ジャンル:サイエンス・ロジック
英語難易度:★★★
オススメ度: ★★★☆☆
邦題が「世界でもっとも美しい10の科学実験」。 うまい、うま過ぎる! (風が語りかけます。 って、誰も知らんか…)
このタイトル見ただけで読みたくなります。 元々この原書を手にしたのはこの翻訳のタイトルに惹かれたからでした。 直訳すれば「プリズムと振り子」。 ニュートンの白色光の正体を突き止めたプリズムの実験、フーコーの地球の自転を眼に見える形で示してみせた振り子の実験から取られているようです。 これらを含めて10個の「美しい」科学実験が紹介されています。 数学でも科学でもとことん極めると「美しさ」という表現が出てくるようです。 単純明快でシンプルな機能美というかエレガントな解答というか…
この本が書かれた背景とは、元々この著者がある科学雑誌に「一番美しい実験をあげてほしい」と読者投票を集めたところ並みいる科学者や好事家たちがワイワイガヤガヤと集まってひねり出した10コの実験だと言うのだからたまりません! (2004年発刊)
● 以下はその実験のタイトルです。
Eratosthenes' measurement of the Earth's circumference
(エラトステネス) 地球の外周なんてメジャーで測れるわけがない! 別々の場所にある日時計が示す影の長さの違いから地球の外周を算出する。 この紀元前の数学者の測定による誤差は実際の長さのたった5%だった!(ランキング7位)
Galileo's experiment on falling objects
(ガリレオ) ピサの斜塔での超有名実験。 みんな重い球の方が軽い球よりも早く落ちると信じていた! それまでみんなが疑いもしなかった事を事実ではないと実証して見せた。これは鮮やか!(ランキング2位)
Galileo's experiments with rolling balls down inclined planes
(ガリレオ) 斜面の玉転がし実験。 上に紹介した実験からさらに進めて、物が落ちる時のスピードがぐんぐん上がる事実から、転がした玉の時間当たりの進んだ距離を実験で確かめて等加速度運動に気づいた。 (ランキング8位)
Newton's decomposition of sunlight with a prism
(ニュートン) 太陽光をプリズムで分解。 白い光とは単体で存在するのではなく、いろいろな光の寄せ集めだった!(ランキング4位)
Cavendish's torsion-bar experiment
(キャベンディッシュ) ニュートンの万有引力をベースに、ダンベルのような秤を使って2つの鉛の玉の重力の比率と、鉛の玉と地球との重力の比率を使って、地球の重さを量る!(ランキング6位)
Young's light-interference experiment
(ヤング) 光の波の特性を示した干渉実験。 さらにこれはランキング一位の二本スリット実験のつながります。(ランキング5位)
Foucault's pendulum
(フーコー) 地球が自転しているのを目で確認する方法。 上野の科博にもでっかい振り子ありますね。(ランキング10位)
Millikan's oil-drop experiment
(ミリカン) 霧吹きで作った油のつぶつぶを帯電させて重力に逆らって落ちる速さを変えることで、電子の電荷の状態を見る。 (ランキング3位)
Rutherford's discovery of the nucleus
(ラザフォード)アルファ線をいろんな物質にぶつけた跳ね返りを測って原子核の存在を発見。 それまでは原子って電子のツブツブがドライフルーツのように散りばめられたフルーツケーキみたいなもんだと思われていたそうですけど、じつは梅干みたいに中にタネがあったのでした。(ランキング9位)
Young's double-slit experiment applied to the interference of single electrons
不思議さ加減ではこれがピカイチ印象に残りました。 電子の干渉実験。これはいろんな人がからんでいるので個人の実験と言うわけではないようです。二本スリット(板に細い切れ目を二本入れたようなもの)に電子を通してその先に映し出された形から、電子がツブツブであるか波であるか調べようとしたそうです。 ツブツブなら直線模様、波なら波の縞模様だろうと。ところが結果は1つの切れ目だと直線のツブツブの性質で2つの切れ目だと干渉して縞模様になるから波の性質で… これはどういうことなの? 切れ目の数で電子の性質が変化するわけはないのに… 量子力学って通常の肌感覚では測れません! スリスリスリット美香子もビックリ! (ランキング1位)
ぼくは科学の素養がないので、それぞれの実験のディテールについてあまり深くはついていけなかったのですが、それでも美しさの深淵の端っこの方でもかじる事が出来たような気がします。 この脳内での思考実験を実際に試してみて、ドンピシャだった時の快感、これはとてつもないものだったでしようね。 シビれる感じです。
同じようなゾクゾク感をお求めの方にはSimon Singhの科学読本三部作本。 「Fermat's last theorem」、「The Code Book」そして「Big Bang」 これは科学本なのにミステリーのように途中で止まらなくなるスゴイ本。 もう、たまりません。
The Prism and the Pendulum: The Ten Most Beautiful Experiments in Science
- 作者: Robert Crease
- 出版社/メーカー: Random House
- 発売日: 2007/12/18
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