hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Dracula (Bram Stoker) - 「吸血鬼ドラキュラ」- 208冊目

ジャンル: 小説(ホラー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

ミナお嬢様と勇敢なる冒険者たちの物語。

はじめに抱いていたイメージとは違ってました。古典っぽくて読みにくいのかなと思っていたら、全然。100年以上も昔の話なんですが、単語も分かりやすいですよ。 土地の古老が話す訛りの強いdialectsを除けば今でも違和感なくスッと読めます。

「Frankenstein」(93冊目)を読んだ時も感じましたが、日本の古文と比べて、英文のクラッシックが広く読まれている理由のひとつに、言葉の変化があまり激しくないという要素があるんじゃないかと思います。 小説というよりも、手紙や電報、日記をつなぎ合わせるという形式で物語が構成されています。 カメラ(コダックという商品名で登場)や蓄音機での音声日記の記述など、当時では最新式だったであろうガジェットも出てきます。 作者のブラム・ストーカーは当時としては斬新な手法にチャレンジしていたのではないでしょうか。
(1897年発刊)


メモ (ちょっとネタバレ)
● これで後世に伝わる典型的なドラキュラ伯爵のビジュアルイメージが出来上がったんでしょう。

His face was a strong, a very strong, aquiline, with high bridge of the thin nose and peculiarly arched nostrils, with lofty domed forehead, and hair growing scantily round the temples but profusely elsewhere. His eyebrows were very massive, almost meeting over the nose, and with bushy hair that seemed to curl in its own profusion.
The mouth, so far as I could see it under the heavy moustache, was fixed and rather cruel-looking, with peculiarly sharp white teeth.


● で、ヒロインのミナが可憐、可愛いのです。 なおかつ頭も良い。 吸血鬼ハンターの男たちに励ましと希望を与えるキャラクター。なんだか男が描いた理想の脳内女性像っぽいです。ちょっと宮崎駿カントク系?

We women have something of the mother in us that makes us rise above smaller matters when the mother spirit is invoked. I felt this big sorrowing man's head resting on me, as though it were that of a baby that some day may lie on my bosom, and I stroked his hair as though he were my own child.

詳しく書くとネタバレになりますが、形成不利となり姿をくらましたドラキュラ伯爵の居場所を何人もの男たちがかかってもさっぱり分からない時に、ホームズ顔負けのロジカルな名推理でミナ嬢が突き止めるシーンは圧巻です。


● 伯爵に血を吸われて (また伯爵の血を飲まされて) 吸血鬼になってしまった少女ルーシー。 彼女を懸命に助けようとするヘルシング教授。 彼は自らの危険を顧みず渾身的につくす医者の鑑なのですが、唐突に出てくる教授のヒステリー症状には面食らいます。少女の死に立ち会ったのちに発作的に笑いが止まらなくなってしまう。これって本作のストーリー構成として必要なんでしょうかね? 実話ドキュメンタリーならあり得ると思いますが、あまり小説の要素としてはそぐわない気がしてなりません。

Arthur and Quincey went away together to the station, and Van Helsing and I came on here. The moment we were alone in the carriage he gave way to a regular fit of hysterics. He has denied to me since that it was hysterics, and insisted that it was only his sense of humor asserting itself under very terrible conditions. He laughed till he cried, and I had to draw down the blinds lest any one should see us and misjudge. And then he cried, till he laughed again, and laughed and cried together, just as a woman does.


● ルーシーは伯爵の毒牙にかかり死後に吸血鬼となったが、最後は首を切られて退治された。 そして親友のルーシーと同様にミナにも自身の血を飲ませて吸血鬼にさせようとしていた伯爵。 ミナは徐々に自身が伯爵の穢れた血で吸血鬼に同化して行くことを自覚していました。 そして、ついに最愛の夫に懇願するミナ。
「お願い、誓って。 私が自分で無くなってしまったら、そしてルーシーの様に吸血鬼になってしまいそうになったら、迷わずあなたの手で私を殺して欲しいの」

"Then I shall tell you plainly what I want, for there must be no doubtful matter in this connection between us now. You must promise me, one and all, even you, my beloved husband, that should the time come, you will kill me."


● 伯爵の穢れた血の洗礼を受けたミナは、伯爵に操られてしまったものの、実はミナも伯爵の心が読めるようになっていました。 これってハリー・ポッターがヴォルテモートから受けた傷が元で、ヴォルテモートの心が読めるようになったのと似ていますね。

He think, too, that as he cut himself off from knowing your mind, there can be no knowledge of him to you. There is where he fail! That terrible baptism of blood which he give you makes you free to go to him in spirit, as you have as yet done in your times of freedom, when the sun rise and set.


果たして男たちはヒロインのミナが完全に吸血鬼になってしまう前に、彼女を助けることができるのか! 現代のミステリー&ファンタジー小説みたいで、想像していたよりも結構面白かったですよ。

Dracula

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The Lottery (Shirley Jackson) - 「くじ」- 207冊目

ジャンル: 小説(ホラー)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

「臓器くじ」の話をご存知でしょうか。 哲学者ジョン・ハリスが示した思考実験です。

1. 公平なくじで健康な人をランダムに一人選んで殺す。
2. その人の臓器を取り出し、臓器移植を必要とする人々に配る。
3. くじに当たった人は死ぬが、代わりに多くの人が救われる。
4. さてこのような行為が倫理的に許されるだろうか。

サンデル教授のトロッコ問題にも似たこの究極の選択の話は 功利主義を人間の肉体にまで当てはめてしまうと不快感の強い結果を示すものの明らかに誤りであると指摘するのは大変困難である、というものです。 主張と反論を含め、結構ヘビーです。 (詳しく知りたい方はウィキペディアを参照ください。)

「くじ」という確率的に平等な手続きを踏めば、どんな結果が出たとしてもそれは正当であり甘んじて受けるべきであると考え、そもそもその結論の正しさについて吟味することも行われなくなる。この仮定の話を聞いて思い出したのが本作「The Lottery 」です。

本作、「後味の悪い本」の話題になった時に、たまたま娘から勧められました。 あっと言う間に読めてしまうとても短い話です。 人口300人程の小さな村。 そこで村人全員がが集まって毎年平等にくじを引く話。不条理。 この話のキモはストーリーそのものなので、詳しくは書けませんが、ごく自然に進められるこのくじの手続きが当然のように生活の一部として違和感なく溶け込んでいて、くじそのものの異常性については誰も指摘しない。得体の知れない居心地の悪さを増幅させます。 淡々とくじの結果を受け入れる、それがたとえ自分の家族の身に起こった事だったとしても… そして、何が起きるのだろうと落ち着かない読者にさし向ける最後の一頁。
(1948年発刊)


メモ
● この一節を読んだ時にはゾッとしました。 未読の方にはここだけ取り出しても分かりにくいと思いますので、ぜひ本文を読んでみてください。

Mr. Dunbar had small stones in both hands, and she said, gasping for breath.
"I can't run at all. You'll have to go ahead and I'll catch up with you."
The children had stones already. And someone gave little Davy Hutchinson few pebbles.

想像するに、怖いのはこれらの村人たちはおそらくみんな笑顔だったのだろうという事。 時に、笑顔は恐怖を増幅させる。


永井豪のマンガに「ススムちゃん、大ショック」ってのがありましたけど、 あんな感じの後味の悪さでした…

The Lottery (Illustrated) (English Edition)

The Lottery (Illustrated) (English Edition)

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Big Bang (Simon Singh) - 「ビッグバン宇宙論」- 206冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

サイモン・シン 科学啓蒙書シリーズ3作目は「Big Bang」です。 本当に彼の著作にはハズレがありません。 天文学の歴史を紐解きつつ、教科書のように単に知識を並べるのではなく、「なぜそうなるのか」について分かりやすく、かつドラマチックに展開してみせる手法は「Fermat’s Last Theorem」(197冊目)、「The Code Book」(199冊目) 同様にキレ味鮮やか、サスガです。 ガリレオが、ハッブルが、アインシュタインが、生身の人間として生き生きと動き回る!
(2004年発刊)


ご存知の通り、天動説はコペルニクスが唱えた地動説によって覆されましが、その地動説でさえ現代科学の視点から見れば完璧なものではありません。 科学の進歩とは仮説検証の歴史そのものであり、完成形というものがあるわけではなく、少なくとも現時点においては最も確からしい、という事が言えるに過ぎません。 新たな事実が発見されるたびにその事象に対して最も辻褄があうような理論が構築されていく、その繰り返しの歴史が本書にも数多くの例として記されています。

全体の展開や雰囲気はちょっとCarl Saganの「Cosmos」(192冊目)に似ていますが、本作の方がドラマチックに描かれており、グッと引き込まれてしまいます。サイモン・シンのこの三部作を超える科学書には(個人的には)今のところ出会っていません。 彼は科学とはカッコいいものだと教えてくれる伝道者そのものですね。

ちなみに、ビッグバンのネーミングですが、このビッグバン理論の反対派であるフレッド・ホイル自身が大ボラ話として名付けたんだそうな。揶揄して付けた名前が市民権を得るなんて驚いたことでしょう。(本人は生涯、ビッグバン理論を認めなかったそうですが…)

Big Bang: The Most Important Scientific Discovery of All Time and Why You Need to Know About It

Big Bang: The Most Important Scientific Discovery of All Time and Why You Need to Know About It

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Shawshank Redemption (Frank Darabont) - 「ショーシャンクの空に」- 205冊目

ジャンル: その他
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

先日は原作の方の「Rita Hayworth and Shawshank Redemptions (刑務所のリタ・ヘイワース) 」(200冊目)を紹介しましたが、今回は映画の方を。 大ファンなので脚本を買ってしまいました。 ティム・ロビンスが主人公アンディ・デュフレーンを演じました。
(2004年発刊)


この映画、名作の誉れ高くご覧になった方も多いかと思います。 敢えて付け足すコメントはありませんが、原作になくて映画のみ出てくる好きなシーンがあります。



● 囚人の身でありながら、執念の「啓蒙活動」により、刑務所内に図書室を作ったアンディ。 寄付として刑務所に送られてきた物品の中にモーツァルトのレコードを見つけます。 放送室に立てこもって鍵をかけ「フィガロの結婚」を大音響で流すシーン。 美しい音楽に長く触れていない囚人たちはしばし立ち止まって、虜囚の身である事を忘れて耳を傾けます。 放送室の外から「ドアを開けろ」と看守がドンドンとドアを叩くのも無視。 それどころか更にボリュームをあげる。 囚われの身なのに囚われていない、このフリーダム。 ホントすごい! 当然、指示を無視した規則違反なので懲罰用の独房に入れられるのですが、連行されるアンディの満足そうな笑顔が忘れられません。
それから原作ではレッドを演じたのは黒人の名優モーガン・フリーマンでしたが、原作のレッドは白人(アイルランド系)で、赤毛だからレッドというあだ名が付いていたかと記憶してます。


● レッドがアンディと再会するために約束の地「ジワタネホ」に向かう海沿いの道を走るバス、そして浜辺でのラストシーン。もう観るしかない!



ちなみにタイトルのレデンプションは、直訳すると「(ションシャンク刑務所での)罪の償い」との意味ですが、レデンプションは会計用語で「償還」の意味もあります。社債の償還、貸した金はキッチリ返してもらうぜ、落とし前はつけてもらうぜ、というダブルミーニングになっているとのこと。

なるほどなるほど。

Shawshank Redemption: The Shooting Script

Shawshank Redemption: The Shooting Script

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The Origin of Species (Charles Darwin) - 「種の起源」- 204冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★★
オススメ度: ★★★☆☆

小さい頃好きだった古いアニメに「メルモちゃん」というのがありました。 手塚治虫先生による名作です。 幼い女の子メルモちゃんが赤色と青色の不思議なキャンディを舐めることで、一気に歳を取りセクシーなお姉さんになったりお婆ちゃんになったり、また赤ん坊になったりするという摩訶不思議なストーリーなんです。 その中でも特にぶっ飛んでいる設定が、摂取するキャンディの配分を変えることで胎児にまで若返り、その後にイヌやネコなどの他の哺乳類に変身するというのがありました。受精卵からエラ付き魚、両生類を経て哺乳類になり、というシーンをよく覚えてます。 「ヒトも受精卵からの状態だと他の生物との共通の要素が多く、そこから他の種に分化(進化)して行くんだな」と驚きながら観ていました。 科学的には随分荒唐無稽な話ですが、これは僕が初めて「進化論」的なものに触れ合った最初の経験でした。
大人になってからDawkinsの「The Selfish Gene (利己的な遺伝子)」を読む機会があり(53冊目)、この本をよく理解するためには原点とも言える「the Origin of Species 」を読まねばならんと考えた次第です。


本書、オリジナルタイトルは「On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life」。 非常に長いです。デカルトの「Discourse on the Method (方法序説)」(122冊目)もそうですが、この長いタイトルというのが、昔は箔付けになってたんでしょうかね。
序論からの展開は科学論文というよりも平易な文章でどちらかと言えばエッセイのような感じがしました。 これが現在の生物進化論の大元となっていると思うと、なかなか感慨深いものがありました。 ただ中盤辺りになると徐々に専門的な内容になってきて、字面を追っていても目がスベるようになってきます。動植物の専門英単語名のオンパレードです。 正直、かなり激しく飛ばし読みしました…Kindleの辞書機能を使っていなかったら、おそらく読み終えられなかったと思います。噛みしめるように精読しなければ意味が取れません。 結果、随分と読了するの時間がかかってしまいました。
(1859年発刊)


メモポイント

● 遺伝子の存在がまだ発見されていない19世紀当時に、生存している生物の現象面のみを観察して、いま一般的に知られている生物の樹形図の原型を推理して創り出したところ、ダーウィンは恐るべき慧眼の持ち主と言えます。
その主張のメインは、「自然淘汰・適者生存」。 一言でいうと、環境に適したものが、たまたま(個体レベルではなく種のレベルで) 生き残るということ。 勘違いしてはいけないのが、キリンは環境に適応しようとして首が伸びたんじゃないということ。 たまたま首が長い種が高い木の葉っぱを食べて生き残りました。 そして生き残った種どうしで交配するとその特質は遺伝として更に残されていきます。 ですので今地球上にいる生物はたまたま環境に適応していて今ここにいるということなのです。それは必ずしも優秀だったり強かったりというわけじゃありません。変化するから生き残れるわけではないのです。 種はそれほど簡単に一代で変化などできません。同グループの交配の中で特徴が少しずつ異なる種ができる(遺伝子のちょっとした組み合わせの違いで) 、それによって気の遠くなるような長い期間を経て適応した種のみが残るということなのでした。 その考えに基づくと、今現在ぼくたちの周りにいるすべての生物は、等しく40億年という長い期間を経て自然淘汰の選択を生き残ってきた仲間でありライバルであると言えます。 単細胞生物といえども今でも存在している生物は環境に適合して生き残ってきた、つまり進化の結果であると言えるのでしょう。

Science has not as yet proved the truth of this belief, whatever the future may reveal. On our theory the continued existence of lowly organisms offers no difficulty; for natural selection, or the survival of the fittest, does not necessarily include progressive development—it only takes advantage of such variations as arise and are beneficial to each creature under its complex relations of life.


● 細かい各種の動植物に関する分析を読んでいると、自然淘汰と退化の違いの一節など現在読んでいても古びていません。 「Frankenstein (フランケンシュタイン) 」(93冊目) を読んだ時も感じましたが、19世紀の文章が現在も違和感なく読むことができるとは文化資源として凄いことだと思います。


● 今でこそダーウィン自然淘汰説は最も正当な生物の進化についての理論であると共通認識されていますが、発刊当時は異端学説の一つとしての扱われていました。コペルニクスガリレオと同様、あまりにも世間に受け入れられ難いその考えを主張し続けたダーウィンの心持ちと情熱、臨場感がこの本には溢れています。 進化論に対する反論をこれでもかこれでもかとロジックで覆そうとしています。 その情熱たるや凄いものがあります。
論文発表後まもない頃、本心では進化論を認めている学者もいたようですが、おおっぴらにはしなかったようです。 後には、みんな認めるようになったと、ダーウィンは少し誇らしげです。

I formerly spoke to very many naturalists on the subject of evolution, and never once met with any sympathetic agreement. It is probable that some did then believe in evolution, but they were either silent or expressed themselves so ambiguously that it was not easy to understand their meaning. Now, things are wholly changed, and almost every naturalist admits the great principle of evolution.


ダーウィン反対派は、自然淘汰説に基づいて考えても有為な種が残る可能性は確率から見て非常に小さいと考えました。 すべての生物を創りたもうたのは神であり、特別な配慮がなければこれほどのバラエティに富んだ種が同時に存在するはずもない、と考えたのです。 当時の一般常識では「自分たちの祖先がサルだった」とは受け入れがたい理論だったのでしょう。(ただしこれは誤解です。 祖先がサルというわけではなくヒトとサルの共通の祖先からそれぞれ進化したということなのですが。) また反対派は次のようにも主張しました。 もし自然淘汰により徐々に進化(変化)を遂げたのであれば、なぜ途中経過の種の化石、つまり中間種が見つからないのか? キリンの首が長くなる進化の過程で中くらいの長さの首を持つキリンの先祖の化石は見つからないのか?

ダーウィンは次のように主張しました。
「化石はもともと特殊な条件でしか残らないので、十分に網羅されていないだけ。 今後はもっと発見されるだろう」
「中間種として種が分かれる時には、個体数が少なく分布エリアも狭いのでそもそも化石として残りにくく自然消滅しやすい」

As according to the theory of natural selection an interminable number of intermediate forms must have existed, linking together all the species in each group by gradations as fine as our existing varieties, it may be asked, Why do we not see these linking forms all around us? Why are not all organic beings blended together in an inextricable chaos? With respect to existing forms, we should remember that we have no right to expect (excepting in rare cases) to discover DIRECTLY connecting links between them, but only between each and some extinct and supplanted form.
(中略)
I have also shown that the intermediate varieties which probably at first existed in the intermediate zones, would be liable to be supplanted by the allied forms on either hand; for the latter, from existing in greater numbers, would generally be modified and improved at a quicker rate than the intermediate varieties, which existed in lesser numbers; so that the intermediate varieties would, in the long run, be supplanted and exterminated.


ちなみに読みにくいところを我慢して最終章、「recapitulate conclusion 」まで行けばグッと読みやすくなります。結論のサマリーになっているので、時間の無い方はここだけでも読んでみれば良いかもしれませんよ。

それから、トリビアをひとつ。 ダーウィン一族の華麗なる血筋なんですが、 磁器で有名なウエッジウッドの創業者は母方のおじいちゃんだそうですね。 そして妻となるエマもウェッジウッド家の出身。 いとこ同士の夫婦でした。

The Origin of Species: Filibooks Classics (Illustrated) (English Edition)

The Origin of Species: Filibooks Classics (Illustrated) (English Edition)

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Getting to Yes (Roger Fisher) - 「ハーバード流交渉術」- 203冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

「交渉力」と言えば、僕にはいつも思い浮かぶ人がいます。 もう十数年も前の話です。 会社でのプロジェクトで複数の企業にまたがる大規模なコンピュータシステムを導入するというプランがあり、僕は自分の所属する会社の意向を伝えるために、そのプロジェクトメンバーの一人として参画したことがありました。その業務を通じて知り合ったある人物なのですが、孫請けの外注ソフトウェア会社から派遣されてきた方で、この人と共にした仕事はまさに目からウロコが落ちるほどのインパクトのある経験でした。

彼は40代半ばぐらいで見かけはそれほど切れ者風でもありません。飄々とした雰囲気をまとった冗談好き、いつもニコニコしている人でした。僕はこっそりと彼のことを「飄々さん」と呼んでいました。 僕たちに与えられたミッションは複数企業にまたがる共有システムの導入でした。 各企業の利益代表として一様に「以前とここが違う、こうしてもらわなければ困る」と、口々に自分の(自社の)意見を主張して譲らない中、飄々さんはいつも静かに頷いて傾聴していました。 やがて紛糾した会議の落とし所が見えなくなり参加者が不安に思い始めた頃、 おもむろに立ち上がってホワイトボードの前に立ち、みんなからの意見を整理して書き始めたのでした。それも無秩序に書くのではなく、pros / consを整理した表形式でまとめながら。 決して自身の主張を押し付けるのではなく、激昂するメンバーの意見に対しても感情的にもならずに淡々と事実を確認しながら根気強く解決策を編み上げていく。その後、これらのステップを何回か繰り返し、最後には当事者同士ではいつまで経っても解決しないだろうと考えていた問題の多くについて、彼が調整役をすることによって少しずつ解決の糸口が見えてきたのでした。 そして合意に至った結論とは、各会社・部門にとってベストとは言えないまでも、譲歩できるレベルまで整理されたベターなものだったのです。 飄々さんのこの鮮やかな手法には感嘆しました。もしこの手法を技術として習得できるものならばこれはスゴい財産になる、そう感じたのです。

今回ご紹介する本作、「Getting to Yes」を読んで思い出したのがこの飄々さんのことです。著者が「交渉術」に肝要と示したポイントを読んで感じたのは、この飄々さんの交渉の進め方が本作のセオリーにとても近かったのです。


読みやすい英文です。 やはり交渉術の本だけあって、相手に理解・納得してもらってナンボなんでしょうから、分かりやすく書かれていると思います。
(ちなみに邦題は「ハーバード流交渉術」。 例によってビジネス書の邦題はホントに頂けませんね。原書タイトルのどこにもハーバードなんて書いてありません。)
(1981年発刊)


メモ
● 良い関係を築く交渉は大事。 だが弱い態度の交渉が良いわけではない。交渉相手がハードポジションであれば、引きずられることになる。

More seriously, pursuing a soft and friendly form of positional bargaining makes you vulnerable to someone who plays a hard game of positional bargaining.


● 交渉に大事な四つのポイント

People:
Separate the people from the problem.
個人である交渉相手と交渉の課題そのものを切り分けること。個人攻撃は絶対にしない。 その場だけ勝ってよしとするのではなく、それ以降も相手と良い関係をキープするのが大事。 交渉は一過性で終わらないことが多いから。

Interests:
Focus on interests, not positions.
表面上の主張ではなく、本当に必要としているポイントを見失わないこと。見た目だけの勝ち負けにはこだわらない。 一つのオレンジを取り合ってケンカしている子供たち。 よくよく聞いてみると、一人は料理に使うのでその皮だけが欲しくて、もう一人は中の身を食べたかった。 どちらも表面上の「オレンジが欲しい」との主張では分からないこともある。

Options:
Invent multiple options looking for mutual gains before deciding what to do.
お互いにメリットがある手法を出来るだけ多く考え出すこと。そのためにはお互いの必要ポイントを正しく理解すること。

Criteria:
Insist that the result be based on some objective standard.
交渉の結果は客観的に見て納得できるような結論であること。 フェアであれ。 立場を利用した強権によるポジショントークは絶対だめ! 上司だからとか、得意先だからとかといって強引に進めると、相手に遺恨を残し後日に悪影響となって現れることが多い。


● 気難しい上司や他部署の人に対して納得しづらい提案のOKを求める場合は、その提案を作りあげる前に彼らをその過程の段階で巻き込んでしまえば良い。苦手な人だからといってなるべく接触を少なくして、案を完成させてから認めてもらおうとしても、最後に話を持っていくと難航するケースが多い。 提案作りに積極的に参加しているとスンナリと合意が取れるものだ。 逆に、たとえ納得できる提案であっても初耳だったりすると、「話を通されていない」とヘソを曲げてしまうのはアルアル。

If you want the other side to accept a disagreeable conclusion, it is crucial that you involve them in the process of reaching that conclusion.
This is precisely what people tend not to do. When you have a difficult issue to handle, your instinct is to leave the hard part until last. “Let’s be sure we have the whole thing worked out before we approach the Commissioner.” The Commissioner, however, is much more likely to agree to a revision of the regulations if he feels that he has had a part in drafting it.


● 謝罪とは最も安価で効果のある交渉術である。

On many occasions an apology can defuse emotions effectively, even when you do not acknowledge personal responsibility for the action or admit an intention to harm. An apology may be one of the least costly and most rewarding investments you can make.


● 公正、効率的、科学的な根拠を示す。ますます主張に説得力が増してくる。

The more you bring standards of fairness, efficiency, or scientific merit to bear on your particular problem, the more likely you are to produce a final package that is wise and fair.


● 交渉において、沈黙は最良の武器の一つである。 相手にやましい点がある場合、一言も発しないのはかなり有効。 もし、こちらから続いて別の質問をすることは、せっかく引っ掛けた釣り針を自ら外すことになる。

Silence is one of your best weapons. Use it. If they have made an unreasonable proposal or an attack you regard as unjustified, the best thing to do may be to sit there and not say a word.


● 重要な決定はその場で決めようとしない。相手に考える時間を与える事。

A good negotiator rarely makes an important decision on the spot. The psychological pressure to be nice and to give in is too great. A little time and distance help disentangle the people from the problem.



この本は「How to Win Friends and Influence People (人を動かす)」(34冊目)に匹敵する、人間の心の動きを理解するための良書だと感じました。 “誰もがみんな「自分はひとかどの人物です。大事に扱ってください」という看板を常に首からぶら下げているようなものだ”、と言ったのはデール・カーネギーでした。みんな自分は重要視されたい、そこを分かっていないと人は動かない、そういう事なんですね。 交渉術の要です。

話は戻ります。 その後くだんのシステムもなんとか導入を終え、プロジェクトは発展的解散となりました。そして最後に一度、僕は飄々さんに飲みに連れていってもらいました。 実のところ、彼にとって僕は顧客会社の一人としての位置付けではあったのでしょうが、接待のような雰囲気はまったくなく、仕事とはあまり関係ないバカ話をしながら、人生の先輩かつ友人として接してくれました。自分も歳を重ねたらこのような感じの人になりたいなあ、とぼんやり考えていたことを覚えています。

その後、システムの保守業務は別の業者に委ねられ、なんとなく飄々さんと会う機会もないまま時が過ぎて今に至ります。 今までいろんな上司や同僚、部下の人たちと接する機会がありましたが、このように鮮やかに思い出させる人はそうはいませんでした。 できることなら、もっとそばにいて彼の仕事の進め方を学びたかったな、今でも活躍されているかな、等と時々思い起こします。

Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving In

Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving In

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Harry Potter and the Philosopher’s Stone (J.K. Rowling) - 「ハリーポッターと賢者の石」- 202冊目

ジャンル: 小説 (ファンタジー)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★★

少し前の話ですが、AIにハリー・ポッターシリーズを読み込ませて、J.K.ローリングの筆致を真似した短いお話を作らせたというニュースが話題になりました。その名も「Harry Potter and the Portrait of What Looked Like a Large Pile of Ash (ハリー・ポッターと山盛りの灰のように見えるものの肖像)」 なんか、ありえんタイトルです。
そのストーリーも無茶苦茶で、ロンがハーマイオニーの家族を食べたり、ハリーが自分の目をえぐり出して森に投げつけたり…ほとんどホラー小説ですね。 ローリングの作品をこのAIに大量に記憶させて使用頻度の高い文章パターンを組み合わせ、予測変換させて導き出したそうです。 で、その英文を少し読んでみたんですが、たしかにシュールな内容ではありましたが文章自体は意外にこなれた英文に見えましたよ。 興味ある方は「AI、ハリー・ポッター」でググッてみて下さい。



さて、今日は超有名作品「Harry Potter and the Philosopher's Stone (ハリー・ポッターと賢者の石)」の抜書メモです。(US版では賢者の部分がPhilosopherではなくSorcererと改題されています。 フイロソファーだと「哲学者」のようなイメージになってしまうからでしょうかね。)

読んだのは随分と前のことで、子供たちが小さい頃には映画も観に行きました。DVDも持ってます。 今よりももっと読解力が低かった頃にこの本を手にしたのですが、始めからワクワクしっぱなしで、一気に読み通したことを覚えています。 同じファンタジー物でも最近読んだTolkienの「The Hobitt」(191冊目)は単調に感じてしまって読み進めるのがちょっとシンドかったのですが、ハリー・ポッターはストーリーがとにかく面白い。 心に残る名シーンがてんこ盛りです。 特にダンブルドア校長のセリフには魅せられます。
(1997年発刊)


メモポイント

ホグワーツにて。満面の笑みで新入生を歓迎するダンブルドア校長。 楽しい宴の前に校長からの訓話があります。
「ようこそ、ホグワーツへ。 それでは宴の前に一言、二言、歓迎の言葉を述べさせて頂きたい。それは「一言、二言!」 以上、終わり!」
生徒たちの大拍手。

Albus Dumbledore had gotten to his feet. He was beaming at the students, his arms opened wide, as if nothing could have pleased him more than to see them all there.
"Welcome!" he said. "Welcome to a new year at Hogwarts! Before we begin our banquet, I would like to say a few words. And here they are: Nitwit! Blubber! Oddment! Tweak!"
"Thank you!"
He sat back down. Everybody clapped and cheered. Harry didn't know whether to laugh or not.
さすが、ダンブルドア! こんな時に長話は無用。少年少女たちの気持ちをよーく分かってらっしゃる。


● ハリーのクラス分けシーン。
「スリザリンは嫌、スリザリンは嫌」
「うん、スリザリンは嫌か? せっかく偉大に慣れる素質があるというのに…そうじゃな…それではむしろ、グリフィンドール!!」 ”組み分け帽”が高々と叫ぶ。

“Hmm,” said a small voice in his ear. “Difficult. Very difficult. Plenty of courage, I see. Not a bad mind either. There’s talent, oh my goodness, yes — and a nice thirst to prove yourself, now that’s interesting. . . . So where shall I put you?”
Harry gripped the edges of the stool and thought, Not Slytherin, not Slytherin.
“Not Slytherin, eh?” said the small voice. “Are you sure? You could be great, you know, it’s all here in your head, and Slytherin will help you on the way to greatness, no doubt about that — no? Well, if you’re sure — better be GRYFFINDOR!”


● 「ヴォルデモートと呼びなさい、ハリー。 ものを呼ぶには適切な名前を使うことを心がけるんだよ。 名前を恐れているとそのもの自身に対する恐れも大きくなるからね。」とダンブルドア

Call him Voldemort, Harry. Always use the proper name for things. Fear of a name increases fear of the thing itself.’

始めに言葉ありき。言葉が思考を定義する。


● 「Mirror of Erised」の切ないシーン。 それは真実では無かったとしても見る者が望んだ通りの姿を映し出してくれる魔法の鏡。 ハリーが鏡の中に見たものとは、幼い頃に亡くなった両親がハリーを愛情込めて抱いている姿だった。 しかし、その鏡は見る者に知識も真実も伝えるものではない。 心の隙間にある「こうありたい」との欲望をそのままに映し出すただの幻影。 麻薬のように人の心を蝕んでいく。
(Erised はdesireの逆さ文字。 翻訳では「のぞみ」を逆さにして「みぞの」鏡となっていました)

“Can you think what the Mirror of Erised shows us all?" Harry shook his head.
"Let me explain. The happiest man on earth would be able to use the Mirror of Erised like a normal mirror, that is, he would look into it and see himself exactly as he is. Does that help."
Harry thought. Then he said slowly, "It shows us what we want... whatever we want..."
"Yes and no," said Dumbledore quietly.
"It shows us nothing more or less than the deepest, most desperate desire of our hearts. You, who have never known your family, see them standing around you. Ronald Weasley, who has always been overshadowed by his brothers, sees himself standing alone, the best of all of them. However, this mirror will give us neither knowledge or truth. Men have wasted away before it, entranced by what they have seen, or been driven mad, not knowing if what it shows is real or even possible.


● ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ホグワーツ教授陣が賢者の石を守るために巡らせた鉄壁の魔法の守りに立ち向かう。 圧巻なのはその守りの一つ、生身の身体で闘う巨大チェスのシーン。 相手のキングをチェックメイトしないとそこから先には進めない。 ここでチェスが得意なロンが活躍、男気を見せる。 自分を犠牲にしてでも、ホグワーツを救うためにハリーに先を急がせるロン。

「もう少しで終わるよ」急にロンが呟いた。
「ちょっと待って… えーっと」
クイーンが真っ白な顔をロンに向けた。
「うん、やっぱりそうだ…」ロンが穏やかに言った。「これしかない。 ぼくが取られるしかないんだ。」
「駄目!!」とハリーとハーマイオニーが叫んだ。
「これがチェスなんだ!」とロンはぴしゃりと言った。 「犠牲を払わなくちゃいけないんだ! ぼくがコマを進める。 するとクイーンがぼくを取る。 ハリー、そうすると君が自由に動けるようになるから、キングにチェックメイトをかけるんだ!」

‘We're nearly there,’ he muttered suddenly.
‘Let me think - let me think …’
The white queen turned her blank face towards him.
‘Yes …’ said Ron softly, ‘it's the only way … I've got to be taken.’
‘NO!’ Harry and Hermione shouted.
‘That's chess!’ snapped Ron.
‘You've got to make some sacrifices!
 I'll make my move and she'll take me - that leaves you free to checkmate the king, Harry!’


● ヴォルデモートとの闘いを終えたハリー。見舞いに来てくれたダンブルドア校長。
「どうしてクィレルは、ぼくに触れることができなかったんですか」
「君のお母さんは命をかけて君を守ったんだよ。 もしヴォルデモートに理解できない事があるとすればそれは愛だ。その愛の印を君に残していくほど、お母さんの愛情が強いものだったことに彼は気づかなかったのだよ。」

“Your mother died to save you. If there is one thing Voldemort cannot understand, it is love. He didn't realise that love as powerful as your mother's for you leaves its own mark. Not a scar, no visible sign...to have been loved so deeply, even though the person who loved us is gone, will give us some protection for ever.’


● 最後のシーン。
「勇気にもいろいろある」と、微笑みながらダンブルドア。「敵に立ち向かうのには大変勇気がいる。しかし正しいと信じることのために、友に立ち向かうのにも同じくらい勇気がいるものだ。したがってネビル・ロングボトムに10点を与えよう」

‘There are all kinds of courage,’ said Dumbledore, smiling.’ It takes a great deal of bravery to stand up to our enemies, but just as much to stand up to our friends. I therefore award ten points to Mr. Neville Longbottom.’



そしてダンブルドアと言えばコレ!
“Alas! Earwax!”  なんと! 耳くそ味じゃ!!
(ここは故・永井一郎さんの声で。)


Harry Potter and the Philosopher's Stone

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