hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Eagle Has Landed (Jack Higgins) - 「鷲は舞い降りた」- 219冊目

ジャンル: 小説(アクション)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

カッコいい男たちの話を読みたい! そう思いました。 そして評判を聞いて手にしたこの一冊。 期待は裏切られませんでした。 男前な文章があるとすれば、きっとこのような文章のことを言うのでしょう。キビキビとして硬質な文章。 読んでいて小気味よいとはこのことです。 簡潔でいて味がある。 そして感動で鳥肌が立つような心揺さぶる名シーンがいっぱい。 惚れてまうやろー! (古い…)

一言で言えば、ナチスドイツ軍によるイギリス首相チャーチルの誘拐作戦の顛末記。(もちろんフィクションです) 読み手側は、結局チャーチルは誘拐されない、ドイツ軍は敗北に終わる、この歴史の結果を知っています。 それでも、この作戦がどのように立案、遂行され、そしてほころびを見せるかについて、まるでドキュメンタリーのような冷静なタッチでリアルに描写されている、この点が本作が高く評価されている理由なのでしょう。本作以前は、小説の題材として扱われる第二次大戦時のドイツは、ナチスを中心とした典型的な悪の権化として描かれることがほとんどでした。 しかしここでのSteiner中佐の部隊のように、ドイツ軍が誇りや苦悩を同様に抱える人間として魅力的に描かれるのは、当時はかなり斬新な視点だったようです。


粗筋を簡単に。 第二次大戦末期の敗色濃いナチスドイツ軍。 ゲシュタポのトップであるヒムラーの命により、一発逆転のチャンスを狙って、連合国軍の中枢であるイギリス首相チャーチルを誘拐するという作戦が仕組まれた。 イギリスに潜伏中のおばちゃまスパイ・Mrs. Joanna Grayからの情報により、チャーチルがお忍びでイギリスのある片田舎で休養するというのだ。連合国ポーランド義勇軍幹部のフリをして標的に近づくため、白羽の矢が当たったのはドイツ人の父とアメリカ人の母を持つドイツ空軍パラシュート部隊のリーダーKurt Steiner中佐(Lt. colonel)と、アイルランド共和軍(IRA)の伝説的なテロリストLiam Devlin。 この荒唐無稽とも思われる作戦は多くの障害を乗り越えながらもかろうじて進んでいく。 そしてついに、ポーランド軍パラシュート部隊の制服に身を包み、Steiner一行は標的近くのNorfolk に何とか上陸した。その際の暗号コードが、この小説のタイトル「The Eagle Has Landed」(鷲は舞い降りた)。 上陸後、その土地の村人たちにも信用されていたSteiner中佐の部隊だが、彼らが人間らしく振る舞ったがゆえの、ある「善行」から、思いがけずもこの作戦が綻び始める…
(1975年発刊)



メモポイント (かなりネタバレあります。注意!)

● 本作を魅力的にしているポイントは男気溢れる野郎どもの話だけではない。作戦の先導役として村に潜伏したLiam Devlinと、そこで出逢った村娘Molly Priorの恋物語
Mollyは、恋人となったDevlinの不審な行動を見て彼が闇市場の違法ビジネスに手を出しているのではないかと勘違いをして、彼の身の上が気になって仕方がない。(もちろんドイツ軍のスパイとは想像もしていなかったが) そして、その後どういうわけか「彼はイギリス軍の特殊任務についているのだ」との勘違いをして安心するのだが、その彼女の安堵した時の描写があまりにも可愛らしくてたまらない。 恋人が国に忠誠を誓った信頼できる男と分かって、誤解が解けて心が飛び跳ねているよう。

「これで分かったろう、モリー。 良い子だからもうあまり詮索しないで俺からの連絡を待っていてくれ。そんなに待たせないよ」
「うん、大丈夫よ、ライアム。 信じて、もう邪魔しない!」

I thought it was something to do with the black market and you let me think it. But I was wrong. You’re still in the army, that’s it, isn’t it?’
‘Yes,’ he said with some truth. ‘I’m afraid I am.’
Her eyes were shining. ‘Oh, Liam, can you ever forgive me thinking you some cheap spiv peddling silk stockings and whisky round the pubs?’
Devlin took a very deep breath, but managed a smile. ‘I’ll think about it. Now go home like a good girl and wait until I call, no matter how long.’
‘I will, Liam. I will.’
She kissed him, one hand behind his neck and swung up into the saddle. Devlin said, ‘Mind now, not a word.’
‘You can rely on me.’


● 現場の兵士たちの双方どちらも望まない不毛な戦い。 無能な将に率いられた部下たちがどれほど悲惨なものか。 ナチスドイツのヒムラーといい、在英米国軍のShafto大佐といい。 命の重さが感覚的に理解できない。 愚かなことは罪なこと。
ヒムラーの部下でドイツ本国で誘拐作戦の総指揮を取らされるRadl中佐。 家族をナチスの人質に取られたも同然の境遇。 「常に誰かが苦しんでいる… いつまで続くのか。 神よ、この茶番を早く終わらせたまえ」力なく独りごちた。

The field car moved off and he stood looking out to sea filled with an indescribable feeling of bitterness. Someone always suffered –always. His hand ached, the eye socket burned. ‘God, how I wish it was all over,’ he said to himself softly and he turned and walked away.


● ついにDevlinの正体がドイツ軍のスパイであることがMollyにバレた。 Mollyは自分を裏切って誘拐作戦に利用したDevlinが許せず「裏切り者は皆の前で縛り首になればいいわ!」と激怒しDevlinの前に姿を現した。 しかし、Devlinの愛が真実であることを知り、これから死地に自ら飛び込もうとする彼の姿を見ると、Mollyの憎悪の念はみるみる萎んでいく。

Molly said, ‘What are you going to do?’
‘Into the valley of death, Molly, my love, rode the six hundred and all that sort of good old British rubbish.’ He poured himself a glass of Bushmills and saw the look of amazement on her face. ‘Did you think I’d run for the hills and leave Steiner in the lurch?’ He shook his head. ‘God, girl, and I thought you knew something about me.’
‘You can’t go up there.’ There was panic in her voice now. ‘Liam, you won’t stand a chance.’ She caught hold of him by the arm.
‘Oh, but I must, my pet.’ He kissed her on the mouth and pushed her firmly to one side. He turned at the door. ‘For what it’s worth, I wrote you a letter. Not much, I’m afraid, but if you’re interested, it’s on the mantelpiece.’

The door banged, she stood there rigid, frozen. Somewhere in another world the engine roared into life and moved away. She found the letter and opened it feverishly. It said: 「Molly, my own true love. ......


● 村の子供たちが足を踏み外して川に落ちてしまった。溺れかけた子供たちの命を救うために命を落としたSteiner 中佐の部下の勇気ある行動により、彼らの出自がドイツ軍であることがバレてしまい、Steiner 達は在英米国軍の襲撃を受けて窮地に陥ることになる。 絶対絶命の中、助けた少年の母親にSteiner が声をかける。
「(溺れた友達を救おうと川に飛び込んだ) 勇敢な息子さんだ。」
その少年はSteinerを見上げて尋ねる。
「おじさん達はどうしてドイツ人なの? どうして僕たちの味方じゃないの?」
Steiner は思わず声に出して笑って、その母親に言った。
「さあ、息子さんを連れて行きなさい。なんとも答えに困ってしまう質問なんでね。」

‘He’ll be all right, Mrs Wilde,’ the young Oberleutnant said. ‘I’m sorry about what happened in there, believe me.’
‘That’s all right,’ she said. ‘It wasn’t your fault. Would you do something for me? Would you tell me your name?’
‘Neumann,’ he said. ‘Ritter Neumann.’
‘Thank you,’ she said simply. I’m sorry I said the things I did.’ She turned to Steiner. ‘And I want to thank you and your men for Graham.’
‘He’s a brave boy,’ Steiner said. ‘He didn’t even hesitate. He jumped straight in. That takes courage and courage is something that never goes out of fashion.’
The boy stared up at him. ‘Why are you a German?’ he demanded. ‘Why aren’t you on our side?’
Steiner laughed out loud. ‘Go on, get him out of here,’ he said to Betty Wilde. ‘Before he completely corrupts me.’



後半は、映画「ワイルドバンチ」状態のハードな銃撃戦が展開。 死地で育まれる男達の絆。 望月三起也のマンガで読みたいところです。
そして事件から数十年後にエピローグとして語られる後日談。あっと驚く展開が残されています。


それから、ドイツ軍を魅力的に描いた作品として、Uボート乗組員達の物語、Robert Kurson「Shadow Divers」(38冊目)もオススメです。

The Eagle Has Landed (English Edition)

The Eagle Has Landed (English Edition)

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Project Management (G.Michael Campbell) - 「世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント」- 218冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆

今、ある会計関連のパッケージソフトの導入プロジェクトに関わっています。 予算も多額で関係者も多いこのプロジェクト。考慮すべきポイントが多岐に渡り、手続きに抜けや漏れが出ないようにしたい。 で、必要に迫られて手にした本です。 (オモシロ本として紹介しているのではないので、★は二つでした)
この本、プロジェクトを成功に導くための組織の束ね方、人身の掌握方法、スケジューリング、予算取り、更にはトップへの報告ポイントから打ち上げの奨励まで、そのノウハウが実に詳細に説明されています。 ERPの導入プロジェクトなどには欠かせない知識と言えるでしょう。
(2014年発刊)


メモポイント

● プロジェクトを成功に導く12の黄金律。

1. Gain consensus on project outcomes. (目的は事前に明確に同意)
2. Build the best team you can. (ベストメンバーの人選)
3. Develop a plan and keep it up to date. (周到に計画、まめに更新)
4. Determine what you really need to get things done. (本当に必要な条件を絞り込む)
5. Have a realistic schedule. (現実的な計画作り)
6. Don’t try to do too much. (欲張りはNG)
7. Remember that people count. (メンバーは大事に)
8. Gain the support of management and stakeholders. (トップからの支援)
9. Be willing to change. (計画の修正を恐れない)
10. Keep others informed of what you are doing. (周りを理解者に)
11. Be willing to try new things. (新たな方法を試す)
12. Become a leader. (管理者ではなくメンバーの士気を鼓舞するリーダーに)


● プロジェクト進捗についてステークホルダーから尋ねられた場合の対応。 これは大事。全てを盛り込もうとせず、聞かれたことに答えることが効率的。しかも即座に応えられることで、十分に練られた計画であるとの印象を与えられて相手は安心する。

You should also know how much detail you will need to provide. Sometimes in a preliminary review like this, the stakeholder will not want a lot of detail. If that’s the case, leave the details out of the plan, but bring along any supporting information you have prepared. That way, if they ask you a question, you can respond quickly without having to say “I’ll have to get back to you with that.”


● どんなに練られた計画だったとしても想定外のトラブルが発生するのがプロジェクト。しかしプロマネたる者、スポンサーに対しては、どんな状況でも自身のコントロール下にあると思わせなければならない。「ノー・サプライズ!」

Never surprise your sponsor with a problem. Remember in Chapter 6 about the politics in senior management—there must be a perception that they are in control.


● 問題点の8割は2割の原因から発生する。パレートの法則に基づいた優先順位のつけ方。チェックリストの有効性。

The Pareto diagram is the source of the famous 80/ 20 rule that says that 80 percent of your problems will come from 20 percent of the sources. You are trying to evaluate where the greatest source of problems is occurring and take corrective action. In this case, the video component seems to be the greatest source of problems, so it becomes the highest priority for corrective action. Using checklists and the whole suite of available quality tools will aid you tremendously in getting the results you and stakeholders want.



話はかわって。

先日、黒澤明の「天国と地獄」をテレビで観ました。 有名な作品なのでご存知の方も多いと思います。 ストーリーはこんな感じです。
ある大企業の重役(三船敏郎が演じる)の息子が誘拐され身代金を要求された。 しかし実は誘拐された子供とは重役のお抱え運転手の息子であり、一緒に遊んでいたときに取り違えて攫われたのだった。誘拐犯はその事実を知ったが変わらずに重役に身代金を要求、重役は我が子と取り違えられた他人の子供のために自身の全財産を投げ打つかどうかを悩む、といったもの。

ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、いきなりなぜこの映画の話をしたかというと、この仲代達也が演じた主任担当警部の仕事振りを見て「プロジェクト・マネジメントのリーダーみたいだなぁ」と感じたからでした。 プロマネのテクニックはある程度、書籍で理解することができるかもしれませんが、感覚的な側面について知るにはこの映画はとても参考になると思います。 この映画で描かれる捜査班は、組織横断型プロジェクトチームというよりも、どちらかと言えば通常の警察組織のライン業務の範疇に入るのでしょう。それでも全員で「犯人逮捕」という一つの目標に向かって、様々な手続きを同時進行で緻密に計画して積み上げていくステップにはプロジェクト・マネジメントとの相関性がとても高いように思えました。

そしてこの映画の中でプロマネにあたる主任担当警部(仲代達也が演じました)が秀逸です。特に全体定例報告会のシーンなんかゾクゾクします。(捜査員達が順番に立ち上がって報告する「踊る大捜査線」などでよく見る例のアレです) 大勢の捜査員達からの情報を集めて、冷静沈着で入手した情報を漏れなく分析し即時に判断、的確な指示を与える。しかし冷徹というわけではなく、情熱的で暖かい心も持っている。 まさに、経済学者のマーシャルが唱えた「Cool Head but Warm Heart! 」の体現者ですね。

今回は映画のオススメになってしまった…

Project Management, Sixth Edition (Idiot's Guides)

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Walden (Henry David Thoreau) - 「森の生活」- 217冊目

ジャンル: 古典
英語難易度: ★★★
オススメ度: ★★☆☆☆

ふー、やっと読み終えました。 美文調で古語もふんだんに使われており、かなり読みづらかったです。 ハーバード大学卒の意識高い若者が「持たない生活」を志向し元祖ミニマリストとして、ウォールデン湖のほとりで、二年間の「森の生活」をおくった際のエッセイ。(1854年発刊)

日々の暮らし振りはけっこう詳細に書き込まれています。 ローラ・インガルス・ワイルダーを思い出しました。いや「下ノ畑ニ居リマス」の宮沢賢治か。

後半は池の周りに棲息する動植物についての観察がファーブル昆虫記やシートン動物記並みに細かく記されています。 そして、これらの英語名称がサッパリ分かりません。 辞書で引いても記憶しておくのも難しく… おおよその雰囲気で飛ばし読みしてました。
シツコイですが、それにしても読みにくい。 専門単語以外は一見すると難しくなさそうなんですが、読んでいて意味がよく分かりません。 古今東西の古典の引用もふんだんに使われています。 ちょっと衒学趣味でナルシスト風なのが鼻につきましたが、それでも自身のプリンシプルに正直な人なのでしょう。 僕の買ったkindleには「On The Duty of Civil Disobedience」というエッセイも収録されていますが、当時のアメリカ政府の政策(奴隷制メキシコ戦争の対応など)に反対して税金を払うのを拒否して投獄されたときの顛末も記されています。


メモポイント

● ただ歳を取るだけの人は尊敬するに値しない。30歳の著者がバッサリ!

Practically, the old have no very important advice to give the young, their own experience has been so partial, and their lives have been such miserable failures, for private reasons, as they must believe; and it may be that they have some faith left which belies that experience, and they are only less young than they were. I have lived some thirty years on this planet, and I have yet to hear the first syllable of valuable or even earnest advice from my seniors.


孔子の言葉を引用。 「これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ。これ知るなり」

Confucius said, “To know that we know what we know, and that we do not know what we do not know, that is true knowledge.”


● どんだけ一人が好きやねん! 旅路では、妙に孤独でそして切ない感じがこみ上げる。 この感覚、けっこう好きです。

I find it wholesome to be alone the greater part of the time. To be in company, even with the best, is soon wearisome and dissipating. I love to be alone. I never found the companion that was so companionable as solitude. We are for the most part more lonely when we go abroad among men than when we stay in our chambers. A man thinking or working is always alone, let him be where he will. Solitude is not measured by the miles of space that intervene between a man and his fellows.


● 本作の締めの言葉。「ただ待っているだけでは夜明けは来ない。我々が目を開けようとして初めて夜明けはやって来る。」

I do not say that John or Jonathan will realize all this; but such is the character of that morrow which mere lapse of time can never make to dawn. The light which puts out our eyes is darkness to us. Only that day dawns to which we are awake. There is more day to dawn. The sun is but a morning star.



英文読解力が上がれば、もっとスムースに読み終えていたと思います。原仙の英文標準問題精構をやり直そうかな。

Walden (AmazonClassics Edition) (English Edition)

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A Random Walk Down Wall Street (Burton Malkiel) - 「ウォール街のランダムウォーカー」- 216冊目

ジャンル: 投資・マネー
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

小説「赤毛のアン」に出てくるマシューおじさんは、ぼくの好きなキャラクターの一人です。 寡黙で優しいこのおじさんの命を奪う心臓発作の引き金となったのは、彼の全財産を預けていた銀行が破綻したとのニュースでした。 これ、児童小説にしては結構シビアで生々しい話ですが、年配のマシューおじさんにとっては、それだけショッキングなことだったのでしょう。 お金の話題ははしたないと少し敬遠されがちなのですが、人が生きていく上で避けては通れないものです。 最低限の知識は身につけておくべきことですよね。

ということで、今日はお金と投資運用のお話です。 「株」というと危険で大損するかもというイメージを持たれている方も多いと思います。 確かにこの種の取引ではリスクは避けられないのですが、やり方次第によってはかなり高い確率で安定した運用を行うことが可能である、と主張している本です。
「え〜、そんなウマイ話があるのなら、みんなやってるでしょう? 怪しいなあ」と思うのが道理ですが、本書の説かれた通りであれば「フンフン、なるほど」と納得。ただしご注意、この投資手法には覚悟と根気が要ります。(詳しくは下段で)

株運用、インデックス投資最強説。「ほったらかし投資術」のはしりでしょう。投資の話題だけではなく、経済、金融の歴史をとても分かりやすくまとめた一級品です。 英語もとても読みやすい。 お金の運用にお悩みの方には必読の書。
(1973年 初版発刊)


メモポイント
● 投資で金を稼ぐことは何も難しいことではない。 単純に株を買って広い範囲のポートフォリオの割合に従って長期保有すること。 たったこれだけ。 ただ難しいのは、短期的に儲かりそうに見える個別銘柄に投機的に金をつぎ込みたいとの誘惑に打ち勝つこと。

It is not hard, really, to make money in the market. As we shall see later, an investor who simply buys and holds a broad-based portfolio of stocks can make reasonably generous long-run returns. What is hard to avoid is the alluring temptation to throw your money away on short, get-rich-quick speculative binges.


● 10年以内での投資では成功するかどうかは保証できない。 つまり、インデックス投資で成功するには10年以上ホールドするつもりでないとダメだということ。

CAPEs do a reasonably good job of forecasting returns a decade ahead and confirm the expectation presented here of modest single-digit returns over the years ahead. But if your investment period is for less than a decade, no one can predict the returns you will receive with any degree of accuracy.


● 本書の肝要。分厚い一冊を5点にまとめるとコレ!

1. リスクとリターンは表裏一体であることを忘れるな。ハイリスクはハイリターン、ローリスクはローリターン。バブル期にあるようなウマイ話などない。 当たり前ですね。
2. 投資のリスクは長期間保有することで低減できる。 瞬間の相場の変動に一喜一憂しない。
3. ドルコスト平均法は効果あり。(異論があることは認めるが。) 一定額を定期的に投資することでリスクを低減させる。つまり、相場が下がっている時でも一定額で株を購入するということはより多くの株を安く買えるということ。 長期スパンで経済規模が拡大していれば、いずれはある程度の運用益が見込める。
4. 個別銘柄ではなく世界全体の経済活動を反映したポートフォリオの割合に従って株を買い(インデックス投資)、定期的にその割合が想定通りとなるように調整すること。(リバランシング)
5. 当然、長期間の投資の過程では相場が激しく下落することもある。 その局面においても耐えられる経済状況であることが大事。 自身のリスク許容度を超える投資を行ってはならない。 運用状況が気になって眠れない、なんてことは絶対ダメ!

1. History shows that risk and return are related.

2. The risk of investing in common stocks and bonds depends on the length of time the investments are held. The longer an investor’s holding period, the lower the likely variation in the asset’s return.

3. Dollar-cost averaging can be a useful, though controversial, technique to reduce the risk of stock and bond investment.

4. Rebalancing can reduce risk and, in some circumstances, increase investment returns.

5. You must distinguish between your attitude toward and your capacity for risk. The risks you can afford to take depend on your total financial situation, including the types and sources of your income exclusive of investment income.


ローソクの様な折れ線グラフを使って相場の動きを観察して買い時・売り時を決める人をテクニシャン(著者はチャーティストと表現) と言いますが、「こんな相場の先読みなど分かるハズがない」とバッサバッサと切り捨てる、小気味良いキレ味です。 一方、投資対象会社の過去の財務諸表等から会社の底力を判定して投資する人をファンダメンタリストと言いますが、著者はこちらが良いとも言っていません。 つまり、潮目を見て株価の変化を予測するとか、会社の過去実績を見て将来利益を予測するとか、そもそも無理筋だと切り捨てています。唯一、うまくいく可能性があるのはインデックス型投資で長期保有、これのみと主張しています。 実際に過去の運用成績を見ると、個別銘柄にピンポイントで投資を行うアクティブ投資よりも、マーケット全体の株価に連動させた指標に基づいて投資を行うインデックス投資(パッシブ投資)の方が僅かに上回っています。 (しかもアクティブ投資のアドバイザーにはフィーの支払いが発生します)

While it sounds suspiciously like an argument used by technical analysts, fundamentalists pride themselves on the fact that it is based on specific, proven company performance. Such thinking flunks in the academic world. Calculations of past earnings growth are no help in predicting future growth.


面白いエピソードが満載で、読み物としても楽しめます。 過去のバブルの話とか、株価と女性のスカート丈の長さの流行を連動させて予想するトンデモ予想屋とか。 CAPM理論やカーネマンの行動経済学についても随分ページを割いて分かりやすく説明してくれてます。 これ一冊で投資にまつわる様々な知識を仕入れることができます。
この本、初版が発行されたのが1973年なのですが、一貫してこの点を主張していて、50年経った現在も版を重ねていてブレていません。(インデックス・ファンドという商品そのものがまだ存在していなかった初版当時から、著者はこの概念を主張しています。) この主張の正当性は、この長い時間を経ることで証明を与えられています。 ぼくが読んだのは11th edition (2015年発刊)でした。版を重ねる中で常に最新の話題も加えられており信頼感が持てます。

今日の教訓。「果報は寝て待て」

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Around the World in Eighty Days (Jules Verne) - 「80日間世界一周」- 215冊目

ジャンル: 小説 (ファンタジー)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆


なんとまあ、痛快にして愉快な話! 児童小説とは言うもののこれこそページターナー小説の真骨頂でしょう。 ドキドキハラハラのストーリー展開はまるでよくできた映画を観ているようです。

病的なまでに時間に厳しく、全ての行動が論理にて構成されているFogg氏。イギリス紳士特有の融通が利かない頑固者と見えている彼ですが、実は情熱と優しさを持ったロマンスを愛する人物でした。

冷静でドライ、人間の感情を持っているのかと思わせる人物がふと見せる温かい感情の一片。 これが主人公のキャラクターをいっそう魅力的なものにしています。 めったに感情のブレがないホームズが、親友ワトソンを傷つけられた時に激怒するあの感じにちょっと似ているような気がします。

さて、もう有名なんでしょうが粗筋を少し。(ネタバレあります)
謎の堅物で大金持ちのイギリス紳士、Fogg氏。 ロンドン紳士クラブの仲間たちとのふとした雑談の中で「ちょうど80日間で世界一周できる」と主張し、細かい旅程を根拠として説明したことから、「ホントに自信があるなら実際にできるかどうか賭けてみるかい」との展開に。

彼の全財産の半分をクラブの仲間との賭け金に、そして残りの半分をこの世界一周の旅費に充てて、自らそれを実行して証明することになりました。
早速、冷静沈着なFogg氏は新しく雇いいれたフランス人の執事Passepartoutと共に慌ただしく世界一周の旅に出ますが、その道中は、強盗に間違えられて刑事に追いかけられたり、先に亡くなった旦那の人身御供として命を奪われようとしている絶世のインド美女Aoudaとのロマンスがあったりと、波乱万丈のエピソードがてんこ盛り。 果たして彼は80日間でロンドンに帰ってこれるのか! 最後のハラハラ感がたまりません!
(1873年発刊)


メモポイント

● Fogg氏の病的なまでの几帳面さがお話の最初に出てきます。 自宅を出てから何歩で「紳士クラブ」の建物に到着するかも決まっている。 カントの散歩の時間があまりにも正確なので、近所の人が時計がわりに使っていたというエピソードを思い出しました。

Phileas Fogg, having shut the door of his house at half-past eleven, and having put his right foot before his left five hundred and seventy-five times, and his left foot before his right five hundred and seventy-six times, reached the Reform Club.


● インド美女Aoudaの美しさを讃える表現が、盛りだくさんで面白い。

Her shining tresses, divided in two parts, encircle the harmonious contour of her white and delicate cheeks, brilliant in their glow and freshness. Her ebony brows have the form and charm of the bow of Kama, the god of love, and beneath her long silken lashes the purest reflections and a celestial light swim, as in the sacred lakes of Himalaya, in the black pupils of her great clear eyes. Her teeth, fine, equal, and white, glitter between her smiling lips like dewdrops in a passion-flower's half-enveloped breast. Her delicately formed ears, her vermilion hands, her little feet, curved and tender as the lotus-bud, glitter with the brilliancy of the loveliest pearls of Ceylon, the most dazzling diamonds of Golconda. Her narrow and supple waist, which a hand may clasp around, sets forth the outline of her rounded figure and the beauty of her bosom, where youth in its flower displays the wealth of its treasures; and beneath the silken folds of her tunic she seems to have been modelled in pure silver by the godlike hand of Vicvarcarma, the immortal sculptor.


● 「さて、この長くて辛い旅で彼が得たものなど何もなかった、と皆さんはお思いですか? 何もない? 確かにそうかもしれません。 ただ1人、彼を世界で最も幸せにした美しい女性を除いては。」

But what then? What had he really gained by all this trouble? What had he brought back from this long and weary journey?
Nothing, you say? Perhaps so; nothing but a charming woman, who, strange as it may appear, made him the happiest of men!
Truly, would you not for less than that make the tour around the world?


作家Jules Verneはフランス人ですが、主人公の堅物をイギリス人としたのは、イギリス人一般の傾向性をデフォルメして描いたんでしょうかね。

Around the World in Eighty Days (AmazonClassics Edition)

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The Firm (John Grisham) - 「法律事務所」- 214冊目

ジャンル: 小説(サスペンス)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

アメリカでは、税務周りの交渉ごとは弁護士がやるだなんて、この本で初めて知りました。 日本で言えば、法律事務所と言うよりも、法人・個人所得税対策専門の法律すれすれのヤバい系税理士事務所ですね。

粗筋を少し。
ハーバード・ロースクールを優秀な成績で卒業したミッチ。 破格の報酬条件とBMW付きでメンフィスの片田舎のある名門法律事務所に就職した。 順風満帆に思えた彼。しかしこの事務所、不審な点が多く、過去にも多くの先輩弁護士たちが不審死を遂げている。実はこの事務所、違法マフィアの脱税とマネーロンダリングの片棒担ぎを生業としていることに気づく。逃げ出そうともがくものの、既に彼の外堀は埋められていた。 タックスヘイブンケイマン諸島を舞台にして、命の危険を感じながらも頭脳一本で事務所と渡り合うミッチ。さらにマフィアを摘発しようとFBIも登場。 果たして彼はこの包囲網から抜けだせるのか!

トム・クルーズ主演の同名映画もヒットしましたね。
(1991年発刊)


● 作者が言わんとしていたテーマから外れるかもしれませんが、この小説(とトム・クルーズ主演の映画)を読んで僕が一番に考えたことは、「知識は身を助けるのだ」ということです。 絶対絶命の状況に陥りながら主人公ミッチがかろうじて犯罪組織と渡り合えたのは、「知識による武装」があったからだと思います。

「男はタフでいないと生きていけない。優しくないと生きている資格がない」はプレイバックでのフィリップ・マーロウの台詞です。 この「タフであり強くある」という点は上に書いた「知識による武装」も含まれているように思えるのです。 大事な人を守るためにも強くなければならない。 もっと端的に言えば、「無知」は罪なことなんだな、と感じたものでした。

本作で、ミッチは大学でアカウンティングの学位を取り、US-CPA試験にパスした後に、くだんの法律事務所に入って司法試験に挑戦するという設定でした。 むかーしむかしに僕はUS-CPAの資格を取った事があるのですが、頭脳一本で組織と渡り合うこの小説の主人公に憧れたことが、この資格を取ろうとした動機付けの一つであったように思います。


それから、この本が好きな人は橘玲の「マネーロンダリング」と「タックスヘイブン」もおススメです! 面白いですよ!

The Firm: A Novel

The Firm: A Novel

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Harry Potter and the Chamber of Secrets - 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」- 213冊目

ジャンル: 小説(ファンタジー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★☆☆

ハリーポッター、第2弾!

ざっくりと3行でまとめると、

1. 魔法学校ホグワーツで二年目を迎えるハリー。

2. ますます強くなるロンとハーマイオニーとの三人組の友情の絆。

3. そして、ホグワーツの地下にある「秘密の部屋」に住む魔物との戦いの一幕。


しかし、本作の陰の主役はなんといっても「君のハートをロックオン」、ギルデロイ・ロックハート先生でしょう! 名前からして過剰装飾なこの人、ホントに使えんヤツです。 なぜ、ダンブルドア校長は彼を闇の魔術の教授としてホグワーツに採用したんでしょうねー。 目が曇ったかな? あの才女ハーマイオニーでさえも彼にメロメロになるなんて不思議。 いや、そうは言っても嫌いなわけじゃありません。 強烈な印象を残す面白くて好きなキャラクターです。 もちろん映画も観ましたよ。ケネス・ブラナーの演技、本当に原作通りでうま過ぎます。(先日は映画「オリエント急行殺人事件」でポワロ役もされてましたね。) 一方、しもべ妖精のドビー(ノルウェーのトロルみたいな鼻の長い妖怪) はちょっと苦手です… ハリーに対するからみがシツコい感じもあり、もう少し違う感じの方が良かったかも。
(1998年発刊)



メモポイント (ネタバレ注意)

● 謎の美少年、トム・リドルの正体とは…

“Voldemort,” said Riddle softly, “is my past, present, and future, Harry Potter. . . .”

He pulled Harry’s wand from his pocket and began to trace it through the air, writing three shimmering words:

TOM MARVOLO RIDDLE

Then he waved the wand once, and the letters of his name rearranged themselves:

I AM LORD VOLDEMORT”


ロックハート先生の肩書き…
「ギルデロイ・ロックハート: マーリン勲章 勲三等、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、「週刊魔女」の「チャーミング・スマイル賞」5回受賞」
このうさんくさい臆面のなさ、いいわー(^^;

“Gilderoy Lockhart, Order of Merlin, Third Class, Honorary Member of the Dark Force Defense League, and five times winner of Witch Weekly's Most Charming Smile Award. But I don't talk about that; I didn't get rid of the Banden Banshee by smiling at him.”


ダンブルドアの名言。
「自分を本当に示すものとは、能力などではない。どういう選択をするのかじゃよ、ハリー。」

It is our choices, Harry, that show what we truly are, far more than our abilities.


● ウィーズリー父さんがジニーに一言。結構いいこと言う。
「脳みそがどこにあるのかも分からないのに、ひとりで勝手に考えることができるものなんて、信用してはいけないよ。」

Ginny!" said Mr. Weasley, flabbergasted. "Haven't I taught you anything? What have I always told you? Never trust anything that can think for itself if you can't see where it keeps its brain?



純粋に楽しめます。完全に僕の主観ですが、ストーリーの展開は名作と言われる「ホビット」よりも断然面白かった。本作の邦訳版については今ひとつ、との声もいくつかあったようですので、未読の方は夏休みの読書として、ぜひ原文で挑戦してみてはいかがでしょうか。

Harry Potter and the Chamber of Secrets

Harry Potter and the Chamber of Secrets

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