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hearthのお気楽洋書多読ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (Twitter: @hearth2016)

1984 (George Orwell) - 「一九八四年」- 82冊目

ジャンル: 小説(SF)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

   何年か前にアマゾンがKindleで販売した(正確には読書する権利を与えられたという事か)電子書籍を本人に断る事なく勝手に回収して読めなくしてしまい大騒ぎになった事件があった。   たまたまその版に著作権上の問題があったからだったそうで、後でアマゾンは平謝り、すぐに元に戻したというが、皮肉にもその回収したタイトルがこの「1984」。 過去の記録を抹消するシーンを彷彿とさせて、小説に出てくる「Big Brother 」とアマゾンとを重ね合わせた人も当時は多く、シャレにならないとの声もあった。

    ジョージ・オーウェルによって今から70年程前に書かれた近未来のイギリスを舞台にしたディストピア小説。   そこには理想を追い求めるがあまり異常な狂気の空間となった行き過ぎた管理・監視社会が描かれている。    この本ではBig Brother(モデルはスターリンらしい) がこの世界の統治者とされているが、実体ある生身の人間として具体的に描写されているわけではない。僕が感じたのは、この本の真の主人公とは、作り出した体制側の人たちにとっても既に制御不可能になった状態の「組織」そのものなんじゃないかな、ということ。  この「組織」はまるでそれ自身が一つの生物の様に自己存続・自己増殖を目的としはじめる。 いったんそうなってしまうと、その組織の独裁者と目される人間自身にもおそらく変えられない。 北朝鮮やカルト新興宗教もそうかも。  (1949年発刊)


メモポイント(ネタバレ注意!)

●   Big brother 達が革命を起こし理想社会を目指していた(それが仮に建前だったとしても)始めの頃には他にも複数の同志がいたようだが、数十年の間にその仲間たちは異端者として粛清され、今はBig Brother しか残っていない。  Big Brotherは女王蜂、国民は働きバチ。 女王蜂を崇めることが組織を存続させる事につながる。

● 狂信的全体主義の組織に見られる幾つかの特徴をリアルに描いている。 

 * 一つには欠乏品、粗悪品に対して正反対の意味を持つ名前を付ける事。 矛盾をはらんでいてもそれを受け容れる様に仕向けるDoublethink。

  * Victory gin, victory cigarettes, victory mansion ってあまりにもバカバカしいネーミングセンスだが洗脳はこのあたりから既に始まっている。

 * 変節者に対するTwo Minutes Hate。 元指導者側にいて今は反政府側になった者を変節者としてみんなで毎日2分間一斉に憎む儀式が決められている。組織から抜け出した者を異常なまでの執拗さで攻撃する。

   * 子供達に対する洗脳教育。  自分の両親でさえ思想犯と決めつけて大人狩りをするシーン。 映画「サウンド・オブ・ミュージック」で長女と恋人となる純真な男の子がいつしかヒットラーユーゲントとなり、反ナチス狩りをするシーンを思い出した。

● 抑圧下でのジュリアの精一杯のおしゃれ。せつなく可愛い。 その愛が永遠に続くものではないにしても。  

   ‘You can turn round now,’ said Julia. He turned round, and for a second almost failed to recognize her. What he had actually expected was to see her naked. But she was not naked. The transformation that had happened was much more surprising than that. 
    She had painted her face. She must have slipped into some shop in the proletarian quarters and bought herself a complete set of make-up materials. Her lips were deeply reddened, her cheeks rouged, her nose powdered; there was even a touch of something under the eyes to make them brighter. It was not very skilfully done, but Winston’s standards in such matters were not high. He had never before seen or imagined a woman of the Party with cosmetics on her face. The improvement in her appearance was startling.

● 思想警察に捉えられる。そこで尋問中に投げつけられた言葉。権力を持ちたいから持つ。拷問したいからする。 そこに正義のためとか革命のためとかのもっともらしい理由はない。殺したいから殺す。 それこそが狂気。 何をしでかすか分からない他人の理由のない行動が一番恐ろしい。 しかもそれは個人ではなく組織が持つ終わる事なき狂気である。

    The German Nazis and the Russian Communists came very close to us in their methods, but they never had the courage to recognize their own motives. They pretended, perhaps they even believed, that they had seized power unwillingly and for a limited time, and that just round the corner there lay a paradise where human beings would be free and equal. We are not like that. We know that no one ever seizes power with the intention of relinquishing it. Power is not a means, it is an end. One does not establish a dictatorship in order to safeguard a revolution; one makes the revolution in order to establish the dictatorship. The object of persecution is persecution. The object of torture is torture. The object of power is power. Now do you begin to understand me?’


  名作と言われる本には名物みたいに有名だけどがっかりというのと、なぜ今まで読んでなかったのかと後悔するほど面白かったのとの二通りある。これは間違いなく後者。  本作のラストにnewspeak (この管理社会が採用した極限まで簡略化された新言語) の解説といった体で後日談が書かれている。これも含めての1984!   オーウェルが周到に編み込んだプロットに僅かな希望を感じた。  ホラー小説、しかし実はせつない恋愛小説としても文句なしの目ウロコ本です。

神林しおり曰く「これ読め!」(黒い表紙だ!)

1984 (English Edition)

1984 (English Edition)

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