 この本で一番好きな箇所はラストシーン。 少しへそ曲がりな家政婦、レベッカ・デューとの別れの場面。(なぜかレベッカ・デューは氏名がセットで呼ばれる) これが秀逸。 シャイで不器用なレベッカ・デューは、面と向かってアンに別れの言葉を言えず手紙を託す。 アンはその手紙を読んで涙ぐむ。そして車に乗ってWindy Willowsを離れていくアン。 彼女が最後に振り返って目にしたのは、窓から身を乗り出すようにして力いっぱいサヨナラのバスタオルを振るレベッカ・デューの姿だった。

(レベッカ・デューからのお別れの手紙に彼女の想いが切々と記されている)
Your obedient servant,
REBECCA DEW
PS God bless you.

Anne’s eyes were misty as she folded the letter up. Though she strongly suspected Rebecca Dew had got most of her phrases out of her favourite Book of Deportment and Etiquette that did not make them any the less sincere, and the PS certainly came straight from Rebecca Dew’s affectionate heart.
‘Tell dear Rebecca Dew I’ll never forget her, and that I’m coming back to see you all every summer.’
‘We have memories of you that nothing can take away,’ sobbed Aunt Chatty.
‘Nothing,’ said Aunt Kate emphatically.
But as Anne drove away from Windy Willows the last message from it was a large white bath towel fluttering frantically from the tower window. Rebecca Dew was waving it.

キャサリンレベッカ・デュー、古くはダイアナのジョセフィンおばさん等々、アンはちょっと気難しめの人の心に飛び込んで大ファンにさせてしまう天才ですね。 男で言えば、本宮ひろ志のマンガに出てくる「サラリーマン金太郎」みたい。 (偏屈なお婆ちゃんが実は政財界の大物だったりする)

ということで取り留めのない話になりました。
それではごきげんよう。さようなら。

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Super Crunchers (Ian Ayers) - 「その数学が戦略を決める」- 170冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

統計計算により戦略を決める。 今でこそこの手の本はたくさん出版され本屋でもよく見かけますが、この本が出版された2008年当時はビッグデータデータマイニングという言葉が注目されはじめた頃であり、まだ目新しかったように思います。 ぼくがこの本を手にしたのは、大量のデータ枚挙により裏に隠れた真実をあぶり出す手法が斬新だったグラッドウェルの著作を読むのよりももっと以前のことで、統計による数字の説得力、力強さに圧倒されグイグイと引き込まれたのを覚えています。

例えばビンテージワインの品質を見定める話。(たしかカーネマンのThinking, Fast & Slowにもこのエピソードが紹介されていたかと思います) 通な人しか分かり得ないと考えられていたワインの評価。 実は3点ほどのシンプルな評価軸のみで価格を算定したところ、実際の時価にピッタリだったのにびっくり。 専門家の言葉にできない暗黙知よりも、統計による分析の方が有用だとの例が紹介されています。


データの有用性、雰囲気での判断ではなく根拠データを示すことが説得力を生む。 併せてオススメは Steven Levitt「Freakonomics」(156冊目) 、Nate Silver 「The Signal and the Noise」(4冊目)、それから Kaiser Fung「Numbers Rule Your World」(90冊目)。

Super Crunchers: Why Thinking-By-Numbers is the New Way To Be Smart

Super Crunchers: Why Thinking-By-Numbers is the New Way To Be Smart

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The Elements of Style (William Struck Jr. / E.B.White) - 169冊目

ジャンル: その他
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

ずいぶんと昔の話です。 新卒で会社に入ってから10年ほど経った頃でしょうか、人事異動で職場が変り、カナダ人の上司の下で働くことになりました。 仕事で英語を使わざるを得ない状況になったのです。 それまでずっと英語と無縁の環境にいた純国産人間でしたので、読むのも書くのも聞くのも話すのもダメダメの四重苦。 その上司はとても明るく気さくな良い方で気を遣ってゆっくり話しかけてくれたのですが、ぼくにベースとなる英語知識がないので何を言っているのかさっぱり分かりません。ぼくはひたすら「微笑みの国の人」となりちょっと困ったようなあいまいな笑顔を浮かべるばかり。 英文メールを書く必要も出てきました。 パソコンの前で沈思黙考すること一時間あまり。 ネバってひねり出したのがたった数行の英文メール… 「拝啓、拙者○○と申す者で御座候。 皆様方におかれましてはますます御健勝のことと…」 って、時代劇かいな? きっとこんな感じのイメージの英文だったでしょうね。 落語の「延陽伯(たらちね)」のようなもんです。受け取った相手はきっと驚いたことでしょう。

「これはいかん。早く何とかしなきゃ引導を渡されてしまう」 まったくのカナヅチが嵐の海に突き落とされたような悲壮感が漂っていただろうと思います。 情けなさのあまり、洋書を読んだり英語のテープを聞いたりとアレコレもがき始めました。この本も英文を書くならコレがオススメという事で、当時高い評判に惹かれてすがりついた本でした。

この本を手にした方はご存じでしょうが、これは英作文に限らず、日本語で作文した場合にも当てはまる、分かりやすい文章の黄金律が書かれています。(1918年発刊)


以下、メモポイント

● まずは書く前のプランニング、これが大事。

planning must be a deliberate prelude to writing.


● 単一のトピックは単一のパラグラフで。

Thus, a brief description, a brief book review, a brief account of a single incident, a narrative merely outlining an action, the setting forth of a single idea—any one of these is best written in a single paragraph.


● 肯定文で書け。 明確に意図を伝えろ。

Put statements in positive form.


● クリアで具体的な言葉を使え。

Use definite, specific, concrete language.


● 不要な言葉を入れるな。 絵画や機械に余分な線や部品が無いのと同じ。

Omit needless words.

for the same reason that a drawing should have no unnecessary lines and a machine no unnecessary parts.


● 締まりのない文章をダラダラと続けるな。下手な書き手は、接続詞等で文を長くしてしまうきらいがある。

Avoid a succession of loose sentences.

An unskilled writer will sometimes construct a whole paragraph of sentences of this kind, using as connectives and, but, and, less frequently, who, which, when, where, and while, these last in nonrestrictive senses. (See Rule 3.)


● 対等レベルの複数アイデアは同じ形式で表現しろ。

Express coordinate ideas in similar form.


● 強調したい言葉は文末に。

Place the emphatic words of a sentence at the end.

この本は評判に違わず名著だと思います。 ただ当時の四重苦状態のぼくにとって、あせりと勢いのみで買ったこの英文で書かれた参考書がすぐに即戦力になるはずもありませんでした。 その後も英語に苦しむ日々が数年間続きました。 (あっ、もちろん今も修行途中ですが…) ヒィヒィ言いながら悪戦苦闘しているうちに、ちょっと希望の薄日が射してきたかな、と感じ始めたのは、英語の例文を必死で暗記して、それが1000個ぐらいに達しようかとする頃でした。 それらの例文をいろいろと組み合わせてメールを書いたり話したりして、上司や海外の人と最低限の意思疎通をはかることができ始めた頃は、ただもう嬉しくて嬉しくて、世界がパッと開けるような思いでした。 例文の暗記、英語の世界に慣れる取っ掛かりとしては、今思い返せばこれが一番役に立ったような気がします。 で、この本はしばらくお蔵入りだったのですが、ずっと後になってキンドルで再購入。 やっと書かれている文章の意味がなんとなく分かるようになりました…

この辺りのポイントをキチンとカバーしている本としては、ブルーバックスの「理系のための英語ラィティング上達法」(倉島保美・著)をオススメします。 この本は理系の人に限らず、すべての英文の書き手に重宝されるお役立ち本ですよ。 何よりもまず、これは日本語で書かれてありますからね…

The Elements of Style (annotated) (English Edition)

The Elements of Style (annotated) (English Edition)

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A Concise Guide to Macroeconomics (David A. Moss) - 「世界のエリートが学ぶマクロ経済入門」- 168冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

「世界のエリートが学ぶマクロ経済入門」。 いかにもな邦題ですが、 ナンチャッテなビジネス本に見えるこのタイトルで損している? いや、売り上げ的には得しているのかもしれません。 数式や専門用語をなるべく使わずに書かれています。 (2014年発刊)


メモポイント
リカードが唱えた比較優位論 (Comparativel advantage)。 みんなが最も得意なことに専念して分業すれば、結果みんなハッピー。
サミュエルソンも言ってます。 「現実世界はそんな単純じゃあないんだよ、という人の気持ちはわかります。それはモデルに過ぎないですからね。 でも、全てがその通りにはいかないからと言ってこの考え方を無視していれば、いずれあなた損しますよ」だって。

Economists have since shown that Ricardo’s result can be generalized to as many countries and to as many goods as one wants to include. Although we can certainly specify conditions under which mutual gains from trade break down, most economists tend to believe that these conditions—these possible exceptions to free trade—occur relatively rarely in practice. Indeed, the Nobel Prize-winning economist Paul Samuelson once acknowledged that “it is a simplified theory. Yet, for all its oversimplification, the theory of comparative advantage provides a most important glimpse of truth. Political economy has found few more pregnant principles. A nation that neglects comparative advantage may pay a heavy price in terms of living standards and growth.”


● アウトプットを増加させる三つの源とは。 それは、労働、資本、そして前に記した二つ(input)を使っての効率化である。

Beginning with the question of what makes output rise over time, economists often point to three basic sources of economic growth: increases in labor, increases in capital, and increases in the efficiency with which these two factors are used.


● じゃあ、労働も資本もタップリあるのになんで不景気になるんでしょうか? イギリスの経済学者ケインズはこう考えました。「それはみんなが将来に対して悲観的に考える不安心理によるものだ。これにより消費は低迷する 」と。

Since all the necessary inputs (labor and capital) were there, why had output fallen so dramatically in just a few short years?
The British economist John Maynard Keynes claimed to have the answer. “If our poverty were due to earthquake or famine or war—if we lacked material things and the resources to produce them,” he wrote in 1933, “we could not expect to find the means to prosperity except in hard work, abstinence, and invention. In fact, our predicament is notoriously of another kind. It comes from some failure in the immaterial devices of the mind. . . . Nothing is required, and nothing will avail, except a little clear thinking.”
His key insight, implied by the phrase “immaterial devices of the mind,” was that the problem was mainly one of expectations and psychology. For some reason, people had gotten it into their heads that the economy was in trouble, and that belief rapidly became self-fulfilling. Families decided that they had better save more to prepare for the future. Seeing a drop in consumption on the horizon, businesses decided to scale back both investment and production, leading to layoffs, which reduced workers’ incomes and thus exacerbated the drop in consumption.


マクロ経済学の基本書として多くのレビューワーからオススメされています。 うん、確かに文章は平易で読みやすかったし、説明もわかりやすいと思います。

A Concise Guide to Macroeconomics, Second Edition: What Managers, Executives, and Students Need to Know

A Concise Guide to Macroeconomics, Second Edition: What Managers, Executives, and Students Need to Know

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