hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (Xは、hearth@洋書&映画)

Frankenstein (Mary Shelley) - 「フランケンシュタイン」- 93冊目

ジャンル: 小説(ホラー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆


  昔のTVアニメで「妖怪人間ベム」っていうのがあった。オープニングのシーンは子供心にトラウマになるほど怖かった。この妖怪人間ベム・ベラ・ベロの三匹は醜い容姿の中に正義の血が流れており、人間を助けるために他の妖怪と戦い、命を懸けて尽くすのだが、その外見のために人間からも攻撃される。     この本を読んでこの妖怪人間の原型がわかった。驚いた! こんな深い話だったとは… 今読んでも古びていない。名作です。


メモポイント

●  文才のある仲間たちが集まった別荘で、バイロン卿による「ひまつぶしに一人ずつ怖い話でも書こう」 (“We will each write a ghost story,” said Lord Byron) という百物語みたいな声掛けがきっかけで作られた作品。  作者であるメアリー・シェリーの文章は、初めの方は気負った感あり。出だしは少し美文調で読みにくかったが、徐々にストーリーに引き込まれた。 それにしてもこの作品が書かれたのが1818年。 日本は江戸時代で滝沢馬琴が「八犬伝」なんか書いてたころだ。 その頃の小説が現代でもほとんど言葉の違和感なく読めるとは…   江戸の文学が現代の日本では普通に読まれない点からみて (何も江戸の文学が劣っていると言っているわけではない)  やはり世界の覇権を取った英語圏文化の歴史の蓄積はすごい。覇者の文化は変遷する必要がないんだなー。

● 怪物がかなり知的で意外。もともと人間の言葉を知らなかった怪物が村人の会話を聞き取りながら習得していくシーンは、手術により高知能を得た「アルジャーノンに花束を」のチャーリーがどんどん高度な概念を理解していくさまを思い出した。  なんせミルトンの「失楽園」、プルタークの「英雄伝」やゲーテの「若きウェルテルの悩み」を手に入れて、怪物は文字を学び、文学を生きる糧にしていくのだから。この怪物は学びの喜びを知っている。  

Fortunately the books were written in the language, the elements of which I had acquired at the cottage; they consisted of Paradise Lost, a volume of Plutarch’s Lives, and the Sorrows of Werter. The possession of these treasures gave me extreme delight; I now continually studied and exercised my mind upon these histories, whilst my friends were employed in their ordinary occupations. “I can hardly describe to you the effect of these books. They produced in me an infinity of new images and feelings, that sometimes raised me to ecstasy, but more frequently sunk me into the lowest dejection.

● 怪物は「もっと自分を愛して欲しかった。」とフランケンシュタインに切々と訴えるが、造物主である彼はまったく耳を貸さずに、彼の生み出した怪物に憎悪のみを抱く。 親からネグレクトされ虐待された子供のように怪物は訴える。興味本位で無計画に怪物を生み出したフランケンシュタインと比べて、望まぬ生を受け殺人を起こす状況に追い込まれた怪物の方が精神的に成熟しているように思える。  
   

   正式なタイトルは「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」。 プロメテウスとはギリシャ神話に出てくる男神で、ゼウスの意に背いて天界の火を盗んで良かれと思って人類に与えたそうな。 人間の力ではもはや制御できない科学技術のパワーを手にした事による不幸を表しているんだって。  そう言われてみれば、高度な知的概念を持つこのフランケンシュタインの怪物は、以前で言えば核開発競争、今なら話題となっている人工知能が人類を凌駕するシンギュラリティの話になんか似てるよなー。造物主よりも高度に発達した知能を持ち、そして造物主はその怪物を制御するすべを持たない。 もう誰にも止められないそんな日が本当に来てしまうのかも。

Frankenstein (Penguin Classics)

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