hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

Anne of Avonlea (L.M. Montgomery) - 「アンの青春」- 133冊目

ジャンル:小説(児童)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

アンブックスの第二巻。 一巻の頃の快活さを持ちつつも、少し大人になったアンに出会えます。
弱冠16歳にして地元の小学校の先生の経験を経て、名門大学への進学を目指すアン。 大好きだったマシューおじさん亡き後、マリラおばさんの心の支えとなるアン。 マリラも随分歳をとって丸くなった。 本当の母と娘のよう。 今回も魅力たっぷりな人々との出会いがいっぱいです。(1909年発刊)


メモポイント (ネタバレ注意)

● 男女双子の孤児ディビーとドーラを引き取ったマリラとアン。 アンとのしばらくの別れの際に、ドーラが上品に一粒だけ涙を流すシーン。 これってアルアル。 小さな頃からシッカリしているこんな女の子いますよね。 それにしても作者のモンゴメリーは、腕白いたずらっ子ディビーと比べて、良い子ちゃんでおとなしいドーラを少し厳しく描き過ぎじゃないかな。 アンの親友ダイアナもそうだけど、平凡だけど良い子だなとおもうんですけどね。


● アンは「腹心の友」のダイアナに語る。 アボンリーに初めてきた頃、知り合いが誰もおらず愛情に飢えていた幼いアンにとって、ダイアナの存在はいかに支えになったことか。 永遠の友となる誓いをたてた二人。 想像力など足りなくても構わない。 かけがえのない友。

“Dear old Jane is a jewel,” agreed Anne, “but,” she added, leaning forward to bestow a tender pat on the plump, dimpled little hand hanging over her pillow, “there’s nobody like my own Diana after all. Do you remember that evening we first met, Diana, and ‘swore’ eternal friendship in your garden? We’ve kept that ‘oath,’ I think…we’ve never had a quarrel nor even a coolness. I shall never forget the thrill that went over me the day you told me you loved me. I had had such a lonely, starved heart all through my childhood. I’m just beginning to realize how starved and lonely it really was. Nobody cared anything for me or wanted to be bothered with me. I should have been miserable if it hadn’t been for that strange little dreamlife of mine, wherein I imagined all the friends and love I craved. But when I came to Green Gables everything was changed. And then I met you. You don’t know what your friendship meant to me. I want to thank you here and now, dear, for the warm and true affection you’ve always given me.”
“And always, always will,” sobbed Diana. “I shall never love anybody…any girl…half as well as I love you. And if I ever do marry and have a little girl of my own I’m going to name her Anne.”


● お互いに惹かれ合う気持ちがあるのに、なかなか進まないアンとギルバートの関係。 本当にヤキモキさせられます。 そしてラストシーン… とても美しい描写です。

相思相愛でありながら少しの誤解によりずっと仲違いしていたミス・ラベンダーとアーヴィング氏が数十年の月日を経てやっと一緒に歩き始める。 それを指して「なんてロマンチックなんでしょう」と夢見がちにアンは語る。 それを受けてギルバート、「確かに素敵だ。でもね、最初から仲違いなどせずに一緒に手をたずさえて共に歩けていた方がどんなに素晴らしかっただろうと僕は思うよ」 幼い頃にアンの赤毛をからかったギルバート。 これが元でずっと意地を張り合っていた自分たちに重ね合わせて語る。ギルバートから向けられる愛おしむような眼差しを見て、アンは自らの気持ちに改めて気づく。 「ロマンスとは燃えさかる情熱的なものではなく、気がつけばずっと寄り添って歩いてきた昔からの友人のようにそっと訪れるものかもしれない」 その瞬間からまわりの景色は昨日までとは違って見えてくる。 アンの心のページは少女から一人の大人の女性へとめくられた。

“Of Miss Lavendar and Mr. Irving,” answered Anne dreamily. “Isn’t it beautiful to think how everything has turned out…how they have come together again after all the years of separation and misunderstanding?”
“Yes, it’s beautiful,” said Gilbert, looking steadily down into Anne’s uplifted face, “but wouldn’t it have been more beautiful still, Anne, if there had been no separation or misunderstanding…if they had come hand in hand all the way through life, with no memories behind them but those which belonged to each other?”
For a moment Anne’s heart fluttered queerly and for the first time her eyes faltered under Gilbert’s gaze and a rosy flush stained the paleness of her face. It was as if a veil that had hung before her inner consciousness had been lifted, giving to her view a revelation of unsuspected feelings and realities.

Perhaps, after all, romance did not come into one’s life with pomp and blare, like a gay knight riding down; perhaps it crept to one’s side like an old friend through quiet ways; perhaps it revealed itself in seeming prose, until some sudden shaft of illumination flung athwart its pages betrayed the rhythm and the music, perhaps…perhaps…love unfolded naturally out of a beautiful friendship, as a golden-hearted rose slipping from its green sheath.

Then the veil dropped again; but the Anne who walked up the dark lane was not quite the same Anne who had driven gaily down it the evening before. The page of girlhood had been turned, as by an unseen finger, and the page of womanhood was before her with all its charm and mystery, its pain and gladness.

二人の仲はやっと次のステージに進もうとしています。 ギルバートはアンの気持ちを大事にして焦らずに待とうと努めます。(Gilbert wisely said nothing more)
そして、次巻に続く。

図書館戦争」の郁と堂上教官も顔負け。ロマンチックが止まらない。

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Blink (Malcolm Gladwell) - 「第1感 - 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」- 132冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

マルコム・グラッドウェルの科学読本の一つ。 これはどんどん続きが読みたくなってしまうタイプの面白本。 オススメです。 最初の一瞬で得られる情報量をナメてはいけない! 手間暇かけてやっと導き出した結論よりも、一目見てフッと出した判断の方が正確な場合がある。そんな興味深いエピソードがたくさん紹介されています。 邦題では「最初の2秒」と表現したようですが、具体的な数字を使って印象づけるなんてうまいですね。 (原題「blink」は、まばたき、一瞬の意) (2005年発刊)
ただ注文をつけるとすれば、データ検証の点についてはもう少しページを割いて掘り下げた方がよいかなと感じました。
このジャンルに興味があり、もう少し掘り下げて読みたい方には、 Daniel Kahnemanの「Thinking, Fast and Slow」の方をオススメします。(72冊目に感想書きました)。 この中で説明されている「システム1」の項と結びつきます。



メモポイント
● アメリカの美術館があるギリシャ彫刻を購入した。 科学的鑑定検査を通じてこの彫刻はホンモノであるとのお墨付きがついたものだ。 しかし芸術品に触れるキャリアの長い学芸員たちは一目見て(つまり最初の2秒で)「なんか変」と感じた。 それが何かははっきり表現できないが、とにかく違和感があるというのだ。 果たしてその彫刻は贋作であることが分かった。 無意識下での認知力のスゴさ。

There can be as much value in the brink of an eye as in months of rational analysis.


● 「ひらめき」とは、無意識下で膨大な計算を行なった後に、結論部分のみが意識の上にヒョイと出てくるようなもの。 ただその結論に達した過程を意識的にはトレースできないので、理論立て説明することが難しい。

Did they know why they knew? Not at all. But the Knew!


● 瞬間で目に入る情報量の多さに驚き。 ただそれだけに見た目の情報を過大に信頼してしまうバイアスも大きくなってしまう。 「人は見た目で」とはよく言ったもんですね。 無意識下でくだした判断が必ずしも正しいとは限らないのが悩ましいところ。

In the general American population, 3.9 percent of adult men are six foot or taller. Among my CEO sample, almost a third were six foot two or taller.


● これも「見た目」が…

Testers for 7-Up consistently found consumers would report more lemon flavor in their product if they added 15% more yellow coloring to the package.


● そりゃそうだ。 パッケージをひっくるめての「味のうち」

The entire principle of a blind taste test was ridiculous. They shouldn't have cared so much that they were losing blind taste tests with old Coke, and we shouldn't at all be surprised that Pepsi's dominance in blind taste tests never translated to much in the real world. Why not? Because in the real world, no one ever drinks Coca-Cola blind.


● 多くの夫婦を対象にした調査。 この二人の会話を聞いてみると15年後に離婚するかどうかについて驚くほど正確に予測できるらしい。 どちらかがもう一方に対して軽んじる雰囲気を持っているかどうかで判断できるんだそうな。 パートナーに軽んじられることは大きなストレスと免疫力の低下を引き起こし、どれぐらいの頻度で風邪を引くのかまで分かってしまうそうだ。

Gottman has found, in fact, that the presence of contempt in a marriage can even predict such things as how many colds a husband or a wife gets; in other words, having someone you love express contempt toward you is so stressful that it begins to affect the functioning of your immune system. (中略) the simplest way that respect is communicated is through tone of voice.

「Outliers」や「Tipping Point」など、このマルコム・グラッドウェルの本はどれも面白くオススメです。 特に「Outliers」はイチオシですね。 有名な「一万時間のトレーニングと天才との関係性」の話が書かれています。 また後日に、感想を書きたいと思います。

Blink: The Power of Thinking Without Thinking

Blink: The Power of Thinking Without Thinking

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Do Androids Dream of Electric Sheep? (Philip K. Dick) - 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 - 131冊目

ジャンル: 小説(SF)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

「電気羊」はSF界の金字塔。 文体は思いのほか平易で読みやすく、ストーリーもそれほど難解ではありません。 ヒトの感情をコントロールする機械が出てくるなんて、星新一ショートショートに出てきそうなお膳立てです。 映画「ブレードランナー」の原作にもなりました。

舞台は第三次世界大戦後の廃墟感ただよう近未来のサンフランシスコ(それでも1992年との設定ですが)。 人間社会に紛れ込んだ逃亡アンドロイド達を見つけてリタイア(殺す)させ懸賞金を稼ぐのが、警官兼アンドロイドハンターのリック・デッカードの仕事。 誰が人間で誰がアンドロイドなのか。 中盤からのアンドロイド達との攻防戦の辺りから、グッと面白くなりページが進みます。(1968年発刊)


メモポイント (一部ネタバレ注意)

● この近未来社会では自然界が壊滅状態なため、生きた動物を所有することがステイタス。 まがい物の「電気羊」ではなく本物の動物を飼いたいとリックは考える。所有欲とはそれそのものが必要ということではなく、所有できたという事実を周りに知らしめたいという点にあるのがよく分かる。 リックがペットショップで新しく飼いたい動物を物色しながら交わすセールスマンとの会話は、まさに高級車を買おうとする顧客のカーディーラーでのシーンのよう。

‘Sir, if you have a down payment of three thou, I can make you owner of something a lot better than a pair of rabbits. What about a goat?’ ‘I haven’t thought much about goats,’ Rick said. ‘May I ask if this represents a new price bracket for you?’ ‘Well, I don’t usually carry around three thou,’ Rick conceded. ‘I thought as much, sir, when you mentioned rabbits. The thing about rabbits, sir, is that everybody has one. I’d like to see you step up to the goat-class where I feel you belong. Frankly you look more like a goat man to me.’


● ターゲットとなるアンドロイドを、ウソ発見器によって見つけ出す。 人間であれば共感したり赤面したりするような質問を投げかけて、その生理反応を機械で調べるというものだ。 しかし最新型人工知能であるネクサスを搭載したアンドロイドは、殆ど人間と同等レベルで感情の揺れさえも持つ。 また一方、人間の方でも気分を外部刺激で人工的にコントロールできる装置を使っている。 両者を区分する一番大事な「感情の揺れ」というこの点においてもその境界線は曖昧だ。 登場するアンドロイドは、よくあるロボットのイメージではなく骨髄検査を行わないと人間との違いがわからないレベル。 それは機械というよりもむしろ人造人間であり、感覚的には殆ど人間だ。リックにとって、人間とアンドロイドの違いがどんどん曖昧になり、やがてある女性型アンドロイドとの間に恋愛感情まで芽生えてくる。

‘If you weren’t an android,’ Rick interrupted, ‘if I could legally marry you, I would.’
Rachael said, ‘Or we could live in sin, except that I’m not alive.’
‘Legally you’re not. But really you are. Biologically. You’re not made out of transistorized circuits like a false animal; you’re an organic entity.’ And in two years, he thought, you’ll wear out and die. Because we never solved the problem of cell replacement, as you pointed out. So I guess it doesn’t matter anyhow.
This is my end, he said to himself. As a bounty hunter. After the Batys there won’t be any more. Not after this, tonight.
‘You look so sad,’ Rachael said. Putting his hand out he touched her cheek.
‘You’re not going to be able to hunt androids any longer,’ she said calmly. ‘So don’t look sad. Please.’


著者はアンドロイドと人間という関係性を通じて、アメリカ社会の移民たちの苦悩(例えば白人とエスニックとの葛藤)を表現しているように感じました。 自分たちの主観で「異質」と思われるものを排除しようとする本能。 そこには、「敵」と見なしている彼らも自分たちと同じように喜怒哀楽の感情を持った存在なのではではないか、との想像力が欠けていると主張しているようです。 トランプさんが超大国のリーダーシップを取るこの時代に、オーウェル1984」(82冊目にて紹介)と並んで多くの人に訴えかける作品ではないでしょうか。

ちなみに、アンドロイドスマホの機種で「ネクサス」ってありますよね。 開発者は、きっと「電気羊」のファンなのでしょう。

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Intelligence and the Brain: Solving the Mystery of Why People Differ in IQ and How a Child Can Be a Genius (Dennis Garlick) - 130冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★★☆

知性と脳の働きについて手当たり次第に読んでいた頃に出会った本の一つ。 かなり読みやすいです。 こういった科学読本系の中で、難しい専門用語が使われずシロウトにも読みやすいものがたまにあるのはありがたいことです。 (2010年発刊)

最初から最後まで「抽象化」(abstraction)について強調している本。 「知能が高い」とはこの抽象化能力が優れているということと著者は述べています。 個別の手続きを身につけても効率が悪いので、多くのケースを通じて「共通項の原理」を見つけることで、もっと汎用性の高い抽象化能力を身につけようということでしょうかね。
この本を読んでいてボルヘスの伝奇集(125冊目に感想)にある「Funes the Memorious」の話を思い出しました。 青年フネスは驚異的な記憶力の持ち主ですが知性はそれほど高くない人物として描かれています。 つまり個々の事例は写真のように記憶できるけれど、共通項をまとめあげて汎用化する抽象化能力が欠けていたということなのでしょう。


メモポイント
● 抽象的なものを理解するには知性を必要とする。 マニュアルなど具体的な方法を理解するには、さほど知性を要しない。

To put it simply, something becomes more difficult to understand the more “abstract” it is. Both children and adults can very easily understand concrete concepts such as an instruction to eat an apple or to kick a ball. On the other hand, if an instruction involves a more abstract meaning, understanding is much more of a challenge.
Indeed, a well-known survey of 661 intelligence researchers found that 99.3% of respondents believed that “abstract thinking or reasoning” was central to intelligence, more than any other characteristic.


● 情報をハイスピードで処理できるからといって、必ずしも高い知性を持つとは限らない。

even more problematic is that speed of information processing does not explain intelligence. (中略) This suggests that faster speed of information processing is not a sufficient explanation in itself for the superior ability to perceive or understand abstractions.


● ヒトの脳は、具体的な情報の大量インプットを通じて各ケースの共通点を拾いだそうとする。 そしてこのプロセスを通して、汎用性のある考え(抽象的概念)が少しずつ蒸留される。 と同時に、共通点の少ない「例外的な案件」情報はゴミ情報として捨てられる(捨象)される。 このようにして身についたシンプルな共通点ポイント(抽象的概念)は、まったく新たなケースに出くわした場合でも、中に隠された共通項を探し出して問題を理解する手がかりとなるのだ。 人工知能における機械学習の話しみたい。


● 知性が抽象的な概念を理解する能力のことを指すのであれば、それは大量の情報のインプットを通じてのみ得られる。 だからこそ、大量の情報に触れられるような環境の有無がポイントとなる。

exposure to schooling is what leads to the development of the ability to understand many abstractions. Natives from other cultures who are not given formalized education cannot understand these same abstractions, even though many adults exposed to a formalized education take them for granted. (中略)
So, again, the ability to understand abstractions is dependent on the environment.

● 抽象的概念が理解できるのは、たくさんの脳の神経細胞が相互に手を繋いで連結されている(ニューラルコネクション)状態にあるからということ。 この連結を形成するには時間がかかる。 しかしある意味、時間さえかけて連結状態を多く作れば、脳の能力には限界がないということにもなる。

Despite this, as is shown in Figure 7, even children with relatively low intelligence do eventually develop the required neural connections for many abstractions. This indicates that the development of the ability to understand abstractions is due to some shaping mechanism. If a child has difficulty understanding a particular abstraction initially, the neural connections will keep on changing until they can eventually understand the abstraction—it just takes them longer. So, there is no fundamental limitation in the brain that places a ceiling on the performance of someone with a lower IQ.


結構、興味深く読めましたが、他にはあまり著作がないようで、脳科学分野における著者の位置付けがよく分かりません。 学会において一般に受け入れられている方なのでしょうかね。

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Postmortem (Patricia Cornwell) - 「検屍官」- 129冊目

ジャンル: 小説(推理)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

痛そうな描写が苦手です。 家の中をバタバタと走っていて小指をタンスのカドにぶつけるとか、カミソリの背と腹を間違えて指でスーッとやるとか…
少し話は逸れますが、前にサルバドール・ダリ展を観に行った時のこと。 展示室の一角にダリが製作した映画がエンドレスで映写されていて、ふと暗幕をめくって覗いたところ、ちょうど眼球をスッとナイフ?で切るシーンに出くわしてしまいました。 「アンダルシアの犬」とかいう有名な小品だそうです。 痛そうで背中の辺りがチリチリとして、まいりました。 この手の「痛そう」小説はなるべく避けていたのですが、なんでこの本を選んでしまったんだろう… 本作も「痛そう」レベルがマックスです。 一人暮らしの女性が夜に読むのはオススメできないかも。
被害者を残虐な手口で辱めた上で絞殺する猟奇的連続殺人事件がリッチモンドで発生、検屍官として立ち会った美人医ケイ・スカーペッタは犯人の特定に全力を上げるが、やがて彼女にも恐怖の手が忍び寄る…(1990年発刊)


メモポイント (ネタバレ注意)

● くたびれた感満載の中年、マリノ警部がケイに対して彼の推理を披露するのだが、いい線いってる。 この手の役回りはレストレード警部のようにホームズの引き立て担当として登場するものと思っていたが、なかなかの推理力。 ケイがマリノ警部の推理を認めたくない心理描写がずっと続くが、それは理屈ではなく彼が傲岸な白人男性だから嫌っている、認めたくないというように見える。 ケイが少し頑な過ぎるようで、読んでいて感情移入が難しい。 (シリーズが進むにつれて意外な展開になるそうですがそれはもっと後の話)


● ケイの姪っ子ルーシーがITの天才ぶりを発揮するところがワクワクして面白い。コンピュータを学びたくなる 。 「ジュラシック・パーク」の少女レックスを思い出す。原作じゃなくて映画の方。もしくはコニー・ウィリス「航路」(41冊目で紹介)のメイジーって感じ。 )

文章が簡潔で洗練されてかなり読みやすいと思います。 後半の犯人が迫り来るシーンの盛り上がりといったらさすがベストセラーですね。 ただ、惜しむらくはラストの展開。 「えっ」というか、「こんなんかーい!」っていうか… いずれにしても、姪っ子のルーシーのキャラクターが立っているので一度、手にして見ては。 本作が気に入った方には「ボーン・コレクター」(2冊目で紹介)もオススメです。

Postmortem(Scarpetta 1)

Postmortem(Scarpetta 1)

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Dave Barry's Bad Habits a 100% Fact-Free Book (Dave Barry) - 128冊目

ジャンル: その他
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆

落語が好きです。 特に全盛期の笑福亭仁鶴桂枝雀など上方落語が特に好みですねー。 まだ朝丸と名乗っていた頃の桂ざこばの「阿弥陀ヶ池」っていうネタがあるんですが、これが面白いんですよ。 オススメです。 伝統芸能、芸術風の粋な落語よりもバカバカしくて思いっきり笑えるネタが好みです。
で、洋の東西を問わず、笑える本が好きなのですが、アメリカ人のユーモアはどうだろうといくつか手にして見ました。著者の デイブ・バリーはあちらでは有名なユーモア・コラムニストだそうですね。 好みは分かれるところでしょう。 読みやすくて息ぬきにはいいでしょうが、ちょっとユーモアの質が日本とは異なるかも…(1993年発刊)
ペーソスのあるネタもありますが、日本で言えばぼくの尊敬する天才話芸師の故・小沢昭一さんの笑いの後にせつなさが透けて見える芸にはかないません。 もう少し他の本もいくつか試してみたいと思います。

というわけで「明日は他の本も試してみるぞぉ、のココロだ〜」(♫)

Dave Barry's Bad Habits: A 100% Fact Free Book (Beeler Large Print Series)

Dave Barry's Bad Habits: A 100% Fact Free Book (Beeler Large Print Series)

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Mastering the Art of War (Zhuge Liang) - 127冊目

ジャンル: 古典
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

中国の人名の英語表記って、パッと見て誰のことだか分からないですよね。 「Sun Tzu 」が孫子だとか…
さて、 ここで問題です。 この兵法書孫子」の解説書を著した「Zhuge Liang」って誰でしょう? 有名な人ですよ。
ヒント、あざなは「Kongming」です。


答え: 「諸葛亮 (またの名を諸葛孔明)」でした。

三国時代の天才軍師とうたわれた諸葛亮による兵法書で、「The Art of War」孫子(15冊目に感想)の解説書です。 ぼくは三国志演義(正確には吉川英治による「三国志」)に出てくるこの丞相の大ファンで、この吉川作品にはずいぶんフィクションの要素が入っているとは分かってはいるのですが、このスーパー参謀ぶりに憧れの想いがやみません。(この辺り、司馬遼太郎の「竜馬」と坂本龍馬がまったく同じであると考えてしまうのに似てますね) ついには諸葛亮自身による戦略解説書を読むまでになりました。

実際の諸葛亮は「赤壁の戦い」にあるような奇策を用いた天才軍師というよりも、常識と規範を重んじ民からも畏敬を受けた有能な政治家だったようです。 本作もリーダーシップ論、組織論について多く書かれています。

この本を読んで、名作「竜馬がゆく」の中で「奇策」に対する竜馬の(というか司馬遼太郎氏の)考え方が書かれていたのを思い出しました。 奇策家として知られる北辰一刀流の同門の先輩、清川八郎の人物について、竜馬に次のように語らせています。

「(清川について) 奇策を用いすぎた。 竜馬の考えでは、奇策とは百に一つも用うべきでない。 九十九まで正攻法で押し、あとの一つで奇策を用いれば、みごとに効く。 奇策とはそういう種類のものである。 真の奇策縦横の士とはそういう男をいうのだ。」

これは説得力ある真っ当な考えですよね。 本物の諸葛亮が「鬼神や天候をも操る」奇策家でなかったとしても、彼への憧れの想いは少しも変わりません。

Mastering the Art of War (Shambhala Library)

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