ジャンル: 小説(ホラー)
英語難易度: ★★★
オススメ度: ★★★☆☆
キャシー・ベイツの怪演による同名の映画も有名になりました。 彼女がハンマーを振り上げるシーンのインパクトが強いですね。 ちなみに彼女が演じた女性はアニーという名前なんですが、彼女が「ミザリー」だと思っている人いませんでした? (僕がそうでした…) ミザリーという人物が実際に登場するわけではありません。
ザックリとした粗筋を。
車の事故で両足を骨折して動けなくなった人気作家ポール・シェルダン(シドニー・シェルダンのもじり?) が、偶然にも自分の作品「ミザリーシリーズ」の熱狂的ファンであり、人里離れた田舎に一人で住んでいるアニーに助けられた。 アニーの家に連れてこられたポールは「ファンに助けられるとは不幸中の幸い。 しかも元看護婦だなんて。」とホッとしたのもつかの間。 ポールの最新作の内容(主人公ミザリーを葬る設定)を知ったアニーはそのストーリーに驚愕激怒し、身動きできないポールに罰として拷問をくわえる。 アニーは狂気に侵されていた。それだけではない。 ポールがそっと盗み見たアニーのスクラップブックから彼女が壮絶な恐ろしい過去の持ち主だった事が分かる。アニーの家で監禁され、彼女のためだけの作品を彼女の気に入るように書くように拷問を受けるポールの運命は… (1987年発刊)
メモポイント
● よくもまあ、こんなおそろしいプロットを考えつくもんですね。 ポールとアニーのほぼ二人の登場人物だけでこのストーリーを作り上げるとは、さすがスティーブン・キング。
狂気に駆られた人間に生殺与奪の権利を握られた者の恐怖。
She was crazy but he needed her. Oh I am in so much trouble he thought, and stared blindly up at the ceiling as the droplets of sweat began to gather on his forehead again.
● 自らのみが「ミザリー」を正当に評価できると信じ込むアニーの狂気の描写がおどろおどろしく怖い。 時おり見せるポールへのゆがんだ優しさがまた怖い。 残酷である事はまだ理解の範疇である。 本当に怖いのは底の知れない狂気だ。
He had discovered that there was not just one God but many, and some were more than cruel - they were insane, and that changed all. Cruelty, after all, was understandable. With insanity, however, there was no arguing.
● シリーズ物に嫌気が指して主人公を葬ろうとする作者と、それを留めようとするファンの話はアルアルですね。 「赤毛のアン」や「ホームズ」でも、当時の熱狂的なファンがシリーズの終了をなかなか受け入れませんでした。 モンゴメリもドイルも書き続けるのは、もう嫌で嫌でたまらなかったそうです。
● 本作はその文字にも工夫がありました。確かアニーから与えられた中古タイプライターが壊れたとの設定で、打ち出せない文字をアニーが手書きで補っていたかと思います。 昔、ペーパーバックで読んだ時の記憶なのでキンドルではどのように表示されているのか分かりませんが。
怖いもの大好きでイタい描写に耐性のある方には、かなりオススメの一冊です。
話は飛びますが、怖い話といえば昔読んだ本に「恐怖の誕生パーティー」(ウィリアム・カッツ)というミステリーがありました。 翻訳でしたがそれはもうむちゃくちゃ怖かった。 枕元に置いておくだけで落ち着かず、表紙を見るのもダメという経験をしたのは、この「誕生パーティー」と鈴木光司の「リング」ぐらいでした。 今、原書版がキンドルで出ないかなと首を長くして待っているんですが絶版になっているようです。 無理でしょうかね。 これはホントにオススメなんですが。
- 作者: Stephen King
- 出版社/メーカー: Hodder & Stoughton
- 発売日: 2007/05/31
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