hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

A Random Walk Down Wall Street (Burton Malkiel) - 「ウォール街のランダムウォーカー」- 216冊目

ジャンル: 投資・マネー
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

小説「赤毛のアン」に出てくるマシューおじさんは、ぼくの好きなキャラクターの一人です。 寡黙で優しいこのおじさんの命を奪う心臓発作の引き金となったのは、彼の全財産を預けていた銀行が破綻したとのニュースでした。 これ、児童小説にしては結構シビアで生々しい話ですが、年配のマシューおじさんにとっては、それだけショッキングなことだったのでしょう。 お金の話題ははしたないと少し敬遠されがちなのですが、人が生きていく上で避けては通れないものです。 最低限の知識は身につけておくべきことですよね。

ということで、今日はお金と投資運用のお話です。 「株」というと危険で大損するかもというイメージを持たれている方も多いと思います。 確かにこの種の取引ではリスクは避けられないのですが、やり方次第によってはかなり高い確率で安定した運用を行うことが可能である、と主張している本です。
「え〜、そんなウマイ話があるのなら、みんなやってるでしょう? 怪しいなあ」と思うのが道理ですが、本書の説かれた通りであれば「フンフン、なるほど」と納得。ただしご注意、この投資手法には覚悟と根気が要ります。(詳しくは下段で)

株運用、インデックス投資最強説。「ほったらかし投資術」のはしりでしょう。投資の話題だけではなく、経済、金融の歴史をとても分かりやすくまとめた一級品です。 英語もとても読みやすい。 お金の運用にお悩みの方には必読の書。
(1973年 初版発刊)


メモポイント
● 投資で金を稼ぐことは何も難しいことではない。 単純に株を買って広い範囲のポートフォリオの割合に従って長期保有すること。 たったこれだけ。 ただ難しいのは、短期的に儲かりそうに見える個別銘柄に投機的に金をつぎ込みたいとの誘惑に打ち勝つこと。

It is not hard, really, to make money in the market. As we shall see later, an investor who simply buys and holds a broad-based portfolio of stocks can make reasonably generous long-run returns. What is hard to avoid is the alluring temptation to throw your money away on short, get-rich-quick speculative binges.


● 10年以内での投資では成功するかどうかは保証できない。 つまり、インデックス投資で成功するには10年以上ホールドするつもりでないとダメだということ。

CAPEs do a reasonably good job of forecasting returns a decade ahead and confirm the expectation presented here of modest single-digit returns over the years ahead. But if your investment period is for less than a decade, no one can predict the returns you will receive with any degree of accuracy.


● 本書の肝要。分厚い一冊を5点にまとめるとコレ!

1. リスクとリターンは表裏一体であることを忘れるな。ハイリスクはハイリターン、ローリスクはローリターン。バブル期にあるようなウマイ話などない。 当たり前ですね。
2. 投資のリスクは長期間保有することで低減できる。 瞬間の相場の変動に一喜一憂しない。
3. ドルコスト平均法は効果あり。(異論があることは認めるが。) 一定額を定期的に投資することでリスクを低減させる。つまり、相場が下がっている時でも一定額で株を購入するということはより多くの株を安く買えるということ。 長期スパンで経済規模が拡大していれば、いずれはある程度の運用益が見込める。
4. 個別銘柄ではなく世界全体の経済活動を反映したポートフォリオの割合に従って株を買い(インデックス投資)、定期的にその割合が想定通りとなるように調整すること。(リバランシング)
5. 当然、長期間の投資の過程では相場が激しく下落することもある。 その局面においても耐えられる経済状況であることが大事。 自身のリスク許容度を超える投資を行ってはならない。 運用状況が気になって眠れない、なんてことは絶対ダメ!

1. History shows that risk and return are related.

2. The risk of investing in common stocks and bonds depends on the length of time the investments are held. The longer an investor’s holding period, the lower the likely variation in the asset’s return.

3. Dollar-cost averaging can be a useful, though controversial, technique to reduce the risk of stock and bond investment.

4. Rebalancing can reduce risk and, in some circumstances, increase investment returns.

5. You must distinguish between your attitude toward and your capacity for risk. The risks you can afford to take depend on your total financial situation, including the types and sources of your income exclusive of investment income.


ローソクの様な折れ線グラフを使って相場の動きを観察して買い時・売り時を決める人をテクニシャン(著者はチャーティストと表現) と言いますが、「こんな相場の先読みなど分かるハズがない」とバッサバッサと切り捨てる、小気味良いキレ味です。 一方、投資対象会社の過去の財務諸表等から会社の底力を判定して投資する人をファンダメンタリストと言いますが、著者はこちらが良いとも言っていません。 つまり、潮目を見て株価の変化を予測するとか、会社の過去実績を見て将来利益を予測するとか、そもそも無理筋だと切り捨てています。唯一、うまくいく可能性があるのはインデックス型投資で長期保有、これのみと主張しています。 実際に過去の運用成績を見ると、個別銘柄にピンポイントで投資を行うアクティブ投資よりも、マーケット全体の株価に連動させた指標に基づいて投資を行うインデックス投資(パッシブ投資)の方が僅かに上回っています。 (しかもアクティブ投資のアドバイザーにはフィーの支払いが発生します)

While it sounds suspiciously like an argument used by technical analysts, fundamentalists pride themselves on the fact that it is based on specific, proven company performance. Such thinking flunks in the academic world. Calculations of past earnings growth are no help in predicting future growth.


面白いエピソードが満載で、読み物としても楽しめます。 過去のバブルの話とか、株価と女性のスカート丈の長さの流行を連動させて予想するトンデモ予想屋とか。 CAPM理論やカーネマンの行動経済学についても随分ページを割いて分かりやすく説明してくれてます。 これ一冊で投資にまつわる様々な知識を仕入れることができます。
この本、初版が発行されたのが1973年なのですが、一貫してこの点を主張していて、50年経った現在も版を重ねていてブレていません。(インデックス・ファンドという商品そのものがまだ存在していなかった初版当時から、著者はこの概念を主張しています。) この主張の正当性は、この長い時間を経ることで証明を与えられています。 ぼくが読んだのは11th edition (2015年発刊)でした。版を重ねる中で常に最新の話題も加えられており信頼感が持てます。

今日の教訓。「果報は寝て待て」

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