hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Daughter of Time (Josephine Tey) - 「時の娘」- 105冊目

ジャンル: 小説(推理)
英語難易度:★★★
オススメ度: ★★★☆☆

     手に取るまでは、僕の好きなタイムトラベルものかと勘違いしていましたが、実は歴史推理小説。   歴史は勝者にて作られる。 勝てば官軍。

   怪我で入院中のロンドン警視庁のグラント警部。 病床で退屈しのぎに眺めた「甥っ子殺しの稀代の悪王」リチャード3世の肖像画に違和感を持つ。「どう見ても悪人の面構えじゃないな…」ベッドから一歩も出ることなく、仲間から集めた資料だけで後のチューダー朝で捏造された(と思われる)歴史を解明していく。(1951年発刊)

メモポイント

●  イギリス王朝の前知識がないと、ちょっとしんどい。 ウィキペディアヨーク朝(リチャード3世)、チューダー朝(ヘンリー7世)の家系図を交互に参照しながら読み進めた。  語彙も難しく、9割ぐらい読み進めたところでグラント警部がこの500年以上も前に起きた殺人事件をメモ書き整理するのだが、やっとこれを読んでストーリーが分かってきた。(単に僕の英語力不足?)

●  (「かの有名なトマス・モアが『リチャード3世は甥っ子殺しだ』と書いている。 それが証拠だ」と主張されグラントが反駁するシーン)
   How old was More when Richard succeeded? He was five. When that dramatic council scene had taken place at the Tower, Thomas More had been five years old. He had been only eight when Richard died at Bosworth. Everything in that history had been hearsay. And if there was one word that a policeman loathed more than another it was hearsay. Especially when applied to evidence.

●  事実と伝聞は異なる。 事実と意見も異なる。  この様に事実を捻じ曲げて歴史を塗り替える事を著者は「トニーパンディ」とグラントに呼ばせている。   この本を読むと一気にリチャード3世に肩入れしたくなる。  それにしても、ここまで史実データに基づいて積み上げた(と思われる)作品なのに、未だにリチャード3世は甥っ子殺しの大悪人との見解が一応の正史となっているようだ。  本当のところはどうなんだろう?

●  どうでもいい事かもしれないけど、入院した病院の女性看護師のことを「アマゾン」とか「小人(midget)」などの渾名をグラントにして呼ばせている。邦訳がどうなっているか知らないが、発表された時代が古いとはいえ、女性作家の筆にしては違和感あり。


  本作を楽しめた人には、北村薫の「六の宮の姫君」や山本周五郎の「樅の木は残った」をオススメ。  歴史紐解き推理が楽しめます。

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