hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Of Mice and Men (John Steinbeck) - 「二十日鼠と人間」- 194冊目

ジャンル: 小説(モダンクラシック)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

スティーブン・キングに「グリーンマイル」というホラー小説があります。(感想は65冊目) 映画も有名です。 コーフィーという大男が主人公なんですが、キングのこの小説は本作「Of Mice and Men」をモチーフにしているのでしょうかね。 設定がとても似ているように思えます。

子供のように純真、だけど少しオツムの弱い大男のレニー。 そして彼の兄貴分であり面倒を見ている機転の利いた小男のジョージ。 アメリカの農場を渡り歩く出稼ぎ労働者の二人が出会った悲劇。 なんとまあ切ない話ではありますが、この小説のベースには弱き者達、救いなき者達への共感に溢れているように思えます。 灰谷健次郎の作品のような切なさを感じました。読み始めは少し難しいと感じましたが、中盤に入るとストーリーが急展開してドンドン引き込まれていきます。(1937年発刊)


メモポイント(かなりネタバレあり。未読の方は読まないで下さい)

● 二人の関係。 ジョージが一方的に迷惑をかけられていると思いきや、さにあらず。 レニーの存在はジョージの心の支えでもあった。 二人は互いに精神面で依存していた。 辛い労働のあと、二人の将来の夢を語ってくれとレニーがジョージにせがむのが二人のいつもの決まり事だった。

ジョージ、もしおでがじゃまなんなら、おで、ひとりでほら穴みつけてくらすようにする。 もうジョージにはめいわくかけらんねえ」
「レニー、バカ言うんじゃねえぞ。俺にはお前にずっとそばにいてもらいてえんだ。 勘弁して欲しいのはお前のあの馬鹿力で、可愛がろうとしたハツカネズミをすぐに殺してしまうことさ。 俺が代わりに仔犬を見つけてやるよ」

George looked quickly and searchingly at him. “I been mean, ain’t I?”
“If you don’ want me I can go off in the hills an’ find a cave. I can go away any time.”
“No—look! I was jus’ foolin’, Lennie. ’Cause I want you to stay with me. Trouble with mice is you always kill ’em.” He paused. “Tell you what I’ll do, Lennie. First chance I get I’ll give you a pup. Maybe you wouldn’t kill it. That’d be better than mice. And you could pet it harder.”


● 農場主の息子の嫁。 娼婦あがりではすっぱ娘、だけどキレイ。 可愛いものが好きなレニーは思わず無邪気に彼女の髪に触れてしまう。恐れた彼女が騒ぎ始めたので、パニックになり力づくで抑えようとしてしまう。

「たのむから、大声ださないでくれろ。 おで、またジョージにおこられてまうよ」
そして悲劇が訪れる。ゾッとするシーン。

Lennie was in a panic. His face was contorted. She screamed then, and Lennie’s other hand closed over her mouth and nose. “Please don’t,” he begged. “Oh! Please don’t do that. George’ll be mad.”
She struggled violently under his hands. Her feet battered on the hay and she writhed to be free; and from under Lennie’s hand came a muffled screaming. Lennie began to cry with fright. “Oh! Please don’t do none of that,” he begged. “George gonna say I done a bad thing. He ain’t gonna let me tend no rabbits.” He moved his hand a little and her hoarse cry came out. Then Lennie grew angry. “Now don’t,” he said. “I don’t want you to yell. You gonna get me in trouble jus’ like George says you will. Now don’t you do that.” And she continued to struggle, and her eyes were wild with terror. He shook her then, and he was angry with her. “Don’t you go yellin’,” he said, and he shook her; and her body flopped like a fish. And then she was still, for Lennie had broken her neck.

レニー、悲し過ぎる。 恐ろしい事をしてしまった事をよく理解できていない。 分からない者の哀れさ。 罪の意識がなかったとしてもそこに罪はハッキリと存在する。無知とはその存在自体が罪であるのかもしれない。自らの衝動による破壊的なパワーを抑えることができない。 これはまさに野生の獣だ。普段は穏やかな獣。 その力があまりにも強過ぎるがあまり周りを不幸にしてしまう。終盤からの怒涛の展開に思わずページをめくる手が止まらない。


● 怖くなって逃げ出したレニー。 「何かあったらここに隠れてろ」とジョージが教えてくれた二人の秘密の場所。 レニーはやはりそこにいた。 ジョージに会えてホッとしたレニー。お決まりの夢語りをジョージにねだる。 二人の最期の時間が刻々と近づいていた。

ジョージ、おで、きっとおめえがすんごくおこってるっておもってた。 おで、悪いことしたから」
「怒ってなんかないさ、レニー。 怒ってなんかいるもんか。 これだけはお前に知っておいて欲しいんだ」
レニーを捕まえようとする男達の声が遠くに聞こえてきた。 レニーに向こうを向かせるジョージ。 そしてゆっくりと銃を持ちあげた。

“Go on, George. When we gonna do it?” “Gonna do it soon.”
“Me an’ you.”
“You . . . an’ me. Ever’body gonna be nice to you. Ain’t gonna be no more trouble. Nobody gonna hurt nobody nor steal from ’em.”
Lennie said, “I thought you was mad at me, George.”
“No,” said George. “No, Lennie. I ain’t mad. I never been mad, an’ I ain’t now. That’s a thing I want ya to know.”
The voices came close now. George raised the gun and listened to the voices.

男たちからリンチされる前に、最後に自らの手でレニーを楽にさせたジョージ。 老犬を楽にさせるのは飼い主である自分がやるべきだった、とカールソンが後悔していたシーンからのつながり。レニーは幸せなままで逝ったに違いない、そう思いたい。


● そして農園の労働者仲間のスリム。 酸いも甘いも噛み分けた奴。 ジョージの孤独を唯一理解できた男。 彼の存在がこの話にほんの少しだけ温かみを与えてくれているようです。

“Yeah. Tha’s how.” George’s voice was almost a whisper. He looked steadily at his right hand that had held the gun.
Slim twitched George’s elbow. “Come on, George. Me an’ you’ll go in an’ get a drink.”
George let himself be helped to his feet. “Yeah, a drink.”
Slim said, “You hadda, George. I swear you hadda. Come on with me.” He led George into the entrance of the trail and up toward the highway.



生きてることは ただそれだけで
哀しいことだと 知りました

Of Mice and Men: Teacher's Deluxe Edition

Of Mice and Men: Teacher's Deluxe Edition

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Presentation Zen (Garr Reynolds) - 「プレゼンテーション Zen」- 193冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆

会社でごくごくたまに海外幹部の前でプレゼンテーションをする機会があります。 しかし、コレは何度やっても慣れませんね。 頭真っ白になってしまう。 ホントに苦手です。 で、何かの参考になればと思い本作を手にしました。 感想としては、ウーン…

はっとするポイントもあるのですが、どうも著者の「日本かぶれ」というか、オリエンタルエキゾチックを利用する臭みを感じてしまいました。 著者は日本でのビジネス経験が豊富だそうで、禅に代表される日本の精神性をずいぶんと礼賛してくれているのですが、なんかしっくり来ません。 作者の脳内で変換されたバーチャル日本、観光用日本、という感じでしょうか。 米国の方々の中には、日本の禅に何かエキゾチックな精神性を求めている人が多いようなので、そんな人達向けには効果ありなのでしょう。

著者のプレゼンテーションスライドのスタイルは、それはそれで確立されたものである事は納得できます。しかしそのアプローチのみが正解かと言われるとどうなんでしょう。 どちらかと言えば「好み」の問題ではないのかと。 上手く言えないんですが、なんかこうフワッとしているというか、禅の言葉を多用して深遠っぽい事を言おうとしているように感じてしまうのです。
スキルとしてのプレゼンテーション技術そのものはとても優れていると感じました。 上に述べた違和感が無ければもっと僕にはしっくり来たんだろうと思います。
(2008年発刊)


メモポイント
(とは言いつつも良いと感じた点も多くありました。以下、抜粋です。)

● シリアスな人が必ずしもビジネスに向いているわけではない。 笑顔の人の方がクリエイティブ。

Indian physician Madan Kataria points out in Pink’s book that many people think that serious people are the best suited for business, that serious people are more responsible. “[ But] that’s not true,” says Kataria. “That’s yesterday’s news. Laughing people are more creative people. They are more productive people.”
昔、海外の来客とのビジネスミーティングで。 よく「雰囲気がシリアス過ぎる、もっとリラックスして」と言われたことがありました。気持ちがいっぱいいっぱいで、相手にどのような印象を与えるのかについて気が回らなかったのでしょう。

● プレゼン資料を作るとき。 いきなりパソコンに向かっちゃダメ。 まずは、ペンと紙でラフな絵コンテを作ること。コレが自由な発想を促す。

In fact, the software makers encourage this, but I don’t recommend it. There’s just something about paper and pen and sketching out rough ideas in the “analog world” in the early stages that seems to lead to more clarity and better, more creative results when we finally get down to representing our ideas digitally.


● プレゼン前に資料を配布。 これは死のキス。みんな資料をじっと見て、あなたの方は見向きもしなくなるでしょう。

Never, ever hand out copies of your slides, and certainly not before your presentation. That is the kiss of death.
(David Rose氏の孫引き)


● 少し長いけど、この日本のある経営者のプレゼンスタイルは参考になる。 これこそがグッとくるプレゼン!

Earlier this year, in fact, I saw a fantastic presentation by the CEO of one of the most famous foreign companies in Japan. The CEO’s PowerPoint slides were of mediocre design, and he made the mistake of having not one but two assistants off to the side to advance his slides to match his talk. The assistants seemed to have much difficulty with the slideware and often the wrong slide appeared behind the presenter, but this powerful man simply shrugged his shoulders and said “… ah doesn’t matter. My point is….” He moved forward always and captivated the audience with his stories of the firm’s past failures and recent successes, stories which contained more captivating and memorable practical business lessons than most business students will get in an entire semester or more.

(中略)
Trust me, this is very rare in the world of CEO presentations. There are four essential reasons for his success that night: (1) He knew his material inside and out, and he knew what he wanted to say. (2) He stood front and center and spoke in a real, down-to-earth language that was conversational yet passionate. (3) He did not let technical glitches get in his way. When they occurred, he moved forward without missing a beat, never losing his engagement with the audience. (4) And he used real, sometimes humorous, anecdotes to illustrate his points, and all his stories were supremely poignant and relevant, supporting his core message.


関連本です。
禅とプレゼンと言えばこれは欠かせないでしょう。
Carmine Gallo「Presentation Secrets of Steve Jobs」(85冊目)

また、シンプルを是として生産性を高めることについて知りたいのであればオススメなのが、
Ken Segall「Insanely Simple」(52冊目)
これはホントに良書です。 いちいち納得できます。 こちらもぜひ。

Presentation Zen: Simple Ideas on Presentation Design and Delivery (Voices That Matter)

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Cosmos (Carl Sagan) - 「コスモス」- 192冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度:★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

コーネル大学教授カール・セーガン博士による1980年代に放映された同名のTVシリーズが有名。 日本でも一大ブームを巻き起こしました。 博士はもう亡くなられましたが当時はNASAとの協力のもと惑星探査計画にも深く参画されていました。マリナー、バイキング、ボイジャー計画、懐かしいですね。

この「COSMOS」はテレビ番組の印象がとても強く、まだ小学生か中学生だった頃の僕も熱心に見た覚えがあります。 大人になって本書を手にしたのもそれがキッカケでした。 番組の中で歴史上の科学者達の逸話を再現するドラマが演じられるのですが、これが印象に強く、特にケプラーとティコ・ブラーエによる惑星軌道の発見のエピソードは面白かった。 金属製の付け鼻を付けたティコの映像も今でも思い出します。(若い頃、決闘で鼻を削ぎ落とされたとか)

確かこんな話でした。 ケプラーは理論天文学者でした。 彼は数学(幾何学)を根本にした「こうあるべき」との惑星の軌道を考え出しますが、それが実際の観測データとどうも一致しない。 当時の観測データの精度はかなり高かったようで (ティコ・ブラーエは当時の第一級の観測マンでした)、この観測データが誤っている可能性は低かった。 実際のところケプラーの理論は不完全でした。 一方、ティコは実際の惑星の軌道を正確に捉えることはできましたが惑星軌道の理論上の裏付けを行う事ができずにその生涯を終えます。 ティコの死後に彼の意思を継いだケプラーは、さんざん試行錯誤を繰り返した後に惑星の軌道が円ではなく楕円であることに思い至ります。 この辺りの展開、テレビ番組でとてもワクワクしながら観ていた事をうっすらと覚えています。
(1980年発刊)


メモポイント
● 私たちの身体は星くずでできている。

The nitrogen in our DNA, the calcium in our teeth, the iron in our blood, the carbon in our apple pies were made in the interiors of collapsing stars. We are made of starstuff.


● 科学上の仮説は間違いがいっぱい。 でもそれでいいんだ。 自らを疑って修正しようとするプロセスこそが科学であり、健全な発展につながる。

There are many hypotheses in science that are wrong. That’s perfectly alright; it’s the aperture to finding out what’s right. Science is a self-correcting process. To be accepted, new ideas must survive the most rigorous standards of evidence and scrutiny.


● 嫌な奴がいても宇宙規模からみればとても貴重。 地球上に生を受けることの尊さよ。

There will be no humans elsewhere. Only here. Only on this small planet. We are a rare as well as an endangered species. Every one of us is, in the cosmic perspective, precious. If a human disagrees with you, let him live. In a hundred billion galaxies, you will not find another.


以前にも、科学啓蒙書シリーズとしてアシモフ「Asimov’s New Guide to Science 」(150冊目)も紹介しましたがこれは基礎知識を仕入れるのに結構お役立ち本。
あと、宇宙人って本当にいるのかなーって考えてる人にはコレ。「If the Universe is Teeming with Aliens... Where is Everybody? (広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由)」(98冊目)

Cosmos

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The Hobbit (J.R.R. Talkien) - 「ホビットの冒険」- 191冊目

ジャンル: 小説(ファンタジー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★☆☆☆

名作「指輪物語」を読む前に、前日譚としてまずはこちらという事で読んでみました。 なんだこれ。なかなか可愛いらしいオープニング。ドワーフ(小人)たちの登場シーンはなんだかワサワサとしてて「どんぐりと山猫」みたい。宮沢賢治のお話を思い出します。 難しい単語もなく英文はとても読みやすい。 ただし登場人物が多過ぎる。(ドワーフだけで13人も!) とてもじゃないけど覚えきれません。
主人公はホビット族のビルボ。 礼儀正しくかなりのお人好し。 突如現れた見ず知らずのドワーフ達の無茶な頼みを断り切れず、ドラゴンに奪われた彼らの国土と宝を取り返すべく一緒に冒険の旅に出る。
(1937年発刊)


メモポイント
● 有名な冒頭の一節。 トールキンがこのフレーズを、自分が教授を務めている学校のテスト用紙に気まぐれに書いたことがキッカケで「指輪物語」に繋がる一連の大作を生み出されたそうです。
「地下の穴ぐらに一人のホビットが住んでいました。」
In a hole in the ground there lived a hobbit.


● 続編である「指輪物語」に繋がる不思議な指輪との出会い。 これを身につけると「透明マント」のように姿が見えなくなります。

He guessed as well as he could, and crawled along for a good way, till suddenly his hand met what felt like a tiny ring of cold metal lying on the floor of the tunnel. It was a turning point in his career, but he did not know it. He put the ring in his pocket almost without thinking.


● 謎掛け合戦。姿が見えなくなるガジェット。 ポケットに入れた宝物… ハリー・ポッターでもよく似た展開がありました。これって児童ファンタジー物の定番なんでしょうか? それともJ. K. ローリングのトールキンへのオマージュ?


● あのお人好しのビルボが冒険の旅を続けるうちに、すっかりたくましくなりました。

“Well, are you alive or are you dead?” asked Bilbo quite crossly. Perhaps he had forgotten that he had had at least one good meal more than the dwarves, and also the use of his arms and legs, not to speak of a greater allowance of air. “Are you still in prison, or are you free? If you want food, and if you want to go on with this silly adventure—it’s yours after all and not mine—you had better slap your arms and rub your legs and try and help me get the others out while there is a chance!”


● ここからはかなりのネタバレ。 未読の良い子のみんなは決して見ないでね。

戦いが終わって主人公のビルボが帰途に着く描写が良いですね。 これが映画だったら、ほかの物の怪達との戦いのシーンがクライマックスとなり、その後すぐにエンドの字幕となるところですがこのお話では少し違います。 徐々に普通の暮らしに戻っていく、そんな余韻を残す感じです。 ホビットの村に帰ってきたビルボは、村人達にとって冒険を終えた勇者として知られるわけでもなく讃えられるわけでもありません。(冒険の旅に出ている間に亡くなったと思われていて、いとこに家財道具一式を競売にかけられているぐらいでした) ただの変わり者として周りのホビットたちからは距離を置かれます。 でもビルボはそんなこと、まったく気にしません。 冒険が彼を大きく成長させたのは事実ですし、彼はまた平穏な昔の暮らしに満足して戻っていったのでした。

● 冒険の旅から懐かしの我が家に帰ってきたビルボの家の中。 この挿絵、確かトールキン自身のペンによるものだったと思います。線画、線描画っていうのでしょうか。 味があります。
f:id:hearthlife:20180319150027j:plain



それにしても、自分勝手なドワーフ達に連れ出され、ドラゴンと戦ったビルボ。(実際にドラゴンを仕留めたのは別人。 弓の勇者。) 本作は名作との評判をよく聞きますが、後に友情が育まれるとはいえ、どうもドワーフ達の身勝手さとビルボの人の良さに納得がいかないのですが… こんな読み方であってるんでしょうか? このあたり感情移入できなかったので、長い旅のお話の途中、ちょっと中だれ気味になってしまいました。ファンタジーはちょっと苦手かな。

The Hobbit

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Focal Point (Brian Tracy) - 「大切なことだけやりなさい」- 190冊目

ジャンル: 経済・ビジネス
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

類書は多くありますが、ビジネス本の中でぼくが最も影響を受けた本の一つです。
(邦題がダサいところが惜しい… )

Greg Mckeown 「Essentialism (エッセンシャル思考)」(21冊目に感想) と似た内容でしたが、この「Focal Point 」のインパクトの方が大きかったと感じました。「生産性」を主題にした本をいろいろと読んでみましたが、一冊選ぶとするならば、間違いなく本作でしょう。 原題はズバリ「焦点」。
(2001年発刊)


メモポイント

● ある原子力発電所で起きたトラブル。 現場の人たちが寄ってたかって調べたものの一向に原因が分からない。困り果ててこの分野のトップレベルの専門家を呼んだ。 彼はプラント内をいろいろと歩き回ったあげく、あるバルブにマーカーで「×」と印をつけ、ここを調べるように、と言って帰って行った。 果たして原因はまさにそこにあり、部品を交換するとトラブルは即座に解決した。 後日、その専門家から目が飛び出るような一万ドルの高額請求書が届く。 感謝はしていたもののバルブにマークをつけるだけでこの額はあり得ない。 「よし、請求書の内訳を取り寄せよう」と工場長。 このリクエストに応じて彼から来た明細とは…

Some days later, the plant manager received a new invoice from the consultant. It said, "For placing `X' on gauge: $1.00. For knowing which gauge to place `X' on: $9,999."

この「xマーク」のエピソードはとても気に入っていて今でも折にふれよく思い出します。 著者はこのXマークこそFocal point(焦点)と述べています。真のプロフェッショナルの仕事とはこうあるべきだと思います。 これは単なる労働時間で成果を図るべきではなく、knowledge ベースでの頭脳労働のあるべき姿を端的に表しています。


● 知は力なり。 拘束時間で生産性は測れない。
In less than two generations, we have moved from the Industrial Age through the Service Age and into the Information Age. In the Information Age, knowledge has become the primary resource and the most valuable factor of production. We have moved from the Age of Manpower to the Age of Mind-power. In this new age, you are no longer rewarded for the hours you put in but for what you put into those hours.


● ビジネス本的ライフハック。 やる事リストのパワー。
Make a list of every single step of the task, or of your day, before you begin. Always work from a list. Think on paper. Working from a list keeps you on track and gives you a visual record of accomplishment. The very act of writing out a list and referring to it constantly should increase your productivity by at least 25 percent from the time you start doing it.


● あなたの名刺のタイトルが例え何と書いてあろうともそれは仮の姿。 あなたの本当の役職は「問題解決専門家」であると肝に命じること。
Your ability to solve problems largely determines your success and your income. This ability determines how far you go and how high you rise in life. No matter what the title on your business card, you can cross it off and write "Problem Solver." That's what you are. That's what you do, all day long. The only question is, "How good are you at problem solving?" Highly successful people solve big problems.
(中略)

トラブルが発生したならば、怒ってみたり人の責任を問い質したり言い訳を考えるのではなく、ひたすら解決策を見つけようとするトラブルシューターとなるべきだ。 その普段の姿勢があなたをプロフェッショナルとして更なる高みに押し上げるのである。
The key to becoming an excellent problem solver is to think and talk about possible solutions most of the time. Whenever something goes wrong, resist the temptation to become angry, blame others, or make excuses. Instead, ask questions like, "What's the solution? What do we do now? What is the next step? How do we solve this problem? How do we limit the damage? How can we prevent this from happening ing again? Where do we go from here?" The good news is that the more you focus on solutions, the better you become at discovering even better and more complex plex solutions. You become more effective and creative in everything you do by focusing on solutions most of the time. Your mind functions at a higher level.

● 本を読むことは最も効率の良い「投資」活動。
The three keys to growth orientation are simple. First, read one hour or more each day in your chosen field. The highest-paid people in America read two to three hours each day to keep current and improve their minds. But if you read only one hour per day from a good book that helps you to be better at your job, that would be enough.


● 質問や頼まれごとに即座に応えるだけで、ゆっくりと対応する人よりもあなたの株はグッと上がる。 スピード対応はそれだけでリャンハンぐらいの役がある、そんな感じです。 これはホントに日々、実感しています。
If you act fast when they have a need or a question, they automatically assume that your work is better and of higher value than that of someone who moves slowly. By moving fast, you gain a competitive edge.



で、今までぼくが読んだビジネス本の中でオールタイムのオススメ3冊は以下の通りです。

● Dale Carnegie 「How to Win Friends and Influence People (人を動かす)」(34冊目)
人の心を理解するために。 この邦題の「上から目線」の感じはあまり好きじゃないんですが、内容は的を得ているとおもいます。これは本当に目ウロコ本! 人間関係で悩んでいる方には凡百の類似本を読むよりもこれ一冊で十分。


● Ken Segall 「Insanely Simple (シンク シンプル)」(52冊目)
「病的なほどシンプルであれ」とのスティーブ・ジョブズのビジネスセンス。シンプル=パワフルを体現しているスゴイ本。これはもうアートでしょう。


● そして本作「Focal Point」
自分の限られた時間や体力等の資源を何に傾けるか。生産性を高めるとは 最も大事なポイントを押さえる事。最小投資による最大便益。


ご興味ある方はぜひ手にしてみて下さい。 後悔させませんよ!!

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The Sound of Music (Maria Augusta Trapp) - 「サウンド・オブ・ミュージック」 - 189冊目

ジャンル: 自伝
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

今までで何度も繰り返し観た映画は「レイダース」、「ショーシャンクの空に」そしてこの「サウンド・オブ・ミュージック」。 どストレートで何のひねりもありません。
分かりやすい冒険活劇や感動作が昔から大好きなのです。 映画が好きでいろんなジャンルを観ます。 難しい芸術的作品を深く掘り下げて鑑賞する、というのに憧れるのですが、どうしても繰り返し観たい作品は限られています。 「レイダース」で言えば、冒頭の巨大ボールのゴロゴロシーンで一緒に追いかけられている感覚にワクワクするタイプなのでした。

で、話は本作に戻ります。 超有名な映画の原作。 主人公として描かれていたMaria Von Trap自身のペンによるものです。 初めてこの映画をテレビで観たのは確か小学生の頃でした。 それ以来、もうこの映画の大ファンで何回観た事か覚えていません。 サウンドトラックレコードもおねだりして買ってもらうほどでした。 歌に合わせて「レイヨルレイヨルヨ〜」とヨーデルなんかを歌ったもんです。 変な小学生です。 オリジナルのタイトルは「The Story of the Trapp Family Singers 」 (トラップファミリー合唱団物語)。(1949年発刊)

オーストリア海軍軍人トラップ少佐(大佐ではなく)一家の7人の子供の家庭教師となった元修道女見習いのマリア。 やがてトラップ少佐に見初められ、後妻&7人の連れ子達の母親となり、第二次世界大戦下に台頭してきたナチスから逃れ、合唱団を作り世界を歌って回ります。
著者のマリア・トラップは元々、自伝など書くつもりもなかったそうです。友人の熱心な勧めもあり、自分たちの家族の半生を少し書いたところ、これがベストセラーに。 後にはジュリー・アンドリュース主演でミュージカル映画の最高傑作との誉れも高い「The Sound of Music」に結実します。


ちなみに。 ストーリーを盛り上げるためか、マリアと出会った頃のトラップ少佐は、映画の中では冷たく権威主義的で家族をあまり省みない人物として描かれています。 しかし実際には心優しい父親だったそうで、映画の創作部分には概ね寛容だったマリアもこのダンナさんのキャラクターに関する脚本にはクレームをつけたとの逸話が残っています。

The Sound of Music: The Touching, Romantic Story of the Trapp Family Singers

The Sound of Music: The Touching, Romantic Story of the Trapp Family Singers

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The Goal (Eliyahu Goldratt) - 「ザ・ゴール」- 188冊目

ジャンル:ビジネス・経済
英語難易度:★★☆
オススメ度:★★★★☆

「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない。」
科学技術の話ではありませんが、ある不可思議な現象について、理論として理解している人から見ればしごく当然の事だったとしても、知らない人から見ればまるで魔法のように感じてしまうと唱えたのはアーサー・クラークでした。 「A Study in Scarlet 」で、初めてホームズと出会ったワトソンは「アフガン従軍」の件を言い当てられて「これはトリックではないか?」と訝しがりました。 本作に登場する物理学者Jonahは鮮やかな推理(?)で訪れたこともない主人公Alexの工場の苦境を言い当てます。Jonahにはホームズのようなイメージが重なります。

 離婚の危機に陥ったある夫婦(工場閉鎖の危機にある工場長であり仕事中毒の主人公Alexと、かまってチャン奥さんJulie)の家族再生物語。 本作、小説仕立てではありますが元々は生産における「ボトルネック」の考え方について分かりやすく解説する事を目的として書かれたビジネス啓蒙書だそうです。 ですが純粋に物語として読んでも十分に楽しめます。 僕としてはこの家族再生ストーリーの側面の方が印象に残りました。  女子大生会計士が主人公の小説仕立てのビジネス書が日本でも流行ったことがありましたが、本作は物語ビジネス書のはしりかもしれませんね。 三枝匡さんの企業小説を読んだときにも感じましたが、この臨場感はもうビジネス書のレベルを超えている!!
(1984年発刊)

ストーリーを少し紹介します。 壊滅的な状況下の工場で前任の工場長が辞め後任としてAlexが採用されました。 入社後たった半年にもかかわらず3ヶ月以内に赤字を解消しないと工場を閉鎖してクビだと宣告されます。 不慣れな上に状況がさらに悪化しつつある袋小路にいたある日、Alexは学生時代の恩師で物理学者のJonahに偶然にも空港で再会します。 Alexの二言三言の世間話のような会社のグチを聞いただけで、Jonahは工場の苦境を手に取るように鮮やかに分析してみせます。(ここはちょっとホームズ風) 彼の恐るべき洞察力に舌を巻いたAlexは彼にすがるように教えを請う事に…

本書の眼目である「ボトルネック」の考え方についてもう少し触れたいと思います。一言で言うと「複数の工程を経て完成するプロジェクトにおいて、そのプロセスの最も遅い工程が全体のタイムラインを決定する。」ということ。師匠Jonahが説くところによると、ボトルネックとはマーケットの需要よりもその供給が少ないポイント(つまり市場が飽和状態ではなく、作れば作っただけ売れる状態。 いわゆる「入れ食い」状態)であったならば、仮に他の工程での生産性がどれだけ高くても、そのボトルネックの限界までしか生産できないということ。

本作では主人公が息子のクラスの徒歩キャンプに父兄として引率した際に、一番歩くのが遅い太っちょの子供のスピードに全体のスピードを合わせざるを得ず、結局は目標時間ギリギリになってゴールに到着してしまうという出来事がありました。 このエピソードから主人公は「ボトルネック」の考え方に気づきます。 そしてさらに自身の工場の採算性を悪化させる一番の原因である原材料在庫が積み上がる理由を理解するようになります。


メモポイント
● 本当に重要な事のみに集中する。 Greg Mckeownの「Essentialism」を思い出す。 一番の目的に合致する事のみが生産的と言える。それ以外は全て非生産的なのである。

“Alex, I have come to the conclusion that productivity is the act of bringing a company closer to its goal. Every action that brings a company closer to its goal is productive. Every action that does not bring a company closer to its goal is not productive. Do you follow me?”


● 会社の究極のゴールはmake money 。あまりにも当たり前の話だが、この当たり前の事実をクリアに伝えて、ベストセラー本にしたのは作者の筆力だと思う。

If the goal is to make money, then (putting it in terms Jonah might have used), an action that moves us toward making money is productive. And an action that takes away from making money is non-productive.


● 会社での会議の喧騒の中でAlexは一人考えている。みんなもっともらしい言葉や数字をこねくり回しているが、全部意味がない。

I have no idea what’s going on. Their words sound like a different language to me—not a foreign language exactly, but a language I once knew and only vaguely now recall. The terms seem familiar to me. But now I’m not sure what they really mean. They are just words. You’re just playing a lot of games with numbers and words.


● Alexと一緒に工場の危機を乗り越えた定年間近のLouという静かで落ち着いた雰囲気の会計責任者が出てくるんですが、このシーンがいい。 同じ会計に携わる者として心に残ります。「Alex、私はこんな中途半端なままで終わりたくないんだよ。やっと今気付いたんだ。」

I’ve never heard Lou talk for so long. I agree with everything he just said, but I’m totally confused. I don’t know what he’s getting at.
“Alex, I can’t stop here. I can’t retire now. Do me a personal favor, take me with you. I want the opportunity to devise a new measurement system, one that’ll correct the system we have now, so that it will do what we expect it to do. So that a controller can be proud of his job. I don’t know if I’ll succeed, but at least give me the chance.”
What am I supposed to say? I stand up and stretch out my hand. “It’s a deal.”


● すれ違いだった夫婦、AlexとJulie。 Julieは仕事の事など理解してくれないとAlexはずっと思い込んでいた。 しかし今やっと分かった。 真摯にAlexの悩みを受け止めてくれていたのはJulie だった。 彼女はAlexに取って真のアドバイザーだったのだ。

I look at her in silence. Here is my real, true advisor.


● ビジネスの舵取りには理論が必要だと主張する。 メンデレーエフの元素周期表の逸話。 彼の作った当初の周期表は歯抜けでお粗末なものだった。 しかし彼には理論があった。 理論が正しければ必ずや将来に明らかにされるとの確信があったのだ。周りから笑い者になりながらも、自身の周期表の理論に基づけば必ずこの「空白の表の位置」に元素は存在するはずだと主張し続けた。 そしてその通り。 後の歴史は彼の理論が驚くべき精度で正確であったことを証明したのだ。

“Skepticism is an understatement. Mendeleev became the laughing stock of the entire community. Especially when his table was not as neatly arranged as I described it to you. Hydrogen was floating there above the table, not actually in any column, and some rows didn’t have one element in their seventh column, but a hodgepodge of several elements crowded into one spot.”
“So what happened at the end?” Stacey impatiently asks. “Did his predictions come true?”
“Yes,” says Ralph, “and with surprising accuracy. It took some years, but while he was still alive all the elements that Mendeleev predicted were found. The last of the elements that he ‘invented’ was found sixteen years later. He had predicted it would be a dark gray metal. It was. He predicted that its atomic weight would be about 72; in reality it was 72.32. Its specific gravity he thought would be about 5.5, and it was 5.47.”


● データを集めるだけで仕事をした気になってはいけない。 科学的アプローチとは、ある現象を観察し、仮説を組み立て、それを検証する事だ。

“It’s how physicists approach a subject; it’s so vastly different from what we do in business. They don’t start by collecting as much data as possible. On the contrary, they start with one phenomenon, some fact of life, almost randomly chosen, and then they raise a hypothesis: a speculation of a plausible cause for the existence of that fact. And here’s the interesting part. It all seems to be based on one key relationship: IF … THEN.”
ホームズも言ってます。「不可能なことがらを消去していくと、よしんばいかにあり得そうになくても、残ったものこそが真実である、とそう仮定するところから推理は出発します」



著者のEliyahu Goldratt自身が物理学者であり、理論に基づいたビジネス指標がいかに重要であるかという事に力点を置いて書かれています。 巻末には「巨人の肩に乗って」という日立の失敗事例と改善方法の特集が掲載されています。 トヨタのカンバンシステムの説明もありプロジェクトXのような臨場感もあり秀逸です。

The Goal: A Process of Ongoing Improvement

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