hearthのお気楽洋書ブログ

洋書読みの洋書知らず。永遠の初心者。 まったりとkindleで多読記録を更新中 (ツイッターは、hearth@洋書&映画)

The Chemical History of a Candle (Michael Faraday) - 「ロウソクの科学」- 224冊目

ジャンル: サイエンス・ロジック
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★☆☆☆

深夜、眠れないことが多く、夜の2時ぐらいに本を読むことがあります。 物音ひとつしない静かな暗闇の中で、布団の中でキンドルを手にして古典とも言える本を読む。 何か濃密な時間が過ぎていく感じが好きなのです。

以前に読んだ塩野七生さんのエッセイの中で、マキャベリが深夜の読書・思索を通じて古の賢人たちと対話し、名著「君主論」を書き上げたエピソードを紹介されていました。 その作品の勇壮なイメージとは少し異なり、現実のマキャベリは背は人並みだが貧相に見える貧乏な四十男でした。 「君主論」が出版され名声を得るのも彼の死後のことであり、決して社会的には成功者の部類には入らない人物だったようです。 しかし孤独を愛し自身の中で確固たる世界観を持ち、いにしえの賢人たちとの深夜の語らいを持つ姿がなんとノーブルで格好の良いことかと、塩野さんはそのエッセイに書いています。そのくだりについて、マキャベリ自身が友人に書いた手紙を引用します。

————————
「夜がくると家にもどる。そして書斎に入る。入る前に泥やなにかで汚れた毎日の服を脱ぎ官服を身に着ける。礼儀をわきまえた服装に身をととのえてから古の宮廷に参上する。そこではわたしは彼らから親切にむかえられ、あの食物、わたしだけのための、そのためにわたしは生をうけた食物を食すのだ。そこでのわたしは恥ずかしがりもせずに彼らと話し、彼らの行為の理由をたずねる。彼らも人間らしさをあらわにして答えてくれる。
四時間というもの、まったくたいくつを感じない。すべての苦悩は忘れ貧乏も怖れなくなり死への恐怖も感じなくなる。彼らの世界に全身全霊で移り棲んでしまうからだ。
ダンテの詩句ではないが、聴いたことも、考え、そしてもとめることをしないかぎり、シェンツァ (サイエンス )とはならないから、わたしも彼らとの対話を『君主論 』と題した小論文にまとめてみることにした。そこではわたしはできるかぎりこの主題を追求し分析しようと試みている。君主国とはなんであるのか。どのような種類があるのか。どうすれば獲得できるのか。どうすれば保持できるのか。なぜ失うのか … 」
(塩野七生「男たちへ」より抜粋)
———————————-

自分の中で確固たる世界観を持ち、深夜に思索を重ねる。その濃密な時間がいかに大事だったのか。 憧れを覚えます。

そしてそのような深夜の読書にふさわしいと感じた一冊がこの「The Chemical History of a Candle 」です。 科学書と言うよりもこれは歴史的古典の位置付けですね。 イギリスの誇る大科学者であるMichael Faraday。 彼は貧乏な出自であり小学校も中退、十分な教育を受ける機会を持てませんでした。 しかし、科学に対する憧れ、純粋で真っ直ぐな情熱は誰にも負けていません。製本工から始まり、働きながら地道に科学の研究を続けました。 そして、化学の分野ではベンゼンを発見、また物理ではファラデー電磁誘導の法則を唱えたりと、広範に渡る業績を残し、ついには英国王立研究所を代表する教授となり誰もが知る偉大な科学者の一人に数えられるまでになりました。
そして大科学者となったのちも、彼自身は少年の頃から抱き続けた「科学を愛する心」を新しい世代の少年少女に伝えたいと願っていました。 そして一般の人々を対象にして積極的に何度も講座を行いました。その講座の一つがこの本の収録の元になった1860年に行われた「Christmas Lectures (クリスマス講座)」です。
(英国王立研究所主催の伝統あるこの「クリスマス講座」は子供たちへのクリスマス・プレゼントとして1825年に始まった歴史的な科学講座です。 形は変わっているようですがなんと今現在も毎年続けられているそうです。)
(1861年発刊)


メモ
● いいですか。これからみんなで、自然科学の世界のトビラを開けて探求していきますが、どこにでもあるこのロウソクほどピッタリな材料は他にはありませんよ。

There is no better, there is no more open door by which you can enter into the study of natural philosophy, than by considering the physical phenomena of a candle.

● ガスと蒸気の違い。 よく分かっていなかった… どっちも気体の状態だけど、圧縮すると液化するのが蒸気で、圧縮しても液化しないのがガス。 ふーん。

(You must learn the difference between a gas and a vapour: a gas remains permanent, a vapour is something that will condense.)

● 「脂肪の燃焼」とかってよく言うけど、これは文章としての誇張や比喩ではなくて、化学的にはまさにロウソクが燃えることと一緒の原理。 燃焼とは熱や光を伴って急激に酸化すること。

Now, I must take you to a very interesting part of our subject—to the relation between the combustion of a candle and that living kind of combustion which goes on within us. In every one of us there is a living process of combustion going on very similar to that of a candle; and I must try to make that plain to you. For it is not merely true in a poetical sense—the relation of the life of man to a taper; and if you will follow, I think I can make this clear.

● ファラデー先生の講座の締めの言葉。 少年少女たちと分かち合うこの時間をどれほど楽しみにしていたかが伝わります。

I have now finished this imperfect account. It is but an apology for not having brought the process itself before you.
(中略)
If I should happen to go on too long, or should fail in doing what you might desire, remember it is yourselves who are chargeable, by wishing me to remain. I have desired to retire, as I think every man ought to do before his faculties become impaired; but I must confess that the affection I have for this place, and for those who frequent this place, is such, that I hardly know when the proper time has arrived.


この収録本を読むと分かるのですが、このト書き風の実験説明がとても臨場感に溢れています。 きっと科学好きの少年少女たちが、目をキラキラさせて聴いていたに違いない。そしてそれは若き日のファラデー少年の姿そのものだったのでしょう。
そしてファラデー先生は、スティーブ・ジョブズも驚きのプレゼンテーションの名手であることが分かります。 盛り上げつつ観客を魅了する実験はまるで手品のようです。今で言えば「でんじろう先生」の科学面白実験といった雰囲気。 彼の身振り、言葉の選び方、そして聴衆が何をどのように感じるかをよく把握して、シンプルな物を使って奥深さを伝える。 この講座でも、ロウソクというありふれた物を使って、化学、物理の奥深さをキレイに繋げて、目の前でプレゼンテーションを行ないます。 少年少女たちの心をわしづかみにしたファラデー先生。 この本を読んで多くの子供たちが科学者を目指したんだろうなー。 素晴らしい。

惜しむらくは、ぼくが入手したこのKindle本、著作権が切れて無料だったのですが、イラストが無いものでした。 文章自体はそれほど難しいものではなく、文学の古典にあるような古い言葉使いも無かったのですが(show をshewと綴るぐらいのもの)、イラストが無いので細かい実験のセットアップはさっぱり分かりません。もしこれから読まれる方は、多少高くてもイラストや図解の入った版を買われることをオススメします。(なので、オススメ星印も二つ星としました。)

それから、科学を愛する少年の本であれば、ファインマンさんの本(134冊目)、あと「Rochet Boys」(140冊目)なんかもオススメです。
安心してください。数式はありませんよ。

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Blue Ocean Strategy (W. Chan Kim) - 「ブルー・オーシャン戦略」- 223冊目

ジャンル: ビジネス・経済
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

「いつかはそうなると思ってたんだよね」

何かトラブルが起きたときに、したり顔でこう言われると、ザラッとして少し嫌な感じがします。「なら、もっとはよ言え!」と。 後知恵バイアスと言うのでしょうか。 自分ではこういうこと言わないようにしようと思ってますが、無意識の内にやらかしちゃってるかもしれません。

マーケティングやビジネスモデルの本を読むと結構そう思うことがあります。 いくつかの成功モデルと失敗モデルを比較して分析をして理由づけしているパターンが多いのですが、結果を見てから説明するのは簡単です。 しかし、事前に「このモデルが成功する可能性が高いですよ」と示唆してくれる指南書には残念ながらなかなか出会えません。 まあそんなものがあれば誰もが飛びついているでしょうね。

本作も成功と失敗のビジネスケースを例に取りながら説明しているマーケ本です。 従来型の競合他社との価格・サービス競争に明け暮れて疲弊していくマーケットを血で血を洗う「レッド・オーシャン」と呼ぶ一方、まったく新たな観点でビジネスモデルを作り上げて競合を避けるマーケットを大海原のイメージである「ブルー・オーシャン」と名付けています。 人と違うことをする。 競合しないので価格ダンピングもなく、新たな需要を開拓するので収益のサイズも見込める、素晴らしい戦略です。 ただしそのようなモデルを見つけることが大変だからこそみんな苦労しているのだと思うのですが…
(2004年発刊)


メモポイント

ブルーオーシャンを見つけるために、現行のビジネスでは当たり前の事でも見直す。新しい切り口を探すためのツール。 四象限で分ける。何に力を入れて何を削減するか。 これは結構参考になるかも。 サーカスの「シルクドソレイユ」の成功を例に取る。 確かに従来型のサーカスではもう成長の余地は無さげに見える。

Eliminates (廃止):
人件費高のスタープレーヤは使わない。 管理が大変で虐待イメージに通じる動物曲芸はやらない。 複数ステージは観客の注目が分散するのでムダ。

Reduce (削減)
ピエロなどのドタバタユーモアやスリルを減らす。

Raise (増加)
価格を上げ、イベントとしてゴージャスな雰囲気をだす。

Create (創造)
芸術的な美しさ、テーマを追求。


● 雰囲気で売っている業界は、機能面の充実を。 機能で売っている業界は、雰囲気の充実を。

Does your industry compete on functionality or emotional appeal? If you compete on emotional appeal, what elements can you strip out to make it functional? If you compete on functionality, what elements can be added to make it emotional?


● 原価から売価を考えるのではない。売価から原価を決めるのだ。その売価とは競合が参入できない設定である必要がある。 原価を削る過程は、当然と考えられてきたビジネスモデルの見直しにも寄与する。

Here, price-minus costing, and not cost-plus pricing, is essential if you are to arrive at a cost structure that is both profitable and hard for potential followers to match.
(中略)
Part of the challenge of meeting the target cost is addressed in building a strategic profile that has not only divergence but also focus, which makes a company strip out costs.


● 新しいビジネスモデルの導入時には「公正な手続きを踏みましたよ」感が大事。関係者に対して、実際に反映されたかどうかではなく手を尽くして意見を聞いたというステップが大事なのだ。

Engagement : 関係者の能動的な参加を促す。
Explanation : 手を尽くして説明を行う。
Expectation : 評価の基準をクリアにして期待値を伝える。

There are three mutually reinforcing elements that define fair process: engagement, explanation, and clarity of expectation.


● 当然の事ながら、ブルー・オーシャンはいつまでもブルーなわけではなく、後発参入によりいずれはレッド・オーシャンとなる。 この劣化をどう防ぐか。 つまるところ、常にブルーな状態を保つべく、最初にブルーを見出したときのステップを繰り返していくことしかない。 常にブルーオーシャンを見つけてきた企業の例として著者はアップルを紹介。MacからiMaciPod、iTune store、そしてiPhoneへ。

While the iMac transformed Apple’s Macintosh division into a high migrator, Apple quickly followed this with the launch of the iPod. The iPod revolutionized the digital music market, creating an uncontested blue ocean, which was strengthened further with its launch of the iTunes Music Store two years later. As the iPod was eventually imitated and sank toward migrator status, Apple reached out and launched its next blue ocean, the iPhone.


● 誤解を受けやすいこと。 まったく未知の領域ではなくコアビジネス近くにブルーオーシャンは存在している。それはギャンブルではない。思い切って視点を変えてみた「改善」という感じか。

There is a common misperception that to create a blue ocean and break out of the red, organizations must venture into industries outside their core, which understandably appears to multiply risk.


● 技術上の新発明そのものがビジネスに直結するわけではない。 新しい切り口はえてして既存の物事に対する新しい組み合わせにより生まれる。

A blue ocean strategic move is not about technology innovation per se.
(中略)
Schumpeter, for example, sees innovation as a “new combination of productive means.”


スティーブ・ジョブズも言ってた。「人々に何が欲しいかを尋ねても意味がない。彼らは何が欲しいかを分かっていないからだ。」

Moviegoing became an increasingly important entertainment event for Americans of all economic levels. As Roxy pointed out, “Giving the people what they want is fundamentally and disastrously wrong. The people don’t know what they want . . . [Give] them something better.”




成功事例本の限界については、トム・ピータースの「In Search of Excellence (エクセレント・カンパニー)」(115冊目に感想)で取り上げられている成功企業はその後の追跡調査では必ずしも永続して成功しているわけではないと、本作著者のチャン・キム自身も指摘しています。 成功モデルを紹介するマーケティング本としては避けられない事なのでしょう。

Blue Ocean Strategy, Expanded Edition: How to Create Uncontested Market Space and Make the Competition Irrelevant (English Edition)

Blue Ocean Strategy, Expanded Edition: How to Create Uncontested Market Space and Make the Competition Irrelevant (English Edition)

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振り返り!!! - 2018年に感想を書いた洋書リスト

2018年も終わりに近づきました。
今年書いた感想のまとめです。(少なめの42冊でした)

本の神様! 来年もオモシロ本に出合えますように。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。


(基本はKindleの洋書版で読んでいますが、邦訳が出版されているものは邦題も書きました。)

(前に書いた2016年の感想はこちらです。 1冊目~97冊目)

hearthlife.hatenablog.com

( こちらは2017年の感想です。 98冊目~180冊目)

hearthlife.hatenablog.com


181 Beautiful mind (Sylvia Nasar) ビューティフル・マインド
hearthlife.hatenablog.com


182 The Carl Rogers Reader (Carl Rogers) ロジャーズ選集
hearthlife.hatenablog.com


183 Anne's House of Dreams (L.M. Montgomery) アンの夢の家
hearthlife.hatenablog.com


184 The Shift: The Future of Work is Already Here (Lynda Gratton) ワーク・シフト
hearthlife.hatenablog.com


185 Tell Me What? (Editor: Bounty Books)
hearthlife.hatenablog.com


186 The Prism and the Pendulum (Robert Crease) 世界でもっとも美しい10の科学実験
hearthlife.hatenablog.com


187 Bridget Jones's Diary (Helen Fielding) ブリジット・ジョーンズの日記
hearthlife.hatenablog.com


188 The Goal (Eliyahu Goldratt) ザ・ゴール
hearthlife.hatenablog.com


189 The Sound of Music: The Touching, Romantic Story of the Trapp Family Singers (Maria Augusta Trapp) サウンド・オブ・ミュージック
hearthlife.hatenablog.com


190 Focal Point (Brian Tracy) 大切なことだけやりなさい
hearthlife.hatenablog.com


191 The Hobbit (JRR Tolkien) ホビットの冒険
hearthlife.hatenablog.com


192 Cosmos (Carl Sagan) コスモス
hearthlife.hatenablog.com


193 Presentation Zen (Garr Reynolds) プレゼンテーションzen
hearthlife.hatenablog.com


194 Of Mice And Men (John Steinbeck) 二十日鼠と人間
hearthlife.hatenablog.com


195 The Meaning of It All (Richard P. Feynman) 科学は不確かだ!
hearthlife.hatenablog.com


196 Outbreak (Robin Cook) アウトブレイク - 感染
hearthlife.hatenablog.com


197 Fermat's Last Theorem (Simon Singh) フェルマーの最終定理
hearthlife.hatenablog.com


198 Live Girls (Ray Garton) ライヴ・ガールズ
hearthlife.hatenablog.com


199 The Code Book (Simon Singh) 暗号解読
hearthlife.hatenablog.com


200 Rita Hayworth and Shawshank Redemptions (Stephen King) 刑務所のリタ・ヘイワース
hearthlife.hatenablog.com


201 The Preasure of Finding Things Out (Richard P. Feynman) 聞かせてよ、ファインマンさん
hearthlife.hatenablog.com


202 Harry Potter And The Philosopher's Stone (JK Rowling) ハリー・ポッターと賢者の石
hearthlife.hatenablog.com


203 Getting to Yes (Roger Fisher) ハーバード流交渉術
hearthlife.hatenablog.com


204 The Origin of Species (Charles Darwin) 種の起源
hearthlife.hatenablog.com


205 Shawshank Redemption: The Shooting Script (Frank Darabont) ショーシャンクの空に
hearthlife.hatenablog.com


206 Big Bang (Simon Singh) ビッグバン宇宙論
hearthlife.hatenablog.com


207 The Lottery (Shirley Jackson) くじ
hearthlife.hatenablog.com


208 Dracula (Bram Stoker) 吸血鬼ドラキュラ
hearthlife.hatenablog.com


209 The Only Neat Thing to Do (James Tiptree Jr.) たったひとつの冴えたやりかた
hearthlife.hatenablog.com


210 The Seven-Per-Cent Solution (Nicholas Meyer) シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険
hearthlife.hatenablog.com


211 All She Was Worth (Miyuki Miyabe) 火車
hearthlife.hatenablog.com


212 Flowers for Algernon (Daniel Keyes) アルジャーノンに花束を
hearthlife.hatenablog.com


213 Harry Potter And The Chamber Of Secrets (JK Rowling) ハリー・ポッターと秘密の部屋
hearthlife.hatenablog.com


214 The Firm (John Grisham) 法律事務所
hearthlife.hatenablog.com


215 Around the World in Eighty Days (Jules Verne) 80日間世界一周
hearthlife.hatenablog.com


216 A Random Walk Down Wall Street (Burton Malkiel) ウォール街のランダムウオーカー
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217 Walden; or Life in the Woods (H.D. Thoreau) 森の生活
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218 Project Management, Sixth Edition (Idiot's Guides) (G. Michael Campbell) 世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント(キャンベル)
hearthlife.hatenablog.com


219 The Eagle Has Landed (Jack Higgins) 鷲は舞い降りた
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220 The Art of Profitability (Adrian Slywotzky) ザ・プロフィット
hearthlife.hatenablog.com


221 The Diary of a Young Girl (Anne Frank) アンネの日記
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222 The Cold Moon (Jeffrey Deaver) ウォッチメイカ
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The Cold Moon (Jeffrey Deaver) - 「ウォッチメイカー」- 222冊目

ジャンル: 小説(ミステリー)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

先日、話題の映画「カメラを止めるな!」を観ました。 これはもうなんて言っていいか、まあ一言で言えば素晴らしく面白かったのです。ストーリーは単純。 あるB級ゾンビ映画を撮影するために人里離れた山奥に来たスタッフが本物のゾンビに出くわして、というかなり平凡なホラーストーリー。 しかしこれは、この映画の最初の30分と残りの部分でまったく別物、というか二部構成になっていて、この展開が見事としか言いようがないのです。 ネタバレになってしまうのであまり詳しくは書けませんが、最初の30分までは「ふーん、なぜこの映画がここまで話題になるんだろう?」と思うのですが、残りの時間をかけてすべてのナゾを解く、というかすべての伏線をキレイに回収していく、その構成の切れ味が爽快なのです。

でなぜ、この映画の話から入ったかというと、まさにこの作品「The Cold Moon」の伏線の張りめぐらせ方とその回収の仕方が素晴らしいのです。 どんでん返しというか息つく暇のないハラハラの展開、そしてすべての辻褄がもれなくピッタリ合った時のゾクゾクする感じがたまりません。

車椅子の四肢麻痺の名探偵リンカーン・ライムと助手兼恋人の美人刑事サックス。 このコンビがウォッチメイカーと名乗る残忍な猟奇的殺人鬼の犯罪を防ぐべく推理を駆使して立ち向かう。 さらに今回は容疑者へのインタビューを通じて、態度や口調などから相手のウソを見抜く専門家キャサリン・ダンスが登場! 彼女のキャラクターがまたエッジが効いていて良い。容疑者を追い詰めるところ、ちょっとコロンボみたいな感じ。天才ライムをして「秘密兵器を差し向ける」とまで言わしめた女性。変わり種の捜査官。 彼女が主役の本が読みたいと思ったら、既にスピンオフ作品がシリーズ化しているそうです。 以前にJoe Navarroの「What Every Body is Saying (FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学)」という本を読みましたが(43冊目)、このジャンル、もう少し掘り下げてみたいです。
(2006年発刊)


メモ (少しネタバレあります)

● キャサリン・ダンス捜査官の質問技術。 ベースラインとは、普段の会話から通常レベルの相手の反応を覚える作業。

She asked a few more questions about his business, filing away a library of gestures and glances and tones and words –establishing the baseline for his behavior.


● ロンはライムとずっとコンビを組んできたニューヨーク市警察の警部。 もしサックスに万が一の事があればどうなるか、ロンはよく分かっていた。危険な任務に就こうとするサックス捜査官に。「いいな。決して無茶をするな。もしお前になにかあったらライムは俺を決して許さないだろう」

They won’t think twice about tossing your body into the trunk of a car at JFK long-term parking . . . God bless you, kid. Go get ’em. But be careful. I don’t want to have to go breaking any bad news to Lincoln. He’d never forgive me.’


● ダンス捜査官、この冴えた観察眼、カッコいい。
Agent Dance glanced at the officer and nodded toward Vincent. ‘He was doing a good job until we got into the diner. Once we sat down I knew he was faking.’ ‘No, you’re crazy. I—’ She turned to Vincent. ‘Your accent and expressions were inconsistent and your body language told me you weren’t really having a conversation with me at all.


● ネタバレになるので、未読の方はここは読まないで下さい。とても素敵なシーンなのでメモに残したかった。

Sachs lowered her head. Then she gave a soft laugh. ‘Dad was always the modest one. It was just like him –the highest commendation he ever got was secret. He never said a thing about it.’


読み進めるにつれて、犯人の検討がついてきてもう終わりかなと思っていると、まだ随分とページが残っている。 なにーっ、まだなにかあるの? このもどかしさ。 そして、まさかこんな展開とは。 ラストの余韻も素晴らしい。 これは文句なしの徹夜本でしたよ。 おかげさまで寝不足です…
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The Cold Moon: Lincoln Rhyme Book 7 (English Edition)

The Cold Moon: Lincoln Rhyme Book 7 (English Edition)

The Diary of a Young Girl (Anne Frank) - 「アンネの日記」- 221冊目

ジャンル: ノンフィクション(自伝)
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★★☆☆

「Dear Kitty」

空想上の友達にあてたこの書き出し。 わずか14歳の少女が綴った日記は、第二次世界大戦時・ホロコーストの最も有名なドキュメンタリーの一つです。 また一級の青春小説とも言えます。(フィクションではありませんが) 本作を読むと、戦争とは何か特別な出来事としてある日突然起きるのではなく、普通の日々の暮らしの中にひっそり染み込むようにやってくる狂気そのものであることが伝わります。 今まで同じ社会の一員として生活してきたユダヤ人を急に排斥し幽閉、殺処分しようと考えるなど普通に考えてあり得ない。 しかしこれはまぎれもない事実です。多くの命がこのホロコーストにより奪われました。「常識から見てまずそんな事は起こらない」と思うのはいかに甘い考えであるか、集団心理の怖さは侮れません。

ずっと昔にも本作を邦訳で読んだことがあるのですが、その時にはそれほど印象に残りませんでした。 しかし今回は英文で内容を理解しようとじっくり丁寧に読んだためか、読み飛ばしが無く、前回よりも深く心に響いたと感じました。
( 1947年発刊)


メモポイント

ティーンエイジャーらしく、新しくスタートした「秘密の隠れ家」の生活を快活に綴っている。 ごく普通の暮らしをしてきた13歳の少女の日記。 日々の生活の延長であったことが分かる。

I don’t think I shall ever feel really at home in this house, but that does not mean that I loathe it here; it is more like being on vacation in a very peculiar boardinghouse. Rather a mad idea, perhaps, but that is how it strikes me. The “Secret Annexe” is an ideal hiding place. Although it leans to one side and is damp, you’d never find such a comfortable hiding place anywhere in Amsterdam,


● やがて同じ隠れ家に住む別家族の少年Peterに恋心を抱くようになる。彼との二人の時間。窓から見える栗の木に自然を感じる。 このような限界状態でも、このように考えることができた彼女。

“As long as this exists,” I thought, ‘’ and I may live to see it, this sunshine, the cloudless skies, while this lasts, I cannot be unhappy.”
The best remedy for those who are afraid, lonely, or unhappy is to go outside, somewhere where they can be quite alone with the heavens, Nature, and God. Because only then does one feel that all is as it should be and that God wishes to see people happy, amidst the simple beauty of Nature. As long as this exists, and it certainly always will, I know that then there will always be comfort for every sorrow, whatever the circumstances may be. And I firmly believe that Nature brings solace in all troubles.
(中略)
When I looked outside right into the depth of Nature and God, then I was happy, really happy. And Peter, so long as I have that happiness here, the joy in Nature, health and a lot more besides, all the while one has that, one can always recapture happiness.


● クリスマスプレゼントを交換したり、アイスクリームを食べたりといった通常の10代前半の女の子らしい生活から、2年に及ぶ「隠れ家」での抑圧された生活、母親との確執、閉鎖空間の中でのプライバシーの無い共同生活。大人たちへの軽蔑。 徐々にお互いを気遣う心も無くなっていく。 しかしこのような中でも、彼女は希望を失わないように必死に耐え続けて夢を綴った。
「自分が死んだ後も残るような生きた証を残したい」

I want to get on; I can’t imagine that I would have to lead the same sort of life as Mummy and Mrs. Van Daan and all the women who do their work and are then forgotten. I must have something besides a husband and children, something that I can devote myself to!
I want to go on living even after my death! And therefore I am grateful to God for giving me this gift, this possibility of developing myself and of writing, of expressing all that is in me.
I can shake off everything if I write; my sorrows disappear, my courage is reborn. But, and that is the great question, will I ever be able to write anything great, will I ever become a journalist or a writer? I hope so, oh, I hope so very much, for I can recapture everything when I write, my thoughts, my ideals and my fantasies.

「夜と霧」(47冊目)にも見られた、それでも希望は失わない姿勢。


● Peterに寄せる情熱的な恋心。 普通の女の子の日記。 初めこそ、これはよくある恋に恋して喜び涙する少女の日記だったが、閉ざされた空間で暮らす彼女がほんの短い2年の間にどんどん精神的に成熟していく過程が辿れる。

I created an image of him in my mind, pictured him as a quiet, sensitive, lovable boy, who needed affection and friendship. I needed a living person to whom I could pour out my heart; I wanted a friend who’d help to put me on the right road.



歴史にifはありませんが、もし後ほんの少しでも彼女たちの隠れ家が発見されずにいたならば… そして、戦争が終わりアンネたちが解放されていたならば、一人の賢明な大人の女性としての人生を送ることができたでしょう。 そして「こんなこともあったわね」などと思い出の一つにでもなっていたことでしょう。
1944年8月1日、この日記は「人として成長したい」と綴った文章で突然止まっています。 小説では無いので当然エピローグなどはありません。 ホントに突然です。 そして、この半年後の彼女とその家族の運命を知っている我々読み手側としては切なさと悲しさが込み上げてきます。

生を全うできなかった者たちの痛みが突き刺さる。

The Diary of a Young Girl (English Edition)

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The Art of Profitability (Adrian Slywotzky) - 「ザ・プロフィット」- 220冊目

ジャンル: 経済・ビジネス
英語難易度: ★☆☆
オススメ度: ★★☆☆☆


「ビジネスの上で、利益を上げるにはどのようなパターンがあるのでしょう?」

業績不振の工業部品メーカーに勤める若手ビジネスマンSteve。 経営の神様のような中国系のおじいちゃんコンサルタントZhaoからのアドバイスを受けつつ学び成長していくというストーリー。 (このおじいちゃん、ぼくの脳内イメージでは映画「ベストキッド」に出てくるミヤギ老人に変換されてます)

なぜかアメリカのビジネス本はこの手の小説仕立てが多いようですね。「The Goal」や「Leadership and Self-deception」(67冊目に感想)とか。 本作、難しい修飾語などは使われておらず、英語の文章はかなり読みやすい部類でしょう。 ただ、かなり芝居掛かっただ言い回しが多い割には当たり前のことが書かれており、あまり大したこと言ってないような気がしました。 邦訳のレビューを見ると、評価が高いようですが、残念ながら自分にはこの本の素晴らしさに気づくことができなかったようです。 ただこのおじいちゃんコンサルが、主人公にいくつかの課題図書をオススメしているのですが、こちらは参考文献として役に立ちそうな気がします。「孫子(The Art of War)」(15冊目に感想)も紹介されていましたが、タイトルの「The Art of Profitability 」の由来でしょうかね。
(2004年発刊)


メモポイント
● 収穫逓増の原則。 臨界質量を超えると、顧客は集中する。

The more critical mass you build, the higher your probability of putting together a package that works.


● 過去にやってきたことはそれなりの理由がある。 そこを考えないで、なんでも新しいことに価値があると考えるのは早計である。

“I think that’s fair,” Zhao said gently. “And consider them from the point of view of the people you need to work with,” he added. “Most business people bring a lot of history to the decisions they make. It’s not very realistic to expect them to jettison it all just because a bright young man comes along with a good idea.”


● ビジネスマンにとっておおよそのサイズ感を持っておくことが大事。大間違いを防ぐために、正確な数字は必要ない。 確かに、経営者やFP&A担当者にはこのポイントは大きい。

It’ll get you a lot closer to winning. It’ll help you make slightly better decisions every day. And once a month, it’ll keep you from making a mega-mistake.


● 広告は継続的に行うことこそ、最も効果があるらしい。 累積的効果。
そして、自身を一つのブランドにしてしまう、これが効率的。


So I measured this for ten other pharmaceutical categories, then another ten outside pharmaceuticals. I found some fascinating stuff. With undifferentiated products, cumulative investment drives share. Ogilvy was right. The persistent spenders win out in the long run.
(中略)
“So there are efficient ways to build brand,” Steve observed. “Hyperefficient.”



小説仕立ての話としては、前述した「The Goal」(188冊目に感想)の方が、夫婦の危機を乗り越えるエピソードも盛り込まれてハラハラドキドキでもっと面白く感じました。 こちらは文句なしのオススメ!

The Art of Profitability

The Art of Profitability

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The Eagle Has Landed (Jack Higgins) - 「鷲は舞い降りた」- 219冊目

ジャンル: 小説(アクション)
英語難易度: ★★☆
オススメ度: ★★★★☆

カッコいい男たちの話を読みたい! そう思いました。 そして評判を聞いて手にしたこの一冊。 期待は裏切られませんでした。 男前な文章があるとすれば、きっとこのような文章のことを言うのでしょう。キビキビとして硬質な文章。 読んでいて小気味よいとはこのことです。 簡潔でいて味がある。 そして感動で鳥肌が立つような心揺さぶる名シーンがいっぱい。 惚れてまうやろー! (古い…)

一言で言えば、ナチスドイツ軍によるイギリス首相チャーチルの誘拐作戦の顛末記。(もちろんフィクションです) 読み手側は、結局チャーチルは誘拐されない、ドイツ軍は敗北に終わる、この歴史の結果を知っています。 それでも、この作戦がどのように立案、遂行され、そしてほころびを見せるかについて、まるでドキュメンタリーのような冷静なタッチでリアルに描写されている、この点が本作が高く評価されている理由なのでしょう。本作以前は、小説の題材として扱われる第二次大戦時のドイツは、ナチスを中心とした典型的な悪の権化として描かれることがほとんどでした。 しかしここでのSteiner中佐の部隊のように、ドイツ軍が誇りや苦悩を同様に抱える人間として魅力的に描かれるのは、当時はかなり斬新な視点だったようです。


粗筋を簡単に。 第二次大戦末期の敗色濃いナチスドイツ軍。 ゲシュタポのトップであるヒムラーの命により、一発逆転のチャンスを狙って、連合国軍の中枢であるイギリス首相チャーチルを誘拐するという作戦が仕組まれた。 イギリスに潜伏中のおばちゃまスパイ・Mrs. Joanna Grayからの情報により、チャーチルがお忍びでイギリスのある片田舎で休養するというのだ。連合国ポーランド義勇軍幹部のフリをして標的に近づくため、白羽の矢が当たったのはドイツ人の父とアメリカ人の母を持つドイツ空軍パラシュート部隊のリーダーKurt Steiner中佐(Lt. colonel)と、アイルランド共和軍(IRA)の伝説的なテロリストLiam Devlin。 この荒唐無稽とも思われる作戦は多くの障害を乗り越えながらもかろうじて進んでいく。 そしてついに、ポーランド軍パラシュート部隊の制服に身を包み、Steiner一行は標的近くのNorfolk に何とか上陸した。その際の暗号コードが、この小説のタイトル「The Eagle Has Landed」(鷲は舞い降りた)。 上陸後、その土地の村人たちにも信用されていたSteiner中佐の部隊だが、彼らが人間らしく振る舞ったがゆえの、ある「善行」から、思いがけずもこの作戦が綻び始める…
(1975年発刊)



メモポイント (かなりネタバレあります。注意!)

● 本作を魅力的にしているポイントは男気溢れる野郎どもの話だけではない。作戦の先導役として村に潜伏したLiam Devlinと、そこで出逢った村娘Molly Priorの恋物語
Mollyは、恋人となったDevlinの不審な行動を見て彼が闇市場の違法ビジネスに手を出しているのではないかと勘違いをして、彼の身の上が気になって仕方がない。(もちろんドイツ軍のスパイとは想像もしていなかったが) そして、その後どういうわけか「彼はイギリス軍の特殊任務についているのだ」との勘違いをして安心するのだが、その彼女の安堵した時の描写があまりにも可愛らしくてたまらない。 恋人が国に忠誠を誓った信頼できる男と分かって、誤解が解けて心が飛び跳ねているよう。

「これで分かったろう、モリー。 良い子だからもうあまり詮索しないで俺からの連絡を待っていてくれ。そんなに待たせないよ」
「うん、大丈夫よ、ライアム。 信じて、もう邪魔しない!」

I thought it was something to do with the black market and you let me think it. But I was wrong. You’re still in the army, that’s it, isn’t it?’
‘Yes,’ he said with some truth. ‘I’m afraid I am.’
Her eyes were shining. ‘Oh, Liam, can you ever forgive me thinking you some cheap spiv peddling silk stockings and whisky round the pubs?’
Devlin took a very deep breath, but managed a smile. ‘I’ll think about it. Now go home like a good girl and wait until I call, no matter how long.’
‘I will, Liam. I will.’
She kissed him, one hand behind his neck and swung up into the saddle. Devlin said, ‘Mind now, not a word.’
‘You can rely on me.’


● 現場の兵士たちの双方どちらも望まない不毛な戦い。 無能な将に率いられた部下たちがどれほど悲惨なものか。 ナチスドイツのヒムラーといい、在英米国軍のShafto大佐といい。 命の重さが感覚的に理解できない。 愚かなことは罪なこと。
ヒムラーの部下でドイツ本国で誘拐作戦の総指揮を取らされるRadl中佐。 家族をナチスの人質に取られたも同然の境遇。 「常に誰かが苦しんでいる… いつまで続くのか。 神よ、この茶番を早く終わらせたまえ」力なく独りごちた。

The field car moved off and he stood looking out to sea filled with an indescribable feeling of bitterness. Someone always suffered –always. His hand ached, the eye socket burned. ‘God, how I wish it was all over,’ he said to himself softly and he turned and walked away.


● ついにDevlinの正体がドイツ軍のスパイであることがMollyにバレた。 Mollyは自分を裏切って誘拐作戦に利用したDevlinが許せず「裏切り者は皆の前で縛り首になればいいわ!」と激怒しDevlinの前に姿を現した。 しかし、Devlinの愛が真実であることを知り、これから死地に自ら飛び込もうとする彼の姿を見ると、Mollyの憎悪の念はみるみる萎んでいく。

Molly said, ‘What are you going to do?’
‘Into the valley of death, Molly, my love, rode the six hundred and all that sort of good old British rubbish.’ He poured himself a glass of Bushmills and saw the look of amazement on her face. ‘Did you think I’d run for the hills and leave Steiner in the lurch?’ He shook his head. ‘God, girl, and I thought you knew something about me.’
‘You can’t go up there.’ There was panic in her voice now. ‘Liam, you won’t stand a chance.’ She caught hold of him by the arm.
‘Oh, but I must, my pet.’ He kissed her on the mouth and pushed her firmly to one side. He turned at the door. ‘For what it’s worth, I wrote you a letter. Not much, I’m afraid, but if you’re interested, it’s on the mantelpiece.’

The door banged, she stood there rigid, frozen. Somewhere in another world the engine roared into life and moved away. She found the letter and opened it feverishly. It said: 「Molly, my own true love. ......


● 村の子供たちが足を踏み外して川に落ちてしまった。溺れかけた子供たちの命を救うために命を落としたSteiner 中佐の部下の勇気ある行動により、彼らの出自がドイツ軍であることがバレてしまい、Steiner 達は在英米国軍の襲撃を受けて窮地に陥ることになる。 絶対絶命の中、助けた少年の母親にSteiner が声をかける。
「(溺れた友達を救おうと川に飛び込んだ) 勇敢な息子さんだ。」
その少年はSteinerを見上げて尋ねる。
「おじさん達はどうしてドイツ人なの? どうして僕たちの味方じゃないの?」
Steiner は思わず声に出して笑って、その母親に言った。
「さあ、息子さんを連れて行きなさい。なんとも答えに困ってしまう質問なんでね。」

‘He’ll be all right, Mrs Wilde,’ the young Oberleutnant said. ‘I’m sorry about what happened in there, believe me.’
‘That’s all right,’ she said. ‘It wasn’t your fault. Would you do something for me? Would you tell me your name?’
‘Neumann,’ he said. ‘Ritter Neumann.’
‘Thank you,’ she said simply. I’m sorry I said the things I did.’ She turned to Steiner. ‘And I want to thank you and your men for Graham.’
‘He’s a brave boy,’ Steiner said. ‘He didn’t even hesitate. He jumped straight in. That takes courage and courage is something that never goes out of fashion.’
The boy stared up at him. ‘Why are you a German?’ he demanded. ‘Why aren’t you on our side?’
Steiner laughed out loud. ‘Go on, get him out of here,’ he said to Betty Wilde. ‘Before he completely corrupts me.’



後半は、映画「ワイルドバンチ」状態のハードな銃撃戦が展開。 死地で育まれる男達の絆。 望月三起也のマンガで読みたいところです。
そして事件から数十年後にエピローグとして語られる後日談。あっと驚く展開が残されています。


それから、ドイツ軍を魅力的に描いた作品として、Uボート乗組員達の物語、Robert Kurson「Shadow Divers」(38冊目)もオススメです。

The Eagle Has Landed (English Edition)

The Eagle Has Landed (English Edition)

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